先日の、猫の人と会ったときのこと。『よつばと!』の話になって、買いましたとの由。おおー、買いましたか。そういえば私のところにも第三巻が届きましたよ、英語版の。って話になって、そして解釈論に。というのはですね、英語版、訳に引っかかるところがあったのですよ。いや、まるっきり誤訳ってわけじゃないんですが、どうも私との解釈の違いがあらわれていて、私はこれを広い意味での誤訳(誤解釈)であると思ったわけです。それで、旦那はどう思う? ってな話になったというわけです。
問題の箇所というのは、第二十話の「よつばと花火大会?」。英語版では "Yotsuba & the Fireworks Show?"。長女あさぎの台詞です。
日本語版137ページの第3コマ目、大丈夫、お父さんよ
という台詞を思い起こしてください。この台詞、英語版ではIt's alright. He's our dad.
と訳されています。
私、はじめこの英訳が、いったいなにを表そうとしているかちょっとわからなかったんですね。あさぎの台詞を日本語に訳すと、「大丈夫、彼は私たちのお父さんよ」となりますが、いや、え、なんで? みたいな感じでちょっとした混乱を起こしたのでした。
というのもですね、私はここのあさぎの台詞は、「大丈夫、風香はお父さん似よ」と解釈していたからで、つまり現在話題になっている、あさぎがお母さん似、恵那はお父さん似というシチュエーションを引き継いだ台詞と思っていた。対して英語版の台詞を考えると、135ページから136ページ、誰!?
から続く文脈で理解されているんですね。私は正直、この解釈をするには、「誰!?」コンテクストは遠すぎると感じました。それよりも直近の「お父さん似」コンテクストで理解した方が、日本語として自然だと思ったのです。
とこういう話をして、日本語の状況依存性の高さを説明するには非常によくできて、面白い例ですね。日本人だったら、「お父さん似」コンテクストで解釈するのが自然ですもんね、っていったら、いや私は「誰!?」コンテクストで理解していましたという返事が返ってきて、あれーっ!? って私がびっくりしてしまいました。
だって、あのあさぎの台詞のあいまいさを補強すべく、137ページ第1コマの風香は目も細く髪ぼさぼさで、ことさらお父さん似に描かれているぢゃないですか!
てなわけで、私はやっぱりあの台詞は「お父さん似」コンテクストに属していると思っているわけですが、皆さんはいかが解釈されましたでしょうか、というお話。いや、別に解釈の優劣だとか、正しさだとかをはっきりさせたいってわけじゃないんですよ。『よつばと!』は、自由にいろいろに読み解ける良作であると思っていますから、いろんな読みがあっていいんです。
ただ、一般にあの台詞はどう理解されたのか興味が出てきてしまったというわけで、だからよければコメントやらトラックバックしてくださったりしたら嬉しいな。
- Azuma, Kiyohiko. Yotsuba&!. Vol. 1. Texas : Adv Films, 2005.
- Azuma, Kiyohiko. Yotsuba&!. Vol. 2. Texas : Adv Films, 2005.
- Azuma, Kiyohiko. Yotsuba&!. Vol. 3. Texas : Adv Films, 2005.
- あずまきよひこ『よつばと!』第1巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2003年。
- あずまきよひこ『よつばと!』第2巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2004年。
- あずまきよひこ『よつばと!』第3巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2004年。
- あずまきよひこ『よつばと!』第4巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2005年。
- 以下続刊
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