妙に長かった夏も過ぎ去ったようで、この頃ようやく朝夕には秋らしい涼しさが感じられるようになりました(というか、ちょっと寒い)。というわけで、秋のやるドラを紹介してみましょう。記憶喪失のヒロインを軸に、春夏秋冬それぞれのドラマを展開してみせたやるドラ、秋のタイトルは『サンパギータ』でした。私がはじめてプレイしたやるドラです。
なぜ『サンパギータ』が私の初やるドラとなったかは、本当に偶然といっていいようなきっかけでして、ちょうどそのころに買いはじめた電撃PS誌の体験版付き別冊でこれを特集していたという、そういうような具合でした。その時分は、なにぶん久々にゲーム機なんてのを買ったような有り様でしたから、なにをとっても物珍しくて、だってプレステ以前のゲーム機といえばファミコンだったのですから、そりゃカルチャーショックでしたよ。そこへやるドラ。プレステという、決してハードウェア的に恵まれていないプラットフォーム上で、かなり気合いの入ったアニメーションを展開してみせて、私は素直に、これはすごいぞ! と思ったものでした。
私がやるドラに期待した理由というのは『季節を抱きしめて』や『スライディング・ドア』でもう書いたのではしょるとしまして、けれど実際このやるドラというのは、本当に画期的と思われました。アニメーションがかなりしっかりしているというのもありましたが、それだけじゃなく、ゲームらしくなるように分岐やマルチエンディングを用意した上で、ドラマとしての作りをよく考えている。プレステというハードの限界ぎりぎりに挑戦したのだなと感動的でさえありました。
私のやるドラへの傾倒は、サントラを買いドラマCDを集め、ファンブックも揃えたというくらいのもので、それはよっぽど私の好みに合ったということなのだと思うのですが、なかでも『サンパギータ』のファンブックには面白い記述があって、本当はもうひとつエンディングがあったのだそうですね。主人公が、ヒロインマリアを取り巻く人間関係に深く入り込むことでマフィアの一員となってしまうという、そういうエンディング。けれど、残念ながらCD-ROM二枚の容量ではそれだけの展開を収めることができず、泣く泣くカット。確かにそういわれると、『サンパギータ』の終盤はかなり容量不足に泣かされたと思われるようなシーンがあったと思い出されます。
けれど、それでも、あれだけの動画のパートを持ち、あれだけの効果音、台詞を収め、それで演出にも遊びにも手を抜かず、よくやりました。私は本当にあのやるドラというシリーズが好きなのですが、それはこのシリーズに取り組んだ人たちの熱意みたいなものが、ほのかに感じられるからだったんじゃないかと思います。
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