私には姉が一人ありまして、もともとこの漫画は姉の持ち物だったのでした。長い間机の中にしまわれていて、一人でこっそり読んでいやがったのですが(どういう料簡の狭さかと思う)、あるときもういらないからといって、全部私に譲渡されました。しかしなにがすごいといっても、第1巻しかなかったんですよね。絶版してから1巻だけ渡すんじゃない、先が気になって仕方がないじゃないか。
けれど漫画の持つ雰囲気、— 少女漫画らしい荒唐無稽さと繊細なタッチで描かれた絵の可憐さにすっかり魅せられてしまって、私、1巻だけ何度も何度も読んだんですね。何度も何度も読んだんですよ。
とまあ、こんなことをいうとまるで続きを知らないままでいるみたいでありますが、実はそうではなくて、その後ブックオフで第2巻を見付け購入したり、『大阪屋商報』で選集が出版されると知らば、急いで全巻予約してみたり、そうした努力が実って、うちには二種類の『CLIMB THE MOUNTAIN』があるのです。
この漫画はなにがよかったんでしょうね。実は私はうまく言葉にできないんです。ポルノ映画監督の父親と二人暮らしの主人公由貴(よしたか)はちょっとおくてで、女性に対してはからきしで、その彼とお隣の中学生未明(みはる)の淡い関係性がよかったんですね。未明は由貴の父親美由貴(よしゆき)に恋心を抱いていて、けれど一向相手にされない。— こうした二人のすれ違っている気持ちというのがちょっとばかし切なくて、なんか読んでる私も同じく切なくなる。全体にどたばたしたストーリーの中、この二人の周囲だけちょっと違う空気が流れているようで、そのどたばたも細やかな世界も両方好きでした。
ええ、やっぱりうまく説明はできないんです。うまく説明はできないんですが、自分がこの漫画を好きであることはわかっています。本当に好きなものは、言葉にはできないみたいですね。そんな風に思います。
で、なんで急に『CLIMB THE MOUNTAIN』なのかというと(註:本当は違う漫画で書くつもりだったのさ)、今日偶然であった女性が、非常に理想的な風貌とキャラクターをお持ちでして、職場であった技術の人なのですが、裾の広がったスカート、パステルグリーンの裾の長いカーディガン、そして手に下げたかばんはどピンク。私は、一目見て完璧だと思った。ついに見付けた、私の天使よ、—と思った。
と、そんなわけで由貴の父親美由貴を思い出してしまったのでした。うん、未明はやっぱり可愛いなあ(註:その女性と未明は全然似ていません)。
- 川原由美子『CLIMB THE MOUNTAIN』(ソノラマコミック文庫) 東京:朝日ソノラマ,2003年。
- 川原由美子『川原由美子選集』第1巻 東京:朝日ソノラマ,1999年。
- 川原由美子『CLIMB THE MOUNTAIN』第1巻 (フラワーコミックス) 東京:小学館,1987年。
- 川原由美子『CLIMB THE MOUNTAIN』第2巻 (フラワーコミックス) 東京:小学館,1988年。
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