2005年10月5日水曜日

Chopin : The Nocturnes, played by Claudio Arrau

  私にとってショパンとは、知ってはいるけれどさして重要ではない作曲家でありました。そりゃ、西洋音楽史における位置や重要性は理解していますし、特にあのピアノという楽器においては最大級の作曲家であることはいうまでもなく知っています。ですが、それでも私にはショパンは重要ではなかった。けど、それって簡単にいうと、知らなかっただけなんですね。

アラウの弾くノクターンを聴いていたとき、それまでちょっと感じたことのないような感覚に襲われたのです。美しくてピアニスティック。けれどそれだけでなく、指先がしびれるように感じる。背骨にそって、微弱な電流が流れるような感触がする。目を閉じて深く息をすれば、そうした刺激はよりはっきりと感じられるようになって、それらはすべてアラウの弾くショパンによって引き起こされているのです。

よく、官能的であるとか、そういう風に音楽を評することがありますが、今のこの感覚がまさにその官能的であるということなのだと理解しました。音楽が身体にまで作用することは、これまでに何度も体験してきたことでありますが、ショパンの感触はそれまでのどれとも異なって、静かでソフトで優しい感じがしました。点々と明かりが灯るように、神経に添って流れていく音の粒立ちが、私の深い部分を掘り起こしていく、 — そういう感触が肌に残りました。

ああ、ピアニストがショパンを好むわけだ。ショパンは並の音楽家ではないと、ようやくわかった思いがしました。

0 件のコメント: