2009年11月3日火曜日

まん研

 まん研』、好きだったよ! タイトルにしめされるように漫研を舞台にした漫画であるのですが、部活ものというにはなんだかちょっと毛色が違いまして、たしかに部活動はしているっぽいのですが、けどそれ部活じゃないよね。困った先輩ふたりが、後輩にコスプレさせたり、全身タイツ着せるなどして、自身の妄想を具現化しようという、そういうノリが独特でした。そして私はそうしたノリが好きだったのですね。そのノリは、うおなてれぴんという作者独特のものといってもいいのかも知れません。同じ作者に『しすこれ』という漫画があるのですが、この漫画の持つ雰囲気、それは『まん研』に通ずるものがありまして、だから、『しすこれ』が好きだった私は、『まん研』が『きららMAX』ではじまった時には、やった、と思ったものでした。ええ、好きな作者の連載です。そりゃ好きになるのも当然でしょうよ。

登場人物、メインは三人。しいな、レイコ、このふたりが先輩。咲、この子が後輩。当初はこの少人数で進めていたのですが、じきに第1漫研の部長くーちゃんが加わり、その後輩ふたりや顧問も加わって、世界が広がった? いや、あんまりそんな感じがしない、実に相変わらずな感じではあったのですが、けど、基本テンションが異常な第2漫研のノリがあって、そこに穏やか、あるいは普通のテンションである第1漫研の人たち、あるいは第2漫研顧問の友里先生としいなの対話シーンなんてのも挿入されるようになって、なんか味わいが深くなったのでした。コスプレだ、萌えだ、暴走ぎみのテンションで展開していった末に、なんか穏やかな小シーンでしめられる。それが、しみまして、好きでした。

この漫画は、当初は先輩ふたりで咲をいじろう、そうしたものだったと思うのですが、だんだんに登場人物が追加され、咲たちの所属する第2漫研とはまたちょっと印象の違う第1漫研など、ちょっとしたコミュニケーションものになっていって、それぞれコミュニティの雰囲気の違い、温度差というものも含めて、面白かったのですね。第2漫研にいい印象を持っていないくーちゃん、彼女の態度は、第2漫研の特殊性を強調していましたし、また第2漫研では薄い咲、彼女と第1漫研の後輩がクラスで話しているその時の緩さ、普通さは、なんだかすごくリラックスできて、けど咲が随分毒されてるってことも見えて、このだんだんに異端? 異質なるものに染められていくというところもよかったのかも知れません。第2漫研の面々、彼女らの言動がおかしいことは誰しもわかっていることだろうけれど、それが作中においても普通じゃないってきちんと表現されていた。そのおかげで、悪ノリしているという感覚がちゃんと伝わって、楽しいのはこの悪ノリを共有できるからなんだろうなって、そんな風に思うのです。

この漫画が終わってしまって、こうした悪ノリの共有ができる場がなくなってしまいました。いや、悪ノリを売りにしてる漫画は他にもあるけれど、うおなてれぴん的な悪ノリは、やっぱりうおなてれぴんしかっ、ないと思うんですね。だから、とりわけこの人のノリが気にいっていた私には、この漫画が終わったことが残念と思われてならなくて、またどこかで新しく連載とかされないものかな。そんなことを思ってしまいます。

この漫画の最終回については、以前にも書いたから、これ以上重ねようとは思わないけれど、日常、それも第1第2漫研のみなで一緒に遊びにでかけようという、これまであったようでなかった、そんなちょっと特別なシーンを予感させるものとなっていて、その期待感は最終回を彩る実にはなやかなものでありました。そしてちょっぴりしめやかで、ああいい最終回だなって。私の理想の最終回とは、きっぱり決然とした最終回、終わりったら終わりというピリオド感あふれるものであるのですが、けれどこうした日常に融けていくようなラストも悪くないなって思いましたよ。それまで、ぎりぎりまでいつもどおりで、ちょっと特別と思わせる、そんな雰囲気にて終わる。残った余韻に静かにひたれる、そんなところがよかったです。

  • うおなてれぴん『まん研』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • うおなてれぴん『まん研』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • うおなてれぴん『まん研』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。

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