2005年1月4日火曜日

ただいま勤務中

 今日から仕事始めで、私も世間の例に漏れず働いてきました。年末年始の一週間、寝て暮らしていたわけじゃないんですが、それでもやっぱり外に出ると疲れますね。

さて、私は複数の職場を一年契約で転々としてきた、実に腰の軽い労働者なのですが、けれど自分にはこうした暮らし方の方が性に合ってるんだとついこないだ気付いてしまいまして、自分でもびっくりでした。今の職場で、中途採用受けてみないかと誘われましてね、そしたら、いいようもないいやーな気持ちが広がったんですね。いってくれたのは組織のナンバー2だったので、よっぽどひどい成績でないかぎりは入れたんではないかと甘い思いを抱いているんですが、けど、断っちゃいました。満たしている要件を満たしてないからといって、断ってしまいました。その時去来したのは、まさにこの漫画のヒロイン春日陽子の言葉、あー、今となっては毎日同じ所に通うのはストレスかなだったんです。

(画像は辻灯子『ふたご最前線』第2巻)

『ただいま勤務中』は、警備士を勤めるフリーター娘三人組の日常を、コメディタッチで切り取る四コマ漫画でして、結構リアル、ああそんな感じかもー、と思わせてくれる、なかなかの良作です。ヒロイン三人は三人ともに個性がしっかり描かれていて、共感できる思いもあれば、身近にいてもおかしくなさそうな感じもあって、辻灯子はこういう現実感を演出するのが実にうまい。あまり大口空けて笑う漫画ではないけれど、すごく静かにおかしみが染みとおってきて、私はこの感覚大好きです。

最初にいった話ではないですが、やっぱりヒロイン達への親近感が嬉しいのだと思うんですね。特に、しっかりと勤めるということがあんまり好きじゃない、フリーター体質とかいったらいいんでしょうか、私は自由が好きなのっみたいな、そういう人には共感できる部分は大きいと思うんですよ。不安定はいやだけど、安定と引き換えにつながれるのはもっといや、みたいなそんな空気が、フリーターの三人娘にはどことなく漂っていて、私の友達ってそんなのが多いから、いやあんたもそうじゃんっていわれそうな気もしますが、ともあれ私の感覚にすごく近いと思える。だからすごく嬉しい。だからどうしようなく好きで、気持ちが寄り添うのです。

この人は勤め人の漫画も描いてまして、それが今度出る『べたーふれんず』なんですが、二人組のOLコメディ四コマで、やっぱりこの二人はどことなく自由な風を吹かせています。いやあ、いいですよ。軽やかでしなやかで、ちょっと豪放なところもあって、でも小市民的で、そうした多面性が面白いの。連載で読んでいたときにはさほど感じはしませんでしたが、本当は勤め人とかフリーターとか関係なく、自由かどうかはその本人の資質なんだろうなと思います。けど自分は真当な勤め人への誘いを断ってしまって(親には内緒です)、これは自分が性根では不自由な人間だってことをきっと気付いているからで、せめてあり方を自由っぽくとどめておきたかっんだと思うんですね。

なので、私みたいな肝っ玉の小さな奴は、着ぐるみに入って傍若無人を働けるくらいにまで精進せんといかんな、とそんな感じ。いや、しかし、あの伝説の着ぐるみコントを単行本で読めるとは、なんと仕合せなことかと思いますよ。

  • 辻灯子『ただいま勤務中』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2002年。
  • 辻灯子『ただいま勤務中』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2003年。
  • 辻灯子『ただいま勤務中』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2004年。

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