2010年12月21日火曜日

笑って!外村さん

 『笑って!外村さん』が登場した時には、面白い、けれどこの勢いがいつまで続くだろうって思ったのでしたっけ。見た目から、あるいはその振る舞いから、不良、怖い人と思われている外村さん。けれど実際はすごくいい人で、ただ笑顔が怖くなってしまったり、あるいは言動が脅してるみたいになってしまうだけなんです。ああ、なんと不憫な娘さんだろう。人付き合いが苦手、緊張してしまったりする、そうした結果があの誤解というのですから、ほんと、春野さんならずとも、なんとかしてあげたい! と思ってしまうのもしかたないでしょう。

しかし外村さん、生徒からだけでなく教師からも怖れられているというのですから、たいしたものです。けど外村さんは外村さんで、なんとか皆と仲良くできないか、いろいろ考えていて、ところがそうした試みがことごとく裏目に出るんですね。その、やっちまったっぷり、実に素晴しい。なんで、なんでそんな言い方になっちゃうの!? 笑い方、表情、服装、身のこなし、どれもが見事に裏目に出るようにできているわけですが、その原因はというと、主に外村さんの勘違いっていう、それがおかしいんですね。きっとこういえばいいだろう、そう思ってるのは外村さんだけ。どう見ても脅してるようにしか見えませんから、外村さん! そうやって思わずつっこみたくなってしまう、そんな漫画なのです。

外村さんにつっこみをいれる、それは読者だけではなく、そう、さっきいった春野さん。この人はほぼ唯一といっていい外村さんの理解者なんですが、外村さんに助けてもらってからというもの、外村さんに笑顔のレッスンしてみたり、いろいろ親身に相談にのったりしているんですね。で、この人が外村さんにつっこみをいれまくる。いや、そのつっこみというの、春野さんの内心でおこなわれるものだから、肝心の外村さんには伝わらないんですけど、けど読者にはしっかり伝わって、いい感じに駄目押しになってくれるんですね。そして、春野さんの存在、それは面白さを補強するだけではないのです。人間関係において、あまり恵まれてるとはいえない外村さん。だけど、外村さんには春野さんがいる。このことが、ああ、外村さんよかったね、そう思わせてくれる大切な要素になっているんですね。気持ちをわかってくれる、世界を広げようといろいろ骨折ってくれる、本当にいい友人ですよ。外村さんは確かに誤解されて大変なんだけれど、友達のいるしあわせは知っている。よかったねと思える、それが笑い、おかしみに一味そえて、外村さんの魅力をいっそう引き出しているのです。

外村さんには、姉を尊敬する弟がいて、姉ごと慕う女の子がいて、なんとか笑わせようと頑張る男子もいて、決してひとりじゃない。まあ、後者ふたりは誤解ぶくみなんですけどさ、でもそれでもかかわろうとしてくれる人があるっていうのはいいですよ。こうしたまわりにいる人たちに、いつか外村さんの真実が伝わるといいな。そう思うんですが、まだまだ外村さんの誤解は解けないだろうな。だって、漫画の勢い、面白さ、衰えるどころか、いよいよ増していくって感じなのですもの。ええ、当初の心配、まったくの杞憂でした。

  • 水森みなも『笑って!外村さん』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

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