1993年というのは、本当に恐竜ブームの渦中だったということがうかがえます。というのも、『ムカムカパラダイス』というアニメがあったのですが、これが1993年作品。ペットショップの娘、鹿谷初葉のもとにやってきた恐竜の子供ムカムカが引き起こすどたばたアニメで、前半は現代の日本、後半は恐竜の住まう異世界が舞台でした。後半は多分にファンタスティックが過ぎる嫌いがあるので、私はちょっと……、という感じは否めませんが、それでもこのアニメ、私は好きでした。いや、初葉が可愛いんだわ。勝ち気で、ボブでキュロットで、しっかりしてて、人情家で、ほんと、最高に素敵な娘さんでした。
「本気じゃないのに…」は『ムカムカパラダイス』の挿入歌で、この一種不思議な世界の真ん中に据えられたテーマというんでしょうか、を非常によく表している歌で、私はこの曲こそは本当の名作であるなと、そんな風に思います。ほら、以前にもいっていましたが、アニメの挿入歌には隠れた名曲佳曲が多いのです。
『ムカムカパラダイス』は、1993年という時代の断片をちりばめながら(イケイケの御殿場蘭華を見よ!)も、その核には懐かしい昭和の風景がありまして、舞台は商店街。近所の姉貴分にやんちゃな少年たち、ムカムカというイレギュラーを加えながらも、そこには子供たちのコミュニティがあり、私がこのアニメで好きだったというのは、この子供社会の雰囲気であったと思うのです。
「本気じゃないのに…」、本当はそんなつもりなんてなかったのに、ついつい友達にいってしまった「絶交だよ」という言葉。仲直りしたいと思いながらも、それを言い出せないという、きっと誰もが子供だったときに通過してきたストーリーが歌われていて、その叙情は抜群です。友達とのすれ違い、焼きもち、素直になれない気持ち、そしてそうした自分へのもどかしさと嫌悪感。こうしたエピソードを、話しかけるように、あるいは思い出すみたいにして描出するその確かさ。私は聴けばきっとしんみりとして、心に潤いを取り戻すような思いがします。
いい歌なのです。いい歌なのですが、シングルカットされたわけでもなく、聴こうと思えばサントラを買うか、あるいは挿入歌集を買うか。いずれにせよ、ちょっと気軽に聴くには高いハードルがあります。
だから私は思うのですが、iTMSはこうした曲こそを収録すべきじゃないのか? 隠れた、けれど誰もの心に訴えうるような名曲をこそラインナップすべきなんじゃないか?
今まで、媒体ゆえに知られず、知られないゆえに埋もれたままになっていた歌に、再び光を当て、よみがえらせることのできるのはiTMSであると思うのです。
よし、今度リクエストしてみよう。いや、本気でいってますよ。
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