実のところ申しますと、最初この漫画買うつもりはなかったのです。『五日性滅亡シンドローム』。後五日で世界が滅びるという、そういう常軌を逸したシチュエーション。けれどその滅亡というのがどうにも現実味がなくてですね、実際漫画中でもあやふやな噂レベルのものとして描写されているんですが、だったらなんでそんな程度の噂であれだけ右往左往する……? とにかくなんかつかみどころのない、正直なところいいますと、微妙よね。単行本出るとは思ってなかった。出てもきっぱり買う気はなかった。というのになんで買ってしまったのかというと、それはギミックといっていいのかな、漫画自体がというよりも、漫画を取り巻くもろもろも含めて、なんかおさえておいてもいいかなあと思うようなところがあって、半ば衝動的にレジに運んでしまったのでした。
一体なにが私に働き掛けたのかといいますと、口絵だったんですね。まんがタイムKRコミックスでは、冒頭にカラーページが書き下ろされるのが通例となっているのですが、『五日性滅亡シンドローム』はここに漫画をでなく、イラストレーションをおいたのですよ。イラストレーションには状況そして台詞が添えられていて、作者も後書きにていっているのですが、ライトノベルっぽい感じですよね。で、なんでこれで買うつもりになったのかというと、不思議ですよね、なんというかそういうライトノベル的世界観ってのに興味持ったというか、あるいは — 。
小松左京の『日本沈没』の映画がリメイクされました。残念ながら私はどちらの映画も見たことはないのですが、以前、ちょっと興味深いレビューを読みまして、それはどんなかといいますと、旧作においては日本国民をいかにして救うことができるかという社会規模での視点があった、そのように主人公は動いていたのに、新作はというとヒロインしか眼中になかったというのですね。日本の国土が失われるという事態に直面して、そうなると日本という国は壊滅だろう、するとそこに住んで暮らしていた私たちはどうなる、脱出がなったとしても、国を失った我々の明日はどうなる、本来『日本沈没』という小説はそういうものをテーマとしていると思っていたんですが、新作映画においてはそういったものは遥か後景に押しやられて、主人公とヒロインの恋愛がクローズアップされるばかり、国家消滅の危機に際してもっとも重要であるのは、国や国民といった約束事ではなく、自分自身の内面にほかならなかったのだ、といった話。
『五日性滅亡シンドローム』は、あるいはライトノベル的とはっていってもいいのかな、その自分自身の内面というのが最大の興味対象であるのだと思います。後五日で世界が滅びる、しかしそういわれてもあまりに希薄なリアリティ。それは当然で、そうした噂に対応しているのは、あくまでも生徒たちに限局されて、まあ多少は周辺のことも描かれるのですが、それは結局は主人公たちが状況を捉えるためのエクスキューズみたいなもの、社会というものを捉えようとする視点がないのにリアリティが生まれるはずもありません。でも、それは最初から求められていないんです。世界が滅びるという噂があって、それを少なくない人が信じています。それだけで充分なのですよ。これだけの約束をベースにして、主人公周辺のもろもろを描ければそれでいい。むしろ、社会状況はどうだこうだいうようなリアリティは邪魔なんだといわんばかりです。
そして、このただでさえ希薄なリアリティはセカンド・シーズンに入ってなお希薄になって、セカンド・シーズンにおける滅亡の根拠なんかも語られるんですが、そうしたの見るかぎり、リアリティのなんのっていうのは端から拒否していることが明らかで、さらにいえば物語ることさえを必要としていません。だからこれはSFでもなければファンタジーでもない。世界は語られるまでもなくあらかじめ失われており、じゃあここにあるのはなにかといえば、主人公周辺の内面のささやかな反響、揺れ動きだけ。故にこれらはセカイ系と呼ばれるのかも、とかなんとか思うところもあったから、ひとつの例として手もとに置こうかなと思ったのでした。
なんかネガティブな文章になったけど、決して嫌いな漫画じゃないですよ。嫌いな漫画だったら、買う買わない以前に黙殺です。けど、おすすめの漫画ではないです。少なくとも、私と同じくらいの年代の人にはすすめられない漫画、っていうのは、私たちの年代っていうのは、まだどこか物語というものを求めているところがあるからで、きっとこの漫画では満足しないと思います。私にしても、これが四コマでなかったら黙殺したろうと思います。
- ヤス『五日性滅亡シンドローム』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
- 以下続刊
ゲーム好きならきっと共感せずにはいられない『
本日発売の「まんがタイムKRコミックス」はすかの『ひろなex.』。『
内容も知らず買ってみて、これはあたりだったと大いに喜んだ『


絶版書籍、廃盤商品の復刊復刻を実現させたい! といった思いを抱いたことがあるという人は少なくないと思うんですが、そんな時に力になってくれるのが、いわずと知れた
買うだけは買ったんだけど見るにいたらなかった『
先日、
ある朝目を覚ますと、世界は眠りに落ちていた。眠れる惑星に一人残された少年永井淳平は、この異常な世界をいかに生き抜いていくのか。というのが『
書店にいったら『
なんか母親が
朝、駅へと向かう車、聴こえてくるラジオ(
先日購入した『
文庫になったのをきっかけとして買いはじめた『
『鬼切丸』は平成元年から13年まで続いて、その間に楠桂の描く絵の雰囲気もずいぶんと変わって、文庫第1巻を読みはじめた頃にはそれほどにも思わなかったんですが、第8巻を読み終えた今、再び第1巻を見返してみると、驚くほどに違っています。基本的なところは変わらない、見るものをはっと釘付けにするような華やかさや鬼という非現実を説得力を持って表現するうまさは第1巻の時点ですでに充分すぎるといっていいほどにできあがっていて、だとしたら違うところはなんなのだろう。それはおそらくは洗練でないかと思うのですが、十余年をもって楠桂はずいぶんとスタイリッシュになり、持ち前の華やかさをより一層に強化して、けれどその反面、絵の端々に現れていた生々しさは薄れたように思います。
なんでか知らないけど、『
あずまきよひこの『
web拍手見てたらですね、
あれほど
漫画を好んで読む人、とりわけ少年漫画系の人にとっては藤田和日郎という名前は特別の響きを持っているように思うのです。古くは『
歴史もの中国ものがそれほど好きではない私には、コーエーのゲームはあんまり魅力的とは思えませんでね、それこそ『
ちょっと年のいきかけた漫画読みにはおなじみだろう漫画家、あろひろしが四コマ誌にて連載している『
書店にいったら『
NHK趣味悠々はこのところギターに力を入れているようで、ギター弾いている私には実にありがたい感じ。ほら、
『

Wizardry XTHをはじめたのは去年の秋。もうじき夏の到来するのを待とうという時期になって、ようやくクリアしたのであります。って、以前、1月ごろにクリアしたとかいってなかったか? いや、いってましたね。過去の記事を探ってみると、
書店平積みにて遭遇、表紙に大筆掲げた娘が元気一杯にかかれた『とめはねっ!』という漫画、その表紙からもタイトルからも書道ものというのが明らかです。そうかあ、再び書道の漫画が出てきたかと、ここで私は『
書店で見かけたときには思わずエロ漫画かと思ってしまった『まんがみなむーん』。著者はみなづきふたごで、おおっと、この名前には覚えがありますよ。それもそのはず、裏表紙見てみれば、『港湾署デカビタ誌 — 刑事さんの美しき多忙な日誌』と『美味しくごはん』が収録されているとわかります。いや、懐かしい。この漫画、ずいぶん前に芳文社の四コマ誌に連載されていたもので、結構好きで楽しみに読んでいたのですよ。記憶が正しければ、ちょうどこの頃に私は、実話系を除く芳文社の四コマ全誌を買うにいたりまして、病膏肓に入ったという話ではあるんですけど、まあそれくらい私にとって四コマが熱かった時代であるのです。まだ萌え系、DV系は萌芽の時期であって、主力はオールドスタイルから抜け出したかわいい系。『デカビタ誌』は『まんがタイムジャンボ』にて、『美味しくごはん』は『まんがタイムスペシャル』にて、それぞれ連載されていたのですが、今こうして久しぶりに見てみると、これ初期の『きらら』で連載されてたんだぜー、とかいわれたら信じてしまいそうな感じです。そうかあ、『きらら』というと特別な感じがしたものだけど、別に全然地続きなんじゃね。
