2009年11月26日木曜日

最後のニュース

 デアゴスティーニのCD付きマガジン『青春のうたベスト・コレクション』、第100号が刊行されて、これにて完結しました。隔週で100号。創刊は2006年1月31日、ほぼ4年をかけたわけですね。その4年という時間、思わぬこともありました。このシリーズの監修者加藤和彦氏が亡くなりました。その前には忌野清志郎氏が亡くなって、そして最終号に収録の『最後のニュース』、『筑紫哲也NEWS23』のエンディングテーマ曲。井上陽水にこれを依頼した筑紫哲也氏も亡くなりましたね。この数年、たくさんの人が亡くなって、ああ、鈴木ヒロミツもそうか。すべての人の命には限りがあって、それはわかってる。わかっているけど、こうして偲べば切なさに胸がしめつけられます。

先月だったか、NHKで数日にわたって井上陽水が特集されていたことがあって、そこで歌われた『最後のニュース』。いつ聴いても、なんど聴いても印象的で、胸に切々とうったえるものがあって、そして昨夜、また同様にNHK、Songsで井上陽水が歌っていました。そのうちの一曲が『最後のニュース』。筑紫哲也についても触れられて、そして歌唱。ああ、いい歌だあなって、やっぱりそう思ったのでした。

この歌は、井上陽水の歌い方、彼独特の表現もよいのですが、その歌詞にあらわれる陽水の社会に対する視線が力強く素晴しいのです。歌の生まれた当時の問題意識を如実に反映しつつ、そして同時に事件やできごとを受け止める私たちの意識までも写し取ろうとするかのような歌詞です。この地上におこっているできごとを、ただただ見つめ、しかしその視点に同化していない。一種超然とした位置にあって、できごとに向き合っている自分さえも観察しているような、そうした乾いた感覚があるのに、同時に夢見るような感性を匂わせて、ああ、素敵であるなと思うのです。自分の問題意識の希薄であることに苦しさ覚えながら、この世界の断片を眺めるような、映像が生々しく広がるかのような感覚に酔います。

そして、今あなたにGood-Night、ただあなたにGood-Bye。世界に向けられていた意識が、突然の語り掛けにはっと正気に引き戻されて、ああ私はいつもの現実に生きている — 、深く感じ入って、そして世界の大きさ、そこで起こっていることの遠さを一層強く思わされるのでした。しかし、たとえ遠くとも、それは私の現実に地続きなのだな、そうした感覚をともに思わされるのでした。

DVD

引用

  • 井上陽水『最後のニュース

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