2005年1月5日水曜日

怪奇植物トリフィドの侵略

 子供の頃、市の図書館にいって、児童書のコーナーをさまよいましてね、好きだったのが海外SFを翻訳した子供向け全集でした。タイムマシンとか地底都市とか水棲人間とか、とにかくいろんなのがあって、古典的SFのエッセンスが全部つまってたんじゃないかなと思うんですね。端から順々に読んでいったはずなんですが、なにしろ図書館ですからね、貸し出されていたりするのもあって、読めてないのもあるはずです。

調べてみたんです。そうしたらあかね書房が出していた少年少女世界SF文学全集なのだそうで、そうでした、地底世界の名前はペルシダーでしたよ。懐かしいけど絶版しているので、今読もうとしたら図書館に頼らざるを得ず、私が図書館に期待するのは、こういう良書を蔵書し続けてくれることなんですね。

頭の片隅に、断片がいっぱい残っているのですよ。タイムマシンはヘリコプターを改造したものだとか、水棲人間のえらは脇の下に作られていたとか、けれど一番はっきりと覚えていたのはトリフィドという人間を襲う有毒植物でした。この話は、人間が家畜として栽培していたトリフィドが反乱するという要素に、さらに流星による失明という二重のSF的要素が加わって、追いつめられた人類の命運やいかに! はらはらしながら読みましたよ。

私がこの話を特に好んだのは、多分ラストに希望があったからだと思うんですね。ひどい目にあっている人間が、けれど最後にはよりよい未来をつかめるかも知れないみたいな希望を見て、そういうところが子供心にもよかったのかと思います。

この物語の一番恐ろしいところは、結局トリフィドでも流星でもなくて、災害発生後の荒廃した地上でむき出しにされる人間のエゴだったのではないかと思います。主人公もその一人なんですが、偶然流星の災厄を逃れた人や、あるいは流星雨以前からの盲人は、そのことだけで圧倒的な優位をもって他のものを支配下において—、と、そういうところが怖かった。だからこそ、ラストの次世代に希望を見いだしたいという姿勢が光ったんだと思うんです。

トリフィドの本は、子供向けではなくて、大人向けのものだったというのをはじめて知りました。完訳版は東京創元社からでていて、今も買えるようです。ちょっと買って読んでみようかなと思います。子供の頃のわくわくした気持ちを取り戻せるかも知れません。

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