2010年3月15日月曜日

『電撃大王』2010年4月号

 そういえば、買っていました、『電撃大王』2010年4月号。ものすごく久しぶりに買った『電撃大王』でした。以前買ったのは、ええと、いつだっけ、『あずまんが大王』の最終話が掲載された号だ。その号にですね、誌上通販、全員プレゼントといったほうが正しいんですかね、劇場公開された『あずまんが大王』のDVDを買えるっていう応募券がついていまして、そう、DVD欲しさに買ったのでした。さて、ものすごく久しぶりに『電撃大王』を買った、その理由はといいますと、ええ、付録なんですね。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』キャラクタービジュアルブックがついてくる。ああ、私ってちょろいな。我ながらそう思います。

でも買おうかどうかは結構迷ったのでした。いやね、きっとファンブックみたいなのは後で出るだろうし、今こうした付録で出るものは、限定されたものでしかないだろう。これのみに掲載のイラストとかも考えにくいしと思ったんですね。でも、まあ、持っててもいいかと思ったので、買った。そんなに高いもんじゃないし。けどこの雑誌に関しては、値段よりも嵩張るのが問題だなあ。

で、付録ですよ、付録。結構なページ数があるなって思いながら読み進めて、キャラクター紹介があって、そしてインタビューがあって、でも今インタビューを読んだらネタバレとかあるかも知れないから、ちょろっと見るだけにとどめておいて、と、そこで驚いたのですが、今『電撃大王』で連載されてるコミック版『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の第1話がまるまる入ってて、むしろそれがメイン。で、これがはじめて触れた『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』漫画版だったわけですが、想像以上にアニメを踏襲していて、逆に驚くほどでした。

というわけで、これで終わり、というのももったいないので、ぱらぱらめくりながら読むのですが、なにしろ普段読んでない雑誌です。知らない連載ばっかでしょう。だから、雰囲気を感じる程度にとどまっていたのですが、おおっと、『よつばと!』発見。先達て発売された9巻からそんなに時がたっていない。いや、やっぱり面白いです。それから『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』、これはしっかりとは読まなかったんだけど、漫画版は漫画版で独自の展開してるみたい。『こいこい★生徒会』、内容はわからんのですが、見た瞬間にあらきかなおだってわかるのは流石。

それでもって、ものすごいいきおいでとばしていくのですが、途中いくつかひっかかって、『とある科学の超電磁砲』、これ興味があるのだけどあまりに断片的すぎてわからなくてすごく残念。『特ダネ三面キャプターズ』、ああそうだ、今『電撃大王』で連載してるんだったっけか。好きだったな。だが、季節は過ぎ去ってしまった。『車輪の国、向日葵の少女』、原作のゲームにはちょっと興味があります。などなど。

そして最後に『百合星人ナオコサン』。あまりに久しぶりで、よく内容わからないんだけど、でもそれはいつものことだから、描かれてることそのまま受け入れて、みすずロボと戯れる柊が素敵。そして彩ちゃん。理屈もへったくれもなしに面白かったです。

2010年3月14日日曜日

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

 私にはめずらしく話題の本であります。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』。20世紀の経営学者、ピーター・ドラッカーの経営管理論を高校の野球部に適用してみたらどうなるだろう。しかも、主役は女子マネージャー。マネジメントを勘違いして、ドラッカーの『マネジメント』に手を出してしまい、普通ならやっちゃった、全然見当違いの本買っちゃったよ! となるところが、これを野球部に応用してみようと思ってしまう。興味引くには充分といっていいギミック、ケレン味が逆に清々しいじゃないですか。でも、私、手をこまぬいて、なかなか読もうとせずにいました。いえね、実はこういう売り方、気に食わないんですよ。でも評判いいみたいだし、新聞書評にも載ったしで、じゃあ買って読んでみようかと思ったのでした。ええ、よってめずらしく話題書なのであります。

買ったのは紀伊國屋書店。なんかね、ポイントサービスを始めたっていうので、持ってても損するものじゃないからと、作りにいったんですね。そのついでに、ああ、じゃあ試しに買ってみるか。それが、この本だったんですね。でもって私は、趣味の本ならともかく、ビジネス書など実用書は本というよりも道具だと思ってるので、普段なら傷みなんぞは気にしないのだけど、これに関しては美本を探してしまいました。いやね、この美本探索作業、あまりにも病的気質があからさまだから嫌なんですけど、どうしてもやめられない。ええ、こういう気質が発揮されるところ、それが私におけるこの本の位置付けを物語っています。

私は本を読むのがめちゃくちゃ遅いです。しかし、この本に関してはちょいと違いまして、この本、小説の体裁をとっていますが、読み物はドラッカーの『マネジメント』を紹介するための方便、刺身のツマに過ぎません。だから、ものすごい速度で読める。面白いように、びゅんびゅん読める。でもって、題材の選択がいいなと思ったのですね。高校の部活動、経営という概念が普通入りこまない組織を取り上げて、しかも身近であるから自分でも考えながら読んでいくことができます。今、どうもドラッカーはブームみたいですが、キーワードを取り上げてわかった気にさせるようなハウトゥー本読むなら、これ読んだ方がずっとよさそうです。ドラッカー『マネジメント』からの引用があり、それを野球部に応用するにはどうしたらよいだろう。野球部という営利を目的としない組織において顧客とは誰だろう。頭の中に、あれじゃないか、これもいえるのではないかと思い浮かべながら読み進めていくと、この本における解釈が提示される。こういう、問い掛けに対する自分なりの答えを探すような読み方ができるというのは、なかなかに面白く、楽しいものでありました。

でも、これ、刺身のツマがちょいとまずい。いやね、これは本題じゃないんだから突っ込んじゃいかんとも思うんだけど、やっぱり物語の姿したものを目の前に置かれると、そこに物語を期待してしまうのが私という人間みたいでしてね、あまりにもうまくことが運びすぎる。いやね、これが現実だったら、女子マネージャーの分際で監督気取りかよとかいい出す部員が出てきたり、あるいは部内における権力闘争みたいなのおこりそうじゃない? いや、わかってるねんで。そんなことになったら『マネジメント』の実践どころじゃなくなるって。でも、話が部内にとどまってたうちはいいんだけど、外部に波及するほどにイージーさが目立ってきて、すべてが主人公の属する野球部にとって都合よく動きすぎるってのはどうなんだ。いや、わかってるんです、ここで吹奏楽部が、いくらコンサルティング受けた恩があるとはいっても、うちにはうちの目標があるんです、夏の頭には大事な吹奏楽コンクール予選があるんです。そういって抵抗しちゃ腰砕けだって。でもさ、私は学生時分、野球部ととことん仲の悪かった、むしろ恨みにさえ思っていた、そんな吹奏楽部員だったんだ。だから、周囲のあまりに理解のよすぎるところ、気に食わねえなあって思ってるみたいで、でもドラマをがつんと作ってしまったら、『マネジメント』どころじゃなくなるからしかたがないよな。都合よくここぞというところで死んじゃったりするのも、それでもって発奮したりするのも、しかたないよなって。これ、物語の展開としては禁じ手というか、やりがちだけどやっちゃいかんといわれてるもんの典型なんじゃないか。いや、まあ、昨今ではこれが禁じ手というの知らない人も多いみたいだけど、ドラマとかなんかでもよく見るもんね、こういうの。ええ、まあ、ちょっとどうかと思ったの! 描ききれない中途半端なドラマ、お涙頂戴なんてなしにして、単なる状況の提示に徹してくれた方がずっとよかった!

あくまでも刺身のツマにすぎない物語が、逆に足を引いちゃうっていうのは惜しかったかなって思ったのでした。でも、ドラッカーという名前を聞いたことくらいはあるけどよく知らない、ましてや『マネジメント』なんて読んだこともないという人が、いったいそれはどういうものだろうと触れる第一歩としてはいいんじゃないかと思います。こういう風に応用していけばいいよ。コンサルティング受けて、ひとつのケースに『マネジメント』を適用してみましょう、そういう説明受けたと思えばいいんです。まずはおおまかに感じをつかんでみる。そのとっかかりには適した本であると思います。で、次は、自分あるいは自分の属する組織において実践していく段階に進むというわけです。そしてその際には、エッセンシャル版でいいから『マネジメント』を読んでね、ってことなのでしょうね。

2010年3月13日土曜日

『まんがタイムラブリー』2010年4月号

『まんがタイムラブリー』2010年4月号、発売です。表紙はお花見なのかな。ハンディカラオケで歌う『夏生ナウプリンティング!』のヒロインふたり。でも、緑のなんかを泡立ててる『つぼみ園』のことみ先生。なんじゃこりゃ! と思ったけど、抹茶か。抹茶だな。そうか、やっぱりお花見なのかと納得した次第です。総力特集辻灯子もお重ビールだんごとお花見セット。ヒロイン三人揃い踏みはちょっと嬉しいです。でもって、『放課後のピアニスト』楽譜が全音のバッハ。シド君、君は弾けるんやから、もっといい楽譜お使いよ。なんて思ったりしてしまうのでありました。

うさぎのーと』のすずめを見て、ああ懐しいとこばとを思い出しました。『いつも心に太陽新聞』のヒロインです。今回もうさぎ先生のらしさ、冬眠動物への愛があふれていて、しかし花組と冬眠組、ちゃんと冬眠組に人が集まるっていうところがよりらしくていい感じです。そして片岡をめぐる男たちの恋模様。素敵!

パニクリぐらし☆』、いよいよ結婚ということになって、佳境でありますね。ふたりの父親、それぞれの模様が描かれて、結構シリアスなその展開、乗り越えていく兄貴はよかったなと。けど、長瀬さんの親父さんは、ちっとも乗り越えられそうにないですね……。むしろシリアスを緩和する、そんなキャラクターになってしまって、こうした親父像っていうのもまた、愛すべきものなのかも知れません。きっと孫ができたらいちころだ。

『だんつま』、星野ユキさん再登場。可愛い奥さんだと思います。見栄っ張りで寂しがり屋。しっかりしてるようで、意外と抜けてる。メインの三人ともまた違った個性で、けれどうまく調和して、よい関係ができている。すごく見ていて、ほのぼのとするのでした。しかしさ、克ちゃん、すごいな。この人もまた独特、その独特さが素晴しいです。

『ごめんね、委員長』、面白かった。ぱん子さんが審判でなくプレーヤーとして参加したことで、またいつもと違ったぱん子さんの様子が見られて、そして委員長の嫉妬、ああもう可愛いねえ。いつもひどい目にあわされてる、そんな風に見えるけど、いや実際そうなんだろうけど、でもそれでも仲のいい友達なんだなって思ってる。そうした心情が見えてきた、そのことがとても読んでいて嬉しく思える、そんな話でありました。

『ペンとチョコレート』、新展開ですよ。打ち切りをくらった漫画家を、原作付きで引き上げようとする他誌編集者。そのやり手そのものといった振る舞い。それはフタバトワコのプライドを傷つけつつも、確実に結果を出して、けれどこのフタバのうちにわだかまるもの。それがどういった今後に繋っていくのだろう。それはすごく楽しみであります。納得づくと自分に言い聞かせながら、しかし乖離していく自身と現実のギャップ。なかなかのアイデンティティ・クライシスであります。

そして総力特集辻灯子であります。『ただいま独身中』はなんだかちょっと転換点が作られた? そんな印象のある回でありました。こうした展開、ちょっと異色だと思う。けれど、ちょっと違う印象に出会える、それはすごく嬉しいことであります。

今回掲載は『ただいま勉強中』と『ふたご最前線』、そして『虹色占い師』ですよ。ああ、懐しい、『虹色占い師』。この漫画もまた、ちょっとずつ変わってるお嬢さんたちが、楽しそうにやっている。そんな漫画であったのだなあと再確認させられて、そして新人占い師が自分の適正を考えながら、自己像を自身のうちに作り上げていく、そんな感じの話だったのだなあ、と確認したように思います。結構好きだったんだけど、いや、ほんと、惜しかった。で、思うんだけどさ、『ただいま勤務中』から現在に至るまでの未収録を収めた単行本とか出たら買っちゃうと思うんですよね。まあ、出ないだろうと思ってるんですけどさ。いや、ほんと、惜しいなって思ってしまうんですよ。さらにいえば、なんで総力特集なんてやっておきながら、今月頭に出たところの『勉強中』3巻の宣伝をもっと露骨にやらないの? 惜しいと思います。柱と1ページ広告に加えて、扉に煽りいれちゃえばいいのに。なんて思ったのでした。柱も1ページ広告も、ぱっと読み飛ばしてしまうから、印象にあんまり残らないです。

『放課後のピアニスト』、なかなかに面白いです。ピアノが周囲に影響をあたえてるっていう、それでお供えが置かれてるっていう、実に面白い。今回はレミの弱点、体力が足りないっていうのがね語られて、ああ、わかる。で、雑な演奏からも学んでいるっていうところ、こういうのも面白い。しかしこういう、演奏を楽しんでいる、けれど楽しみきれない理由があるっていうの、なんかいいなって。弱点からも学び、そしてここぞという時に輝く。レミはプロのピアニストとして活躍するには大きなハンデもってるけど、でも今という時代ならそれでも活躍できるところはきっとある。ええ、なんか魅力的な娘であると思うのです。

『少女カフェ』、素晴しい扉! 今回は葉月さんの職業もろもろが語られて、しかしつくしの厳しいつっこみと、それを先取りして回避する葉月さん。いい感じにコミュニケーションできてるなと思って、面白かったです。でもって、マスターは姫なのか。小さな王子様はすごく可愛い。ええ、かっこよくて可愛い。凛々しくしっかりした娘、いいじゃん、と思ってしまうんですね。

『ヒーロー警報』、これは続くのか? 助手少年Hの初恋が語られて、まあ失恋なんすけど、そして再会なのか? これ、次回に続くならそれは楽しみかも。話の都合からなのか、失恋することが常に予定されているHはかわいそうで、しかしそれが面白いんですね。憎めないいい奴だからこそ、こうした不憫な状況に、なんだか応援したい気持ちにもなろうというものなのでしょう。しかも、この飲みもきっとHのおごりなんだろうなあ。もう、大好きです。

『ものかき倶楽部』、部誌を作ろうという話。まだ部員になっていないもえみが、なんだかんだとアドバイスしたりして、そしてうまく部に迎えられて、というかずっともえみが抵抗してたんだっけか。このもえみの素直でなさ、けど面倒見はいいみたいなところ、よいなって思います。部誌は、文化祭とかで出すのが一般的だけど、そうでないなら、ええと、うーん、図書館に置いてもらうのが一番だと思うよ! 今の時代はWebで公開とかも可能だったりするけど、昔に比べると発表機会がすごく広がってるって思うけど、そんな時代にこうして手作りで部誌作るっていうのね、ちょっとノスタルジック感じさせてくれて、よいなって思ったりしたんですね。

『カフェらった』、最終回です。そうか、もう4年近く連載されてたんですね。だんだんに好きになっていった、そんな漫画でした。メイド喫茶ものだけど、メイドという色が自然に存在するようになって、それで春那たちのキャラクターが素直に伝わってくると感じてきたころには、もう好きになっていたのだと思います。なかなかにいい最終回でした。こうして、いい終わり方すると、いい漫画だったなあって思ってしまうんですね。ええ、いい漫画でした。

『ポンテ!』、面白いです。ガラス職人を目指した理由なんてのが出てきましたけど、そのガラス職人を目指すという過程での出来事。通過儀礼とか窯番とか、それで経済状況。簡単じゃないんだなあ。こういう好きという気持ちが原動力になる仕事って、どんなでも、経済的には苦境におちいってしまいがちですよね。でも好きという気持ちは止まらない。うん、だから魅力的と思えるんだ、そう思うんですね。

『ちはる日和』、初登場ゲストです。女子高生もの、お兄ちゃんがいる。幼ないというか天然というか、そんな妹が可愛く、けれどちょっと心配といったような漫画です。漫画自体としては大人しいなという印象です。アグレッシブに踏み込んでくるような表現はないから、心安らかに読める、そのテンポは結構好きです。

『空に唄えば』、これも好きな漫画です。うまくないんだけど、歌うのが好き。で、合唱部とは別に、仲間集めて合唱しようという、そんなヒロインが支えられながら、ちょっとずつうまくなっていく、そして皆で一緒に歌えば嬉しいってところがいいんですね。ヒロインは確かにうまくないんだけど、それでも歌いたい、うまくなりたい、そういう気持ちを素直に口にして、その気持ちがまた別の誰かに影響していくっていう、その連鎖するところもよいのだと思います。気に入ってる。だから、頑張って欲しいって思っています。

  • 『まんがタイムラブリー』第17巻第4号(2010年4月号)

2010年3月12日金曜日

少女素数

 『少女素数』、『まんがタイムきららフォワード』にて連載されている漫画、本日単行本が刊行されました。表紙にはあんずとすみれ、ふたりが手を取り合って、うつむきかげんに立っている。静かで、しめやかな雰囲気がしっとりとして、心にそっと触れてくるような、そんな印象が素敵です。ぱっと鮮やかに花開く、そうした魅力は本編にとっておいたのでしょうか。表紙ではしとやかに、そして本編はじまればにぎやかに。多面体の結晶のように、光の加減でいかようにも違って輝く、少女期というきらめく季節をスケッチする。『少女素数』がはじまります。

作者のいうところによると、これは女の子の可愛いを追求しようという、そうした漫画なのだそうです。ヒロインは、あんずとすみれ、ふたごの姉妹。金髪のあんず、碧眼のすみれ、それぞれに父から受け継いだ特徴を備えて、綺麗。ふたりでいれば騒がしいくらいに元気。けれど、ひとりになればしおらしく内気さ見せるすみれなど、なかなかに一筋縄ではいかない娘らです。

『少女素数』には、そんなふたりを見つめる視点があって、それがこの漫画の質感を決定づける要素となっているのではないか、そう思っています。あんずとすみれの兄。彼の、妹たちを見守る目はやさしくて、そして可愛さ、美しさに対する敬意のようなものを感じさせるのですね。造形作家をしている、そのせいで、あんず、すみれの友人の男の子、ぱっくんからは尊敬の眼差しを向けられたりする、そんな人。ちょっと朴訥としていて、安心できる、そんな包容力感じさせる人なんですが、そのせいで年より老けてみられる。ええ、けれどその兄であり父でもあるかのような態度が、この漫画に浮つきよりも落ち着きを与えて、またその落ち着きが、ややもすれば瞬く間に過ぎさってしまいかねない、そんな少女であれる時代の輝きを一層につのらせるのです。

『少女素数』は、女の子の可愛いが追求される漫画。望むと望まざるとにかかわらず、変化しないではおられない時期。儚さが美しさをより際立たせるのかも知れない。そうした時期特有の美というものを掬いとろうとするかのように慈しむ漫画ではあるのですが、けれどこれがいつ物語として流れ出し、動きはじめるのだろう、そんな予感もしてしまうのですね。作者からすれば、そうした意図も予定もないかも知れないけれど、私はこの人は、ただただその時々の美をスナップショット撮るみたいに保存するだけのつもりでいながら、ついには物語らないではいられない、そうした躍動する思いを胸の奥に抱えてると、そんな風に感じているから、だから今はただ日常的風景のちょっとした描写であるようなものが、気付けば思いもしなかった伏線として振舞うようになったりするんじゃないかって、そんなこと思いながら読んでるんですね。

いつか動くのかな、わくわくですよ。ええ、時よ、今しばしそこに留まっていて、と望みながら、いつか動かないではおられない、そんな予感にふるえる心を自身感じとっています。ええ、すごく期待してしまう、しないではおられない。『少女素数』とはそんな漫画であるのです。

  • 長月みそか『少女素数』第1巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

2010年3月11日木曜日

音楽史の休日 ― 見落されたエピソード

私は、子供の時分、音楽に憧れを持っていたものの、あまり恵まれた環境にいなくてですね、だって、うちには音楽聴くのを趣味にしてる人間とかいなかったんです。だから、学研の児童向け事典の音楽の巻に入ってたレコードを、それこそ繰り返し繰り返し聴いていた、そんな子供であったのですね。これ、クラシックの話。当時はレコードとか高くて、テレビで見て聴いて、みたいなのが一般的だった時代です。そんな私が本格的に音楽に興味を持ちはじめたのっていつだったのかな、って思うと、それはやっぱり高校時分なんじゃないかなって思います。図書館で音楽関係の本をいろいろ借りて読んだ、それで、音楽ってのは面白そうだなあって思った。それまではただ曲が好きだっただけ。それが、曲の背景にも興味が広がった。ええ、大きな転換点だったと思います。

音楽の背景に興味を持つようになったのは、所属した吹奏楽部、それがですね、毎年5月に定期演奏会するんですね。だから、新入生なんてほったらかしだった。下働きというか人足というか、そういう扱いを受けるのが例年のことだったのですけど、私はそんなの興味なかったから、出席だけ取って図書室に入りびたってたんです。本読んで、雑誌読んで、そんな放課後。そこで出会ったのが『音楽史の休日』という本だったんですね。

これ、タイトルにあるように音楽史に関する本です。ですが、正統的な音楽史をがっちりしっかり書いてます、っていうような本ではなくてですね、音楽史の裏にはこんな面白エピソードがあるんですよって紹介する本でした。基本的にエピソード単位で語られるので、歴史的に積み重ねられていくものを把握しようという本ではないのですが、そういうのが知りたかったらちゃんとした音楽史のテキストを読めばいい。この本は、そうした体系的な知識を得るよりも、面白エピソードを通して音楽や音楽家を身近に感じることのできる、そういった類いのものなのです。

でも、ただ面白いだけじゃなくて、結構しっかりしたエピソードもあったです。もう、忘れもしないです。ヘンデルの『水上の音楽』に関するエピソード。これ、ヘンデルが王室においていかに立ち回ったかっていう話なんですが、当時ヘンデルが働いてたのはイギリスの王室なんですけどね、ええと、アン王女の時代です。本職はハノーヴァーの宮廷楽長だったにもかかわらず、イギリスに入りびたってたんです。

面白いのはここからです。アン王女、亡くなります。そうしたら、よりにもよってハノーヴァーの選帝候ゲオルク・ルートヴィヒがイギリス王室にやってくるんです。名前も変わってジョージ1世。このへんは、世界史にも出てくる話。けど、世界史だけじゃ、この出来事の影で右往左往したろう音楽家の姿は見えてきません。ええ、きっとうろたえたんだろうと思うんです。ずっと、お前、帰ってこいよといわれてたのをほったらかしてたんですよ。そうしたら、雇用主がこっちにやってきちゃった。しまった。どうしよう! ヘンデルは困ってしまって、そうだ、王様の船遊びにナイスな楽曲プレゼントして御機嫌とろう! って感じに作られたのが『水上の音楽』だったというような話があったとかなかったとかいうんですね。

この伝説は有名なもので、この時代の音楽が好きという人間なら大抵知ってるんじゃないかと思います。最近の研究では、このエピソードは後に作られたものという説が主流になってたような気もするんですが、けれど当時の私にとっては、ものすごく衝撃的な話であったんですね。音楽というものが、音楽家というものが、歴史的事件に深く関係しているんだって。音楽はまさに社会や歴史に関わりうるものであって、また歴史というものはただ出来事の羅列されるようなものではないんだって。その影にはこうした個人の生きて思って動いている、そういうようなものなんだって、実感的に理解したのはこの本のおかげでありました。ええ、歴史観まで変化させてしまったのです。

この本、絶版して随分たつのですけど、復刊して欲しいなって思うんですけど、最新の研究からしたら古い記述があったりするとかなんでしょうかね、リバイバルする気配はなくて、古書で入手するしかないというのが残念なところです。私も、これ、買っておかなかったのは失敗だったと思っています。ネタ本としても優秀なので、折に欲しいなって思うことがあるんですね。

2010年3月10日水曜日

まんがタイムきらら:系列3誌についての印象

ついこないだ、『まんがタイムきららキャラット』について書いていた時のこと、好きな漫画が多すぎるせいで感想が長くなって、書いても書いても終わらない、みたいにいってたんです。沢山書くのもしんどいし、かといって好きな漫画を飛ばすのもまた辛い、そんな感じの話。そうしたら、『きらら』と『キャラット』の違いってなんでしょうっていう質問をうけたんですね。ああ、なんとなく違うって思ってる、でも実際のところ、どこがどう違ってるんだろう? 考えれば考えるほどわからなくなりまして、とりあえず宿題にしてもらったのでした。

けど、本当にどれだけ違いがあるんだろう。『MAX』は結構違うかなっていう印象はあるんですよね。これは雑誌創刊時の印象のせいかも知れないのですけど、『きらら』よりも『キャラット』よりも、より先鋭化された雑誌としてスタートして、けれどそれが微妙に当初路線から逸れたせいで、なんともいえん独自色が残った、そんな感じにとらえています。色物っていったら失礼ですけど、自らカテゴライズされることを拒否するかのような自由さを持って展開する、そんな漫画が多いのが『MAX』という印象があるんですね。

じゃあ『きらら』と『キャラット』は? というと、『キャラット』はもともとファンタジー色の強い漫画を集めてみました、っていう雑誌だと思うのですが、そういう色はもうなくなってるように思うんですね。じゃあ、どんな色なのさ、といわれるとはたと立ち止まる。厳密に見ようとすれば、『きらら』はこうで、『キャラット』はこう。こういうところが特色で、こういうところが違います、といえるほどに違ってはいないと思うのです。さらにいえば、『MAX』も同様なんだと思います。だから、ここは考えてはいけない。考えるのではなく感じたことをそのまま言葉にしたらどうなるだろう。

昨日、『まんがタイムきらら』について書いてみた時に、ふと思ったんですね。私にとって『きらら』とは、オーソドックスながらも結構アグレッシブに毛色の違う新作を開拓しようとしてる雑誌かなって。対して『キャラット』はというと、大幅に逸脱することを避ける、おとなしい、そんな印象があるんですね。この逸脱を避けるという印象は、一時期の『キャラット』の印象によるものかもなって。えっ、『火星ロボ大決戦!』とか載ってたのに? 『雅さんちの戦闘事情』とかも載ってたのに? っていわれたら、たしかにそのとおりなんですけど、けれどキャラクターの心情や物語を追おうとする、そんな漫画が記憶に色濃く残ってる、そんな気がするんですね。

オーソドックスなのは『きらら』なんだと思います。だから、『キャラット』もオーソドックスから逸脱しようとする、そんな傾向を持ってるんだとは思うのです。けれど、その逸脱は私の傾向にあっている。だから、おとなしい、なんて感想が出てくるのでしょう。水があっている、同じテンポで踊れる、っていうだけの話。きっと一般化はできない、そんな極めて個人的な感想でありました。

2010年3月9日火曜日

『まんがタイムきらら』2010年4月号

『まんがタイムきらら』2010年4月号が発売です。いやあ、今日は朝から一日雨でした。私がいつも四コマ誌を買っているいきつけのコンビニでは、これまで袋いりませんといい続けてきた甲斐あって、なにもいわずとも袋がつかなくなるまでに顔パス状態であるのですが、しかし今日はさすがに袋をくださいといいました。いやね、コンビニは駅前にあるんですけど、そこから駅までのわずかの距離で濡れてしまいそうだったの! 濡れたらショックじゃないですか。表紙は『けいおん!』。青空のもと、ジャンプする唯と梓であります。

けいおん!』は、和ちゃんが扉に登場。ああ、なんという可愛さだろう、という前にちょいとイラストコンテストについても書きたい。いやね、中野梓賞が素敵すぎる。もちろん、他のイラストが悪いなんていいません。けど、中野梓賞の力抜けて、けどそのゆったり加減が可愛くて、これはほんと素晴しい。愛があふれてるなって、楽しさもまたすごいなと思ったわけですよ。

ということで本編です。受験直前の状況。D判定のふたりが、受験を目前として特訓するっていう展開、唯は和ちゃんに、律は澪にそれぞれ頼るんですけど、そんな最中、ひとりあぶれた紬が梓に接近するっていう、これは1月号掲載の裏側? 続き? なんか一気に広がったぞ。そんな感じでした。しかし今回は、甘える憂や、意外にしっかりしてる唯など、メインキャラクターひととおり登場させて、また違った側面描く、なかなかに面白い回でありました。

ふおんコネクト!』、ああ、プラモデル作りたいなあ。これ、MG Vガンダム ver.Kaだと思うんですけど、実際すごい出来らしいですね。稼動範囲の広さ、また変形等のギミックについての解説見たときには、本気で欲しいと思ったものでしたよ。けど、同じ作るなら色塗りたい。そうなると、すごい手間。時間が足りな過ぎる。ということから見送りまして、けどこうしてまた意識させられると、素組みでもいいから作りたいかな、なんて思えてきて危険です。しかし、プラモデルの技術とか、すごいことになってるなあと、新しいのが出るたびに思わされてるように思います。

『チェリーブロッサム!』、ゲストです。園芸部漫画、でもってちょっとお色気系? と思ったら、見た目お嬢様、実質変態セクハラ娘がものすごいインパクトで迫ってきて、ごめん、ちょっとどころじゃなく面白かったです。次回掲載あるなら、その時にどう思うか、それで評価は決まってくるんじゃないかって思うのですが、今回の勢いからすれば、きっと面白いと思ってしまうんじゃないかな、なんて思っています。なんか、くやしいぞ。あと、ちょっと肉感的な絵はあんまり好みじゃない。でも、面白いぞ。

『R18!』は、これ、コンピュータで作業してる人なら、多かれ少なかれ共感するんじゃないかなという話。ええ、私も昔はよくこうした目にあったものでした。私の作る文書は主にテキストなので、サイズも小さく、ゆえにトラブル時の破損なんてのも少ないわけですが、それでもやっぱりあるわけですよ。一文書くごとに、手が自動的に保存コマンドを叩くとはいえ、ソフトウェアの異常? により失われることもあるわけで、数日かけたAccessデータベースが再起不能になったりとかね。帰りたいと思う、その魂の抜けたような状況、ほんとわかります。で、そうしたトラブルを同僚同士で起こりますようにと願う。悪い人たちだなあ、とは思うのだけど、本当に仲が悪かったら洒落にならん発想ですよ。それがこうして冗談ごとで済むというところ、いい職場、仲のいい人たちだなって思います。

『シネマト・パラダイス』、これ素晴しい。変わった娘らの漫画だなあ、と思ってたんだけど、いや、まあ今回も変わってるんですけど、もう最高。あやかちゃん可愛すぎ。どんだけマイペースやねん。でもって、どんだけわずらわしいねん、君。もう、めちゃくちゃ可愛いです。あやかちゃんとさきの学校にえみもやってきて、それでもって一緒に街歩き。無理矢理手を繋ごうとするあやかちゃん。映画館にいって、中に入らなくってもいいっていう、パンフレット好きのえみ。もう変すぎる。個性的すぎる。それも無理に作った個性っていうより、ほんとに自然というのかな、身近にいそうって感じはまったくないくせに、いてもおかしくないような、実際いそうな、そんな個性の押し出しが最高です。私の好きなタイプでいうと、きっとえみです。でもあやかちゃんが可愛くてしかたありません。

『うさかめコンボ!』、2回目にして、しっかりと面白い。露天風呂から親睦会、寮の状況描いて、キャラクターを紹介していくんですけどね、みながいい感じに動いていて、実に楽しかったです。もちろん、まだまだ顔見せといった段階です。きっと、続いて個性がよりしっかりと描かれるようになれば、もっと面白くなるだろうな、なんて予感してしまう。そんな回でした。

『アイオーンコード』、ゲストです。ラノベ的といったらいいのか、中二的といったりするんですか? 特殊な能力を持った生徒の集められた学校が舞台。過去を見ることのできるヒロインが、未来予知をする少女や強烈な幸運を持ったクラスメイトとともに過ごす日常? を描いていく模様です。でも、結構面白かったです。超能力があることを当然としながらも、そればかりに頼らない。けれど、ここというところで超能力を生かしてる。悪くないです、よかったですよ。

PONG PONG PONG!』、もう大好き。祐太がついにくじけた? いや、もちろん江上さんの手紙のせいなんですけど……。しかし今回は、高坂を利用するすべを覚えたリコや、説得が通じない、しかも誤解しまくる江上さんといった強烈キャラクターが相互にぶつかりあって拮抗するかのような状況描かれて、スリリング! 最高でした。しかし、リコが祐太と暮らしてたっていう事実を知って、リコに嫉妬する江上、祐太に敵意募らせる高坂、もうどうもこうもない状況成立してしまって、そこに飛び込む主人公ですよ。どうなるんだろう。どう考えても、酷いことにしかなりそうにない。そんな終わり方に、次号がもはや楽しみになってしまっています。

『99s』、ゲストです。ファンタジーとあるけれど、和製RPG的世界をベースにした冒険者四コマって風情であります。で、99sとあるように、冒険者が全員レベル99、カンストですかね? 魔王よりも圧倒的に強くて、魔王の城で好き放題に暴れちゃうっていう、結構夢も希望も、血も涙もない感じの漫画でありました。正直なところをいいますと、もう一味欲しいという感じです。RPGパロディものとしては、ストレートな展開だなという感想であったのでした。

メロ3』、わあ、素敵。花粉症の話であります。残念ながら、私は花粉症は発症してなくて、だからそんなに共感的ではあれないのですが、しかしそれにしても木ノ子が可愛い。ちょっとでも可愛く見られたいと思う、その気持ちが健気ではありませんか。でもって、ポン太の妹、真都もすごくいい子。いや、しかしあの場面を目撃して、そういくのかと驚いた。いやもう、陸前君のことですよ。きっと、妹を彼女と勘違いするとか、好きになっちゃうとか、そういうのだろうと思ったんです。したら、全然違ってた。陸前君、眼鏡かけるとなかなかいい感じ。それはそれでよろしくてよ。

My Private D☆V、ととねみぎです。ネコミミ、そしてロリが萌えであるとのこと、って、それはつまり『ねこきっさ』のヒロインがクゥである理由ですか! 私は獣耳についてはピンとこないのですが、でもロリ巨乳がダメというのはよくわかる気がします。ええ、なんだかわかってしまう気がします。

  • 『まんがタイムきらら』第8巻第4号(2010年4月号)

2010年3月8日月曜日

ただいま勉強中

 ただいま勉強中』の第3巻が発売されて、これでもって完結とあいなりました。個性的な女子高生たちのお話。なんだか要領の悪い由良と、元気というかちょっと乱暴? な飛鳥、このふたりがメイン中のメインで、そしてバレー部一年、元気なんだけれどちょっとのんびりしてる葉菜子、オカルト大好きの千里。第3巻では、恋する美術部員、山田初音も加わって、他には担任やら理事やらと、にぎやかでちょっと癖のある女性たちが、本当に魅力的な漫画であったのですね。もともとからして私は辻灯子の漫画が好きであるわけですが、それにしてもこの漫画、好きでした。

第3巻で気になった登場人物、山田初音、彼女のエピソードは妙にセンチメンタルでありまして、学校の先生に恋をしてる。けれど、それをはっきりとは口にしない。先生に会いたい一心で、イーゼル持ち出して土手で絵を描いたりしているっていう健気さ、いじらしさはもうたまらんものがありましてね、辻灯子という人はあまり恋愛の要素を前面に出したりしないという印象があったのですが、そうした考えなど一度に払拭されてしまうほどに素敵なエピソード。ああ、あんな娘に恋されるだなんて、どんなにか仕合わせなことであろうかと思ったのでした。

けれど、そうした情を描いて、ただ単なるラブコメの展開にならないのが辻灯子らしいともいえまして、素直じゃない山田初音。恋愛はなかなか簡単には成就しなさそうで、そのやきもき、めちゃくちゃ可愛くて、そして面白い。実に乙女であるんですけど、乙女一色ではあれないというところ。目の前の状況、その時々の楽しみや自分の興味、そうしたもろもろに対して素直である、そんなところがシリアスに水をさして、また逆に乙女の表情を際立たせたりもして、ほんと、きらきらと多彩に色を変えて美しい、万華鏡のような娘たちなのであるのでした。

そんな彼女らの興味は、どことなくはみだしているっていうか、一般的な興味や関心、ありようとはちょっとずれてるようでしてね、そのずれてるってところが本当に素敵であったのでした。優しい世界であると思います。はぐれもの、変わりものが、そのありのままで過ごしている空間。私が辻灯子の漫画が好きで好きでたまらないという時は、このはずれものの楽園といった雰囲気にやられちまってる、そんな状態であるのかも知れません。『ただいま勉強中』もそう。他の漫画もそうだったなあって思って、ええ、はずれものである私の憧れてしまう、そんな世界が辻灯子の漫画にはあるんだなって思って、だからもう好きだっていうんですね。

『ただいま勉強中』は、生徒たちが一年生から進級することなく終わってしまいました。もし続きがあるなら、読みたい。彼女らのこれからがあるなら知りたい。そんな風に思えるのは、やっぱり彼女らのことが好きだったからなんでしょうね。魅力的で、ちょっとあやうくて、心配だったりもする、そんな彼女たち。でも、ほんと、いい子たちでした。

  • 辻灯子『ただいま勉強中』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 辻灯子『ただいま勉強中』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 辻灯子『ただいま勉強中』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

2010年3月7日日曜日

ヒツジの執事

 『ヒツジの執事』、連載中は『子うさぎ月暦』というタイトルでした。作者はナントカ。ええ、『新釈ファンタジー絵巻』を描いてらした方です。『子うさぎ月暦』は、『新釈ファンタジー絵巻』の続編とでもいいますか、『絵巻』のヒロインかぐやの婚約者であるミニ様を主人公とした漫画の四コマ編であったのですね。ミニ様の幼少のころ、まだ物心もつかない、それくらいの時期を描いて、執事のサフォークをはじめとするお屋敷の皆がミニ様を育てつつ、屋敷を切り盛りする、そんな漫画であります。それがこうして単行本となるにあたって、ミニ様よりもサフォークにメインのスポットがあたるよう、エピソードが抜粋されたのでした。

おそらく、面白さという点で、お屋敷で働く皆に注目した方がより面白かろうという判断がなされたのでしょう。ええ、実際めちゃくちゃ面白いです。サフォークは羊。羊毛を刈られてしまったり、またサフォークの思い人であるメイド長ミセスコリーはその名のとおり牧羊犬であり、ここに立場を超えた弱肉強食的関係が成立するという面白さ。いや、もう、弱肉強食って比喩じゃないよな。マトンとかいってるくらいだもんな。いや、食べたりはないですけどね。

この漫画には、サフォークをはじめとするお屋敷の皆が幼い当主ミニ様に注ぐ、愛情があふれんばかりにあって、働く人たちの助けあいながら自分たちの仕事に誇りをもって取り組む、そんな姿が魅力的に描かれて、そして見ればどうにも笑わずにはおられないような、強烈なユーモアが生き生きとしているのです。私は、それらの要素、どれもが好きでした。思いやりを持って幼い主に接するも、毛を刈られてしまえばミニ様の興味は羊毛へいってしまう。中身、食肉っぽい方はどうしようといった切ないネタさえ面白く、またそうしたエピソードに浮かぶサフォークの哀愁がとてもいい。読むごとに好きになる。サフォークが、みなが好きになって、そしてナントカの漫画が好きだなと確認するかのようなのです。

『ヒツジの執事』には、職場ものとしての面白さがあるのですね。誰もが自分の仕事をまっとうしようとしている。そこに擬人化動物ものとしての面白みが加えられ、また月面に生活するというSFっぽい要素が加えられ、そしてもちろん、私たちの日常にも起こるようなこと、共感を持って受け入れられるものもたくさんあって、あの新車納入から初心者ドライバーに振り回される話とか、もう死にそうに面白い。ほのかな恋の要素なんかもあったりする。サフォークの恋はなかなか成就しそうにないけれど、でもなんか応援したくなって、これはサフォークの人柄あってのことかも知れません。

そして、人情ものとしての味わい、それが素晴しい。基本的にはコメディなんです。でも、折に、自分を引き立ててくれた先々代先代への恩や敬意が表されて、ああ、彼らの仕事に対する誇りの源はこれであるかと思わされるのですね。先代の恩あればこそ、ミニ様への深い愛情も理解できる。事故で亡くなった先代。ただひとり残された子供、それがミニ様でした。『子うさぎ月暦』は悲しみを底に隠しながら、明るく楽しいお屋敷の様子を描いて、情は深く、暖かで、やさしく、ええ、そうしたもろもろがサフォークというヒツジの執事に凝集されているのかも知れません。

ナントカはシニカルな笑いをもって、情愛の豊かにあふれる様を表現する。私の愛してやまない作家です。抜粋とはいえ通して読んだ『ヒツジの執事』。笑って、笑って、時に涙につんとなって、けれど最後にはきっと暖かな気持ちで読み終えることのできる。そんな一冊。広く読まれて欲しい、心からそう思っています。

  • ナントカ『ヒツジの執事』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

2010年3月6日土曜日

『まんがタイム』2010年4月号

『まんがタイム』2010年4月号は本日発売です。表紙はメインに『おとぼけ課長』がどーんと配されて、ワンカップ片手にお花見の風情ですね。他も概ね同様で、『みそララ』は花見で酒飲んで泣き上戸なのか謝り上戸なのか、おかしなことになっていますし、『ひまじん』は花は花でもチューリップを見てる。これ、多分、アパートの自室だな。そして、『だって愛してる』は、夫、妻ふたりが寄り添っている。あたたかな情景ですね。春、花見といえど、いろいろな楽しみ方、かたちがあるってことなのでしょう。

『マチルダ! — 異文化交流記』が『タイム』でも連載開始です。もともとは『オリジナル』での連載であったのですが、人気があったのでしょうか、こうして二誌連載となりました。私としては大歓迎。『マチルダ!』、好きなんですよ。いや、茶崎白湯の漫画が好きといったほうが正しいかも知れません。今回は第1回ということもあってでしょうか、あやとマチルダ、ふたりだけの状況。日本の昔話に憧れる? そんなマチルダが、全部わかったうえであやを困らせるといったところがよく出てまして、このマチルダのちょっと理不尽、けれど最後の一本なんかに出てると思うのですが、理不尽でありながら、なんだか詩情のようなもの感じさせたりもするっていうのね、ちょっとそういうところが好きみたいですよ。でも、最後のも理不尽ですよね。この困らせて楽しんでいるっていうの、マチルダ流の愛情表現なのかも知れません。気に入られたら最後だな……。

すいーとるーむ?』は、少々固まりつつあった状況が揺り動かされて、また少し初期のころの味わいが取り戻されてきているなという感じです。かつて永井くんがやってたこと、秋さんが再びなぞっているとでもいいましょうか。けれどそこには、永井くんだったから駄目なんでしょという見下しがあったり、また秋さんの戦略が有効だったりするという、ちょっとゆかりさんを巡る状況が変化するんじゃないか、などと思わせる展開があって、けれど結局ゆかりさんを攻略することはできないという、そのお定まりが快感であります。

『わさんぼん』のオリジナル菓子はずいぶん長い取り組みになってます。焦らず腐らず、しっかり取り組んでるってのは、旦那の感想ではないですが、たいしたものだと思います。しかし、今回は萩くんが素晴しい。可愛いもの好きっていうのがね。しかもツンデレ風とでもいったらいいものでしょうか。草太に可愛いもの好きと思われたくないんだっていうね、それでも可愛いものを愛でる気持ちは抑えられないんだっていうね、その様子がとにかく面白いのでした。女の子ふたりも可愛いのだけど、今回は萩くんが上回った、そう思います。

『プチタマ』が最終回でした。あらら、好きだったんだけどなあ。最終回の話題は進級テスト、というか補習なのですが、たまりがどうしようもないのはいつもと一緒。でも、ひとつ目的ができたことで、いつもよりもゆるさは少なかったように思います。ともあれ、これで終わりです。お疲れさまでした。

そして『ひまじん』が移籍連載開始です。この漫画もずいぶん長いですが、面白さを維持していることに関しては、さすがの一言であります。ヒロインふたりにサブキャラ数人という基本を維持しつつ、話を膨らませて、けれど膨らませすぎることもないという、その塩梅がとてもよいと思います。とりあえず、これがまた読めるようになったのは嬉しいところです。

PEACH!!』は、広能は岩井のことが好きで好きで、というのは長く描かれてきたことですが、今や武田が相原のこと好きで好きでというエピソードが旬である模様です。あの、寿司とかね。すっかり岩井が忘れられてるっていう。描かれるのは、武田が寿司を握る、その手付きばかりであったというのに、けれどそれが不思議と味わい、武田の真剣さを物語るのだから面白いものだと思います。またエビのエピソードなども、不思議な物悲しさ、そしてちょっとしたさわやかさがあって、よかったなって。武田は店を救ったのか、エビを救ったのか、それは読むもの次第と思われますが、いずれにしても、ちょっとした清涼が心地よいと思える、そんな話でありました。

  • 『まんがタイム』第30巻第4号(2010年4月号)

2010年3月5日金曜日

『まんがタウン』2010年4月号

『まんがタウン』2010年4月号、発売されました。臼井氏の手になる『クレヨンしんちゃん』が終わってから、はじめての刊行となる号ですね。表紙には、今作られてるのかな? 映画のしんちゃんが載っているけど、メインは『かりあげクン』、『そんな2人のMyホーム』、『派遣戦士山田のり子』の3タイトル態勢である模様です。実際、人気のあるというのはこのへんなのかも。『タウンオリジナル』があったころは、『山田のり子』表紙でしたっけね。時間はずいぶんたったけど、今でも人気があるのかな。私が『タウン』を読むようになったのは、『山田のり子』のためでした。

そんな2人のMyホーム』は、ついに輝くんの娘離れが意識されはじめたようで、大きな進歩ですね。けれど、これは実際必要な話で、舞の将来のためにも、それから輝くんのためにも必要なことなのだろうなって思えます。ひとりの男がきっかけとなって、これまで父ひとり娘ひとりという小さな世界で暮らしてきた彼らの関係が変わる。その変わりゆく様、しっかりと見よう。そんな気持ちでいるのでした。

『70's 愛ライフ』は、70年代において夢見られた21世紀の未来についての話ですが、いや、もう、全然予想どおりではありませんでしたね。漫画の中では、銀色の服が出てましたけど、多くのSFが夢見た未来はレオタードスタイルとかビキニスタイル。でも、そういう方向に時代は向かいませんでした……。テレビ電話は可能になったけれど普及しているとはいいがたく、宇宙への進出も思っているほどではなかった。食事も、チューブ型とか錠剤型とか、けどそういうものはあるけれど、一般化はしなかったですね。などなど、かつて夢見られた未来と現実の今を比較してみると面白いものです。コンピュータや通信技術は想像以上に発達しましたけど、その他は思ったほどではないんですよね。懐かしくも面白い話題でした。

『蝶のように花のように!』、男性よりもてる男前の女性の漫画ですが、わりとパターンにはまった展開がされるにもかかわらず、結構悪くないなって。それは、ロックオンされながらも抵抗を続ける西野彩香の存在がためかも知れません。この人のなんか困ってる表情、なんだか癖になってきた模様です。常識的で魅力的なお嬢さんです。でもって今回面白かったのは、Tシャツのエピソード でした。あの葛藤ぶりが素晴しいです。

『かしこみっく』が、なんだか一気にこなれたように思えて、でも面白さは変わらない。いや、より面白くなったと思います。あのこっくりさんとかね、落ちのコマ、ナンセンスな地口落ちなんですけど、思いもしなかった方向に展開させて、かつ絵としても可愛いという、なかなかに理想的なのではなかろうかと思える、そんな感じであります。もともとあったナンセンスなのり、勢いは残したまま、うまく変化していっているという感じがあるのです。

『龍天寺夫妻の生活』が終わりました。前回娘さんが生まれて、それでいきなり大きく育って、これからどうなるんだろう、と思ったら最終回。やっぱり夫妻の生活ではなかったからか? どちらにしても、娘をめぐるエピソード、面白かったです。このへんをふくらませても面白かったかも知れないななんて思える、そんな最終回でした。特に、娘が母親と同じ傾向に向かうっていうのね、それで父親がショック受けてるっていうのね、こういうの、自分もやったことだから否定はできない、けれど、みたいな葛藤がこれからあったりするのかななんて思って、だからちょっともったいない。けど、もったいないって思うくらいがちょうどいい引き際なのかも知れません。好きな漫画でした。

『みねちゃんぷるー』、雅の婚約者の続きです。で、この少年のこと、雅は知らなかったんですね。意外。でもって、少年の片思いなのか。でも、調査書はやりすぎだ。そりゃ、雅も敬遠することでしょうよ。という話。しかしこれで峰と雅がけんかすることになったわけですが、これはどういう方向に展開するんだろう。仲直りするだろうことはわかる。その過程で、少年と峰が接近するのか、いややはり少年と雅が接近するのか、後者だろうと思うのですけど、どちらにも進みうる、そんな状況に立ってるなあと感じています。

ところで今回は、雅の怒ってる顔、たくさん見られてちょっと嬉しかった。いや、別に怒られたい願望とかあるわけじゃないです。表情のね、豊かなるところ、笑顔だけでなく怒っているところなども見たい、そんな気持ちってあるじゃないですか。というわけで、私はやっぱり雅ファンであります。そうか、72か。あんまり急いで育っちゃいやよ。

  • 『まんがタウン』第11巻第5号(2010年4月号)

2010年3月4日木曜日

『まんがタイムジャンボ』2010年4月号

『まんがタイムジャンボ』2010年4月号、発売です。表紙には新生活を応援しますとの文言ありまして、ああ、もう4月号、新生活がはじまる、環境がかわるという方もいらっしゃることでしょう。でも、私はあんまりそんな感じじゃないなあ。表紙は中央に『じょしもん』、まわりには『朝倉さん』、『太陽くんの受難』、そして『レーカン!』が描かれて、確かに新生活、新しい環境に順応しきれていない、そんな様子が描かれています。

さて、そんな『ジャンボ』の新生活、新環境でありますが、ゲストは『ひめとりものがたり』、『ハコベエ』、『トラウムメディカル8.5』、『すいーとプロミス』、『ナイショのひめねこ倶楽部』、『恋する猫は爪を隠さず』、『剣道ガール』、『放課後のアインシュタイン』、『女の子定食』、『アイスボーイズ!』、『委員長がいるからね』。

多すぎる……。

でも、比率でいえば、1/3というところで、そう考えればそんなに多くはないですよね。上記ゲストの中で新登場のものは『ナイショのひめねこ倶楽部』だけでしょうか。杏仁女学院に転校してきた中ノ瀬桃がヒロイン。幼なじみ? の生徒会長が突然生えてきたヒゲに困ってるという。その原因、生徒会室の主、猫の神さま? 花梨の呪い? 嫌がらせ? だというんですね。ヒロイン桃にだけは花梨が見える。ゆえに、生徒会からも花梨からも請われて、生徒会に入ることになった? みたいな話であります。可愛いキャラクター、学園学院ものの花形といえば生徒会。そして、キュートな神さま。面白くなるかは、これからかと思います。

新連載は『太陽くんの受難』、最終回は『ひかるファンファーレ』。『気分は上々』は次号最終回が予告されて、『Boy’sたいむ』も、ひろむの正体が置島にばれてと、佳境であります。

『ひかるファンファーレ』は、音楽ものが次々と登場してきたなかでの生き残りでした。チューバに配属されてしまった女の子の話で、ああ、希望どおりにいかないというのは実に吹奏楽部らしい、でもって、吹いているうちにだんだんその楽器のこと好きになっていくっていうのもらしくって、結構好きだったんです。やっぱり、なんのかんのいいながらも、自分の楽器、好きになって、それで一生懸命練習したりっていう、そういうの見るのはいいものですよ。最終話は、チューバがもう一台増えて、そして新入生を予感させる、そんな広がりをもったものでした。悪くないなって、だってひかるの成長が描かれているからと、そんな風に思ったんですね。吹奏楽部の青春、楽しかった。そんな彼女らの様子を引退まで見届けることができなかったのは残念だけれども、最後にいい笑顔で終わったというのはとてもよかったなと思っています。

『中2限定!?ガールズトーク』、先生に恋している女の子の話ですが、これがわりと嫌いじゃありません。今回は百合子先生がブルマで登場。なんか飛び道具っぽいんですけど、百合子先生が気になるヒカル先生、しかしその思いは一方通行っぽくて、という、そんなところなどが気にいっている模様です。

『でり研』もなかなかにいい感じ。今回は中国茶が取り上げられたけど、でもメインという感じではありませんでした。メインは大仏くんと海原さんの関係が誤解されるという話。いや、でもこれ、全部海原さんが悪いよ。お茶こぼしたのはしかたないとしても、その前のはもうね、自業自得ですよ姉さん。しかし、部長南和穂、彼女の微妙な警告、そして落ちの落ちが番外編ではたされるというの。こういうのも面白い。だんだんとキャラクターが舞台が暖まってきて、動きが出てきたなって。面白くなってきました。

『ちょいのり。』も結構気にいってます。なんと今回はレース。いのりを取り合って、右橋さんと左河さんが競争する。姉と兄に頼ってっていう、その微妙さがいい感じ。というか、左河さん。兄貴が自宅で警備を仕事にしてること、簡単にいっちゃっていいのか? レースといっても、法定速度厳守とか、こういう微温的なところがよくてですね、それで結局仲よくなるんだろうなって思える、そんなところがいいのでした。

『みちるダイナマイト!』のせいだとはいわないけれど、ちょっとSGが欲しい。いや、買いませんけど。でもって今回、ライブ中にテレビがきますとのアナウンス。これはやられました。私も騙された。でも、これ、ただ騙したってだけじゃなくて、あとに繋がってるっていう、そのもっていきかたがよかったです。

ところでさ、あのみちるの舞台が怖いっていうのね、あんなのあるの? っていうと、いや、実際あるらしいですね。私の知ってるケースはオペラ歌手なんですけど、世界的な人なんだけど、名前はちょっと思い出されないだけど、もう俺は駄目だ、っていって、舞台に出られないのを無理矢理押し出すんだそうで。そうしたらきっちり演じて歌って帰ってくる。で、また駄目だ嫌だってなって、でまた無理矢理舞台に押し出したら、またちゃんと演じて帰ってくる。面白いものだと思います。みちるもおそらくはその口なんでしょうね。

『あまぞねす?』、これ気にいっています。うん、ブログは、自分の書いてるのが面白いかどうか、わからんようになるよね。というか、これ面白い、きっと読者も喜んでくれるね! とか思ったこと一度たりともないね。でもいいねん。ブログはなんの役に立たなくてもいいらしいから。

今回はブログというよりも、日記で自分を振り返るというような回でした。なんで今の会社、業種を選んだのかというようなこと描かれていて、これいいかげんに見えるけど、でも実際はこんなもんだったりしますよね。それでいい会社にめぐりあえたっていうんだから、幸いですよ。ああ、私もこんな会社にやとわれて、天才小学生の先輩とか欲しいよ。忙しくても容赦なくお茶の時間がくるとか、こういうのも面白くて、なんか理想的職場の漫画なんだけど、理想的だけに憧れてしまうのかも知れませんね。で、どうにも書くことがないときの対処法。ああ、それは私も知りたいです。切実に知りたいところです。

『トラウムメディカル8.5』、気にいってる漫画です。抱き締められるアルバちゃん。でもって、否定的なこというと夢がドロドロになるんだ。父と娘の話。ちょっと気持ちが通った? でもすぐにすれ違った? なんだか切ない話でもあるけれど、反発していても父親は大切、父親からしても娘は心配。どちらも素直になれないのかなあ。そしてそれはアルバにとっても同じなのかなあと、その素直になるっていうことの気恥かしさみたいなのね、じわじわ伝わってきて、よかった。でもって、面白かったです。

『パドラーズハイ』、学校を出て、ラフティングの専門店にいく話。パドルにチーム名いれるという、そのチーム名を決めるところからはじまって、自分たちに必要なのはなんだろうと考えて試してみる、そういう段々に深みに入っていくところ、楽しいです。なんでもそうなんだけれど、やっぱり楽しげにものごとに取り組んでいる様子というのは、見ていて嬉しくなるものだと思います。それでこの漫画には、楽しそうな態度、気持ちがあふれていて、だから好きなんだと思うのですね。自作のパドルケース背負った三人の姿、それもまた溌剌として魅力的でありました。

『すいーとプロミス』、従姉がやばいっていうね。子供のころにかわしたケッコンの約束を真に受けて、ストーカーまがいの活躍見せるという綾姉。素敵すぎます。でもって、学校で再開。これは、なかなかに強敵で、それこそ36番的な味をかもし出してくれるのかと、ちょっと期待してしまう展開でした。

『コミカプ』、なんだろう、ちょっと感動してしまった。今は「地味だけどいい話」を守れるだけのゆとりがないっていうのは、多くの雑誌、出版者に共通の事情なんだろうなあ、というのはいいとして、トリッキーな手段に訴えようというチーちゃんに、皆が、私が求めているものは違うんだよって真正面から告げるういちゃん。そしてチーちゃんの選んだ展開の、その場面に、前段となる様子はほとんどなかったにもかかわらず、ぐっと感じるものがあって、それはその場面を選択する彼の心情が思い起こされたからなんだろうなって思います。なんだかいい話。きっといい方向に動いて欲しいな、そんなこと思わせる話でありました。

『Boy’sたいむ』は、やっぱり置島、気付いてたんですね。ショックだったのは、男のひろむが好きだったのに、ってわけじゃなかったんですね。でもって、今回は置島のうろたえ、どたばたするそんな姿がこっけいで、でもひろむを守ろうとする、ほんといいやつですよね。これ、結局は置島の純情がひろむに通じるんでしょうか。どうなるんだろう。この状況で続くなら嬉しいこと。でもって、置島の恋が成就するといいなあなんて思っています。

『放課後のアインシュタイン』、他誌からのゲストですが、キャラクターひとりひとりの個性や状況説明するのに、今ではなく、過去の話を持ってきた。三人が出会ったころの状況。まだ友達ではなかったころの話。先生ともまだ出会っていなかった。そんな時分の話は実に新鮮で、今とは違う関係の温度、態度もろもろに、なんだか違った横顔見るような、そんな気持ちになりました。

『レーカン!』、これ、怖い、怖いから。幽霊が見えてしまう女の子、天海の話。踏切に引き込まれたり、脚つかまれたり、幽霊もいいもんだなあっていう気にはなれない、実に怖い状況ですよ。でも、それでも怖いばかりでない。ちょっとの怖さはアクセントとなって、ヒロインの人となりや、(結果的に)彼女を見守って手助けした井上の活躍を彩ってくれています。その印象が鮮かだから読んでいても面白い。そんな風に思っています。

  • 『まんがタイムジャンボ』第16巻第4号(2010年4月号)

2010年3月3日水曜日

はなまる幼稚園

 はなまる幼稚園』、アニメになりましたね。って、はじまったのはもうずいぶん前のこと。すでに第8話が終わって、つまり折り返しはとうに過ぎてしまっているのですね。さて、このアニメ、うちでは好評です。今私が見てるアニメはこれと『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』だけなのですが、3歳児がふんふんいいながら見るのは『はなまる幼稚園』。いや、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』も見てるのかも知れないけど、やっぱり年代が近い子供が元気に走りまわってたりする『はなまる幼稚園』のほうが楽しいのかも知れません。でもって、これ、穏当な表現、罪のない感じにあふれているものですから、安心して子供に見せられる。そういうところがじいさんばあさんにもうけているみたいです。

漫画がアニメになるときって、結構おそろしいものがありまして、ええ、『はなまる幼稚園』がアニメになるって聞いたとき、ちょっとおそれたわけですよ。制作はGAINAX。ああ、それならアニメの質においては心配なさそうと思ったけれど、なにぶん私はアニメからはなれて長い。よくわからなくなってるわけです。はたしてGAINAXは原作を大きく変更するタイプなのか。変更するなら、どんな変更がされるのか。でもって実際はじまってみれば、原作の雰囲気を大切にしたもので、ああこれはすごくありがたい。作りも丁寧だし、遊びのようなもの、ほら世界が終わるって時にセカンドインパクトとかいってたでしょ、ああいうのもほどほどに抑えてくれてるし、これはいいなって思ったのでした。

でもって、アニメでは幼稚園の先生が増えました。いやね、川代先生ですよ。あれ? 原作にいたっけ? アニメオリジナル? いやあ、それ実にいい仕事! そう思ってたら、いたんですね、あらー。実は原作、買ってるんですけど、全部読みきれてなくて、最近、ここ一年二年くらいですかね、買っている漫画の消化ができなくなってしまっていて、こないだ7.5が出たのを知って、買ってきて、全巻ひと揃いにしてみて、ああ、読んでないのがあるなって。それで今読むと漫画の復習をアニメでするみたいになってしまうから、再読はちょっと待とう。新鮮さをもってアニメに取り組みたい。

今、私はアニメをほとんど見なくなって、けれど視聴時間はわりと多めです。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』についてでもいってましたけど、ちょっと暇ができたら見てる和声の実施するときなど、頭が煮えてしまうので、BGVっていうんでしょうか、いろいろ流しているのですが、そういうときにアニメはなかなかによいものです。で、『はなまる幼稚園』もそんな感じに見ていて、ちょっとした合間に、作業のおともに。で、こうやって見てると、ただ一回だけさらっと見るのとは違う、じっくりと見て感じて、楽しいな、好きだなと思えてくるのです。

私は、漫画に関しては手を広げすぎてしまいましたね。昔は、好きだな、いいな、と思った漫画は折に読み返して、よりいっそう好きになる、好きを深めていく、そんな感じであったのにと、今の自分のありようを省みて、さみしく思っています。『はなまる幼稚園』とかね、たくさん積み上がったものを片付ける、そんな読み方の似合う漫画じゃないわけです。それこそ、折に読み返したくなる。読んでほっとして、いいな、そう思って、もっと好きになる。そんなテイストの漫画。私は、こういう漫画の方がきっと好きだな。だなんて思うものですから、漫画を粗末に読んでしまっている今のスタイル、ちょっとそいつを変えないといけないな。なんて思ったりしているのでした。

ところで、本日3月3日は小梅ちゃんの誕生日だそうです。おめでとう!

  • 勇人『はなまる幼稚園』第1巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2007年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第2巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2007年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第3巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2008年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第4巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2008年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第5巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2009年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第6巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2009年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第7巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2009年。

CD

Blu-ray Disc

DVD

2010年3月2日火曜日

『まんがホーム』2010年4月号

『まんがホーム』2010年4月号、発売です。今月号、今の『ホーム』はかなり面白いのではないかと思える、そんな誌面でありました。中盤がですね、充実しているなと思えるのですよ。新しく始まった、そんな漫画も落ち着きながら定着して、安定して読めるようになってきてるなという印象です。実際、中盤といってるそこには、他誌からのゲストがあったり、まだ連載にいたらないゲストがあったり、いや、これは厳密には中盤を過ぎたあたりなのかな? けど、それらも充分に面白くて、今の『ホーム』はよいなと、そんな感想を持った4月号でした。

さて、今月はゲスト多めです。『うのはな3姉妹』が他誌からのゲスト、『ゆとりの手もかりたい』と『こむぎみっくす』、『じゃじゃプリ!』が連続ゲスト! そして『天国のススメ!』、『ときめけ!女塾』がスペシャルゲストです。で、『まりかちゃん乙』が新連載なのかな。これらゲストのうち、『天国のススメ!』、『ゆとりの手もかりたい』が連載に昇格するそうです。

今回のゲスト、全部好きで楽しみに読んでいます。『うのはな3姉妹』は安定して面白いし、『ゆとりの手もかりたい』、『こむぎみっくす』はそれぞれ違ったキャラクターの可愛さ打ち出して、そしてそこにちょっとシニカル、人の悪さみたいな味を加えてるところがよくてですね、そしてなにより皆仲がいいっていうところが素晴しい。『ゆとりの』は、天の声とでもいったらいいんでしょうか、ゆとりやお嬢様のすることにつっこみが入る、そのテンションや見守ってるような様子が気にいっています。『こむぎみっくす』は、めーぷるがめちゃくちゃ可愛い! これは家族を描いてあたたかで、読んでいてちょっと仕合わせな気分になれる。いい漫画であると思います。

『じゃじゃプリ!』は、よく飼い馴らされた亮の健気に世話を焼く様子が見ていてすごく心地よい漫画です。背のちっこい暴れものふみかも当然魅力的で、ガキ大将だった、今も元気はつらつ。その元気や活発に振る舞う原動力はなになのか、それが自然と語られた今回、とてもよかったです。また、眼鏡をかけた一コマ、おおっと間違えた、一度だけ泣いたという、その一コマ、ぐっと胸に迫るものがあって、なんかこういう感情に訴える強い表現があったかと思えば、静かながら多くを語るような表現もあり、そのバランスがとてもよいです。

『天国のススメ!』は緑の妖精が登場して、なんかすごい一発ねたっぽいキャラクターでありますよ。けれど、この妖精をもって、太一の特殊能力、十子の強烈なアプローチ、お婆ちゃんの可愛さ描かれて、そしてほのぼの人情ものとしての味わい、これがこの漫画最大の魅力である、ひいては作者の持ち味であるのだろうと思わされる展開でした。

『ときめけ!女塾』は、最後に、続くとあったのを見て、おお、続くのか。ちょっと嬉しく思っています。これ、ナンセンスではあるんだけど、ちらりと夫婦仲のよさみたいなの描かれたりしてたでしょう。そういうところいいなって思ってまして、結構気にいってるのです。と思ったら、今回はナンセンス一辺倒だった。でもって、塾長交代の危機ときた。これ、息子の塾長返り咲きはないのかな。しかし、この息子の扱われ方の酷さ。これがもう最高に面白かったです。現金な人たちといいますかね、その変わり身のはやさ。見事でありました。

さて、以前から芳文社では眼鏡がブームだったりするのか、みたいなこといってましたが、今回のホームは眼鏡多め? 『紫乃先生美録』みたいにレギュラーで眼鏡があるかと思えば、『となりのなにげさん』扉で眼鏡、『つくしまっすぐライフ!』はレギュラーで眼鏡ですけど、続く『東京!』が扉で眼鏡、『じゃじゃプリ!』劇中で眼鏡。なんということでしょう。一応断っておきますが、眼鏡が魅力的だから、今月の『ホーム』が素晴しいといってるわけではないです。

『三日月の蜜』、台詞を軸に展開される、そんな感じかと思えば、だんだんに言葉少なになっていって、表情の変化、間、それらが伝えるふたりの思いが切々として、佐倉のわだかまり、対して桃子は底が知れず、そのふたりの様子にはどきどきさせられっぱなしです。この漫画、辛気臭いといえば辛気臭いのですが、その辛気臭さがたまりません。もう大好きです。

『横浜物語』、ああ、これは面白いよ。隣に住んでいる女。雨の日にベランダを越えて布団を取り入れてくれた、そんな変な女なんだけれど、主人公はなんだかちょっとずつひかれているようで、しかしそれは相手の思う壺なのか? 変な隣人ものかと思ったら、危ない隣人ものなのではないかという今回のラストに、興味ががぜん高まって、これは面白いよ。一気に評価逆転です。

つくしまっすぐライフ!』は、クマの着ぐるみパジャマ、可愛いな! と思ったら、それ本編にちゃんと関連がありまして、なるほど。なずなはすっかり五行さんと仲良くなってるんだなっていう、しかし片や社会人、片や学生というジレンマ? ちょっと年の離れたカップルもの、しかもものすごく健全な、その素朴なお付き合いの様子がいいのだと思うのですね。ホワイトデーのお返し。クマのかっこうで一緒に歩く。そのいちいちがおかしくて、けれどおかしいながらもよいのでした。

『東京!』は、いや、もう、扉が、扉が。今回は、ちいさなたまが大人っぽく見られたいと思う、そんな気持ちをぐーっと一本続けて描きながら、その合間合間に他の登場人物のエピソードも盛り込んで、このにぎやかさが好きです。秋葉原正親。渋谷とともに電器店にいく、それってデートなのか? 仲がいいなあ君ら。この渋谷の秋葉原に対する懐っこさがもう大好きで、でもって秋葉原、美少年だなおい。美少年大好き。本編のラスト、皆にかまわれたたまですけど、そのままがいいよという、そのあるがままがいいよという、こういうのもまた好きなんですよね。楽しく、そしていい話でありました。

  • 『まんがホーム』第24巻第4号(2010年4月号)

2010年3月1日月曜日

クイズマジックアカデミー — マジカルダイアリー

 先日書店に寄ったときのこと。書棚を眺めていたところ、なんと『クイズマジックアカデミー』のコミックスが出ています。わお、漫画になってたんだ。手にとってみれば、表紙になにやら見覚えが。あああ、作者が荒木風羽。これは買うしかない。買うんですね。今はもうプレイしていないのだけれど、興味のあるゲームであることには違いなく、ゆるく情報収集もしています。特にせんだって『クイズマジックアカデミーDS — 二つの時空石』が発売されたところときています。欲しいかな、でも遊ぶ時間ないよな、どうしようかな、と思ってた。ええ、漫画くらいなら即座に買っちゃう。それだけ気持ちが暖まっていたのですね。

それでもって、荒木風羽でありますから。『スキっ!キライっ!』が好きだった。『そして僕らは家族になる』も楽しみに読んでいたし、『はなまるっ!』も読んだ。ええ、作者の名前で買う、それくらいに好きな作家であるのですね。

そして、漫画本編です。主人公はルキア。けれど彼女の物語が描かれるというよりも、むしろルキアは狂言回しとしての役割りを担っていまして、ルキアが他のキャラクターに関わることで、アカデミーの生徒や教師の個性が描かれていくというような構成であるのでした。基本的に小さなエピソードの積み重ねです。印象に残るキャラクターはシャロン。対してサンダーズやタイガ、ラスクあたりは影が薄い。なんて風に感じたのですが、これは私の偏見込みの意見かも知れません。第1話から登場のクララ、なかなかにいいポジションにつけてるじゃん、みたいには思ったのだけど、偏った私は、どこかクララはもっと描かれて当然だと思っているような節があったのでしょう。ゆえに、クララ出てこないなあという印象を持ってしまった。やはりどこか偏見があるようです。

実際に数えてみたわけではありませんが、キャラクターはバランスよく出てきているとは思うのですね。どのキャラクターのファンでも満足できる、そんな見せ場が用意されているというような感じです。でも、読者層がそうなのかな? 女子キャラクター、それからアメリア先生の活躍は目立っていたような気はします。で、私にとって特に印象深かったのがシャロンであったと。ええ、シャロン大好きです。作者もシャロンのこと好きなのかな? なんて思ってしまうのもやっぱり偏見のなせる技かも知れません。

キャラクターについての説明に紙数はついやされておらず、だからQMAを知らないという人には少々とっつきにくいかも知れません。けれど、そんなにわかりにくいキャラづけされてるわけではないし、読んでればわかってくるんじゃないかな。だから、QMAは知らない、でも荒木風羽は好きという人にも楽しめる余地はあると思います。QMAものとしての楽しみと、荒木風羽の漫画としての楽しみ、それぞれにそれぞれの魅力があるから、どちらかが好きなら楽しく読めると思われて、そして両方が好きならなおさらというものでしょう。荒木風羽風味のQMA。ええ、大変楽しく読めました。