2005年9月24日土曜日

秘密の花園

    つい先日のこと、突然脳裏にアーチボルトという名前が浮かんで、アーチボルトといえばクレイブンと続くのが世の習いであります。けれど私にはそのアーチボルト・クレイブンというのがいったいなんであったか思い出せず、しかたがないからGoogleでもって検索したのでした。

アーチボルト・クレイブンとは、秘密の花園の登場人物。メアリーの病弱ないとこ、コリン・クレイブンの父でありました。そうだ、秘密の花園だと思って、私はいつもの書店に走って、『秘密の花園』を探そうとしたのでした。

子供の頃、親がどこかから児童向けの文学全集を一冊ずつ借りてきてくれて、私はそれで『秘密の花園』だとか『足長おじさん』だとかの、名作中の名作を読んで、けれどあの全集はいったいどこの社の、なんて全集だったんでしょう。親に聞いても忘れてしまっていて、うちの子は全然読まないんだから、代わりに読んでくれて嬉しいわという言葉をいただいたことは覚えているんですが、はたしてそれが誰だったのか。私にしてもそれ以上のことは思い出せません。

あの年ごろに読んだ本に立ち現れた秘密の花園は、うっそうと緑の匂いも濃密で、その萌える息吹の鮮烈さが今も心のどこかに残っているんです。木の芽が、今にも開かんと膨らんでいるその描写は、みずみずしくて息がむせぶほどに生命感があふれていました。そうした本に、今になって再び触れたいと思い立って、そうなったらもう矢も楯もたまりません。

ですが、悲しいことに私の行きつけの本屋には『秘密の花園』が置いてなくて、探し方が悪かったのかも知れません。けれど岩波少年文庫を見て、偕成社文庫を見て、フォア文庫を見て、福音館の棚も見て、案外新潮文庫はあったのかも知れませんが、私はそこまで見ることなく引き下がりました。

今になれば、オリジナルを読むべきなのかも知れません。わからないながらも本を楽しみ、そうして言葉を少しずつ覚えたみたいにして、英文で読むべきなのかも知れません。

  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』上 山内玲子 (岩波少年文庫) 東京:岩波書店,2005年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』下 山内玲子 (岩波少年文庫) 東京:岩波書店,2005年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』谷村まち子 (ポプラポケット文庫 — 世界の名作) 東京:ポプラ社,2005年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』猪熊葉子,堀内誠一 (福音館文庫) 東京:福音館書店,2003年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』野沢佳織 (西村書店) 東京:西村書店,2000年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』猪熊葉子,堀内誠一 (福音館古典童話シリーズ) 東京:福音館書店,2000年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』谷村まち子 (ポプラ社文庫 — 世界の名作文庫) 東京:ポプラ社,2000年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』上 竜口直太郎 (ニュー・メソッド英文対 (シリーズ) 東京:評論社,1996年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』下 竜口直太郎 (ニュー・メソッド英文対 (シリーズ) 東京:評論社,1996年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』前田三恵子,中山庸子 (少年少女世界名作の森;第12巻) 東京:集英社,1990年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』上 茅野美ど里 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1989年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』下 茅野美ど里 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1989年。
  • バーネット,フランシス・ホジソン『秘密の花園』竜口直太郎 (新潮文庫) 東京:新潮社,1954年。

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