ちょっと真面目に音楽に取り組もうだなんていってましたが、その気持ちが薄れないうちに、和声の復習をしようと思い、買ってきました『和声 — 理論と実習』。いやね、最初は学生の頃に使ってた教科書でやろうかと思ったんですけど、作曲を専門にしていらっしゃる方が、やっぱりこれがおすすめといってらしたので、ああ、じゃあ、買うか、芸大和声、と思ったんですね。芸大和声、この本は俗にそう呼ばれているのですが、東京芸術大学で使われている和声の教科書がこいつで、おそらくは日本の音大芸大で作曲を学ぼうという人間は、これを皆、やってるんじゃないかなというくらいにスタンダードな本であったりします。でもって私も、昔、ちょっとやったりしたんですよ。だから書店で手にしたときには、懐かしいなって思ったものでした。
芸大で使われてる和声の教科書っていってましたが、作曲やら楽理やらで受けようという人間は、入学前に一通り終わってるっていうのが普通だったりするのですが、私がこれをやったのは、編入試験対策で、つまり入学後にやりました。和声、音楽理論っていってもいいかと思いますが、それは全専攻で必修でして、けれど作曲専攻でない人間はまた違った教科書でやっていましてね、だから基本はそちらで学んで、そして試験を受けると決まった2年次後半に、駆け足でこの1巻を実習したのでしたっけね。懐かしい。で、やったことがあるっていうのに、なんで今、本買ってるの? いや、借りてやったんだ……。昔は、お金がなくってね。まあ、今もないんだけれどもさ。
私の、芸大和声に対して持ってる印象というのは、とにかく合理的というものです。例えばそれは和音の転回形の表し方がそうで、私の最初に学んだ音楽理論では、ベースに第3音がくる場合は6の和音といって、Iの和音ならI6と書くところを、芸大和声では第1転回、I1というように表記します。同様に第2転回ならI2と書いて、それを私の最初に学んだのでは46(しろく)の和音といって、Iの横に4、6と縦に書くのでした(6が上、4が下)。これ、6とか46というの、なんでそんなわかりにくい書き方するのかといいますと、I、ハ長調ならドミソですね、その第1転回形だったらミソド。ベースとなるミから見て、6度の位置に音がくるからなんですね(ド)。第2転回、46はといいますと、ソドミ。ベースのソから見て、4度上と6度上の音がありますよっていう意味なんです。これ、芸大和声でも触れられてますけど、数字付低音すなわち通奏低音時代の記譜に由来していまして、通奏低音のころは、ベースラインが書かれているのを見て、和声を埋めていったんです。ベースがドで、なにも数字が付いてなかったら、3度と5度を足してドミソにする。ミとあって6とあったら、3度と6度を足してミソド。こんな具合にやってたんですね。ソの音に7が付いてたら、7度を足してソシレファなわけですよ。で、これ属7とかいいますが、この転回形が、第1転回が56(ごろく)、第2転回は34(さんし)、第3転回は2となるわけです。
とまあ、芸大和声をやるような人間は、こういった和音の呼び方も把握してるんでしょうけど、その上で1転2転とやっているわけです。理屈は理解してるから、どっちでもいい。こんな具合の合理性はあちこちに見られて、だからシステマティックにやるには実に適している教材であるという話です。決まりごと、良不良であるとか、禁則であるとか、そうしたものを把握し、そして課題を実施して、和声というシステムへの理解を深めていくというのがこの本であります。
というわけで、これから少しずつでも課題を実施して、和声というものに親しみたく思います。まあ、少しずつなんていわずに一気にやれよ、っていう話でもあります。といった理由から、日常における時間配分、音楽に多く割り振ろうかなって思っている次第です。
- 島岡譲執筆責任『和声 ― 理論と実習』第1巻 東京:音楽之友社,1964年。
- 島岡譲執筆責任『和声 ― 理論と実習』第2巻 東京:音楽之友社,1965年。
- 島岡譲執筆責任『和声 ― 理論と実習』第3巻 東京:音楽之友社,1966年。
- 島岡譲執筆責任『和声 ― 理論と実習』別巻 東京:音楽之友社,1967年。
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