鶏に関係するものをと思って、バル・ビロの絵本『ガムドロップ号』を探してみたら、ちっとも見つからなくてショック。昭和46年刊だから仕方ないのでしょう。好きだった身としては残念この上ない話ですが、仕方ないのでしょう。
なので、急遽違うものをと探して、思い出したのがムソルグスキー『展覧会の絵』。といっても、エマーソン、レイク&パーマーのプログレッシブロック版でいっちゃいましょう。いや、これ結構いいんですから、クラシックが嫌いという人も、プログレが好かんという人も、一度聴いてみてくださいな。
EL&Pの『展覧会の絵』は、聞きなれたムソルグスキーのオリジナルとは随分と変わっています。というのも編曲のせいだけじゃなくて、EL&Pオリジナルの楽曲が挿入されたりして、そういう意味ではやはりこれはEL&Pのオリジナルなんですよ。有名なラヴェル編の華やかさもなければ、もちろんムソルグスキーオリジナルの武骨な力強さもなく、あるのはEL&Pの狂乱に似た興奮とそして独自の美でしょう。いや、プログレというのは美しいんですよ。非常に豊かな歌心があって、その表現力も構成力も半端じゃありません。なにしろアルバム一枚すべてを、ひとつのテーマで染め上げてしまうのですから、その力たるや相当のものという他ありません。
さて、ちょっとここで種明かしというかをしてみますと、EL&Pの『展覧会の絵』というのは、音楽鑑賞の授業の題材として大人気なんですね。ムソルグスキーのオリジナル(オリジナルはピアノ独奏)と有名なラヴェル編、EL&Pのプログレを並べてみて、必要があれば、他にもいろいろあって、冨田勲のシンセサイザー版なんていうのもいいかも知れませんね。ともかく、この聴き比べをすることで編曲がどれだけ曲の印象を変えるかを知ることができるというわけです。私はこの題材を使ったことはありませんが、学生時分、教育実習に行く人に入れ知恵したりして、そうしたら実習先の先生は先刻承知で一枚上手だったり、まあそれくらいポピュラーな題材であるというわけです。
しかし、ここはそうしたこざかしい話はさておいて、どうぞプログレの持つ独特の美に触れていただきたいものです。クラシック第一主義者は、冒涜だというかも知れない。けれども、音楽というのは本来こうした雑多なエネルギーを取り込んで、その幹を肥やすものなんですね。
EL&Pの、猥雑といってもいいくらいのエネルギーは、すごいですよ、圧倒されますよ。正気とは思えないけど、けれどもそういうエネルギーの果てにこういう美しい音楽が出てくるんだから、美というのは本当にあやふやなつかみにくいものなんです。
あ、そうだ。どこが鶏かいっておかないと。
『展覧会の絵』には「バーバ・ヤーガの小屋」という楽章があるのですが、この魔女の小屋には鶏の足がついているのですよ。いや、それだけ。いや、なんかこじつけで申し訳ない。
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