昔、海外でグレン・グールドに関するマルチメディアタイトルが出たことがあって、それは"The prospect of recording"(「レコーディングの将来」)にて提唱された「キット」としての音楽を体現するものらしいという話だもんだから、私はもう興味津々で、海外のリリース元にFAXで注文を出したりしたりして大わらわだったのです。けれど、あのソフトはその後いったいどうなったんでしょう。一向に送ってくる気配もなく、そもそも完成したのかどうなのか。まあ引き落としもなかったからいいといえばいいのですが、もしリリースされていたとするとちょっと心残りではありますね。
とまあ、私にはそんな過去があるもんですから、エンハンスド仕様になっているバッハコレクションCDを見つけたときには心躍りました。だって、パッケージに貼られたシールに interactive musical experience!!
なんて書いてあるんですよ。キット・コンセプトのことかー!! そう思った私は、ためらいもなく買いました。
買って、帰って、わくわくしながらコンピュータにCDをセットしたところ、私の見込みが違っていたことがわかりました。キット・コンセプトのキの字もありません。まあ、インタラクティブといえばインタラクティブではあるのですが、楽譜を表示させながら音楽を聴けたり、あるいはムービークリップを観賞できたり。けど、グールドのLDボックスを持ってる私にとって、これらムービーは特段重要なものではなく、だからこれはしくじったってやつですね。
でも、iPodを買って状況はちょっと好転したのでした。新しい動画も見られるiPod用の動画を用意する際に、私の手持ちのリソースはといえば、エンハンスドCDに収録されたムービーファイルがあるくらいで、そう、ここでようやくこのCDの価値が発見されたのです。
動いているグールドをいつでもどこでもiPodで観賞可能という素晴らしい状況が出現して、とりあえずクラシックファン向けのデモンストレーションでは大人気。なんせグールドは映像映えする演奏家ですからね!
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