2012年1月13日金曜日

『まんがタイムジャンボ』2012年2月号

『まんがタイムジャンボ』2012年2月号、昨日の続きです。

チャレンジ!新人道場、新しい企画がはじまったみたいですね。『ももかスイッチ』や『南の国のサツキ』の分茶、そして枕辺しょーまが新作をもって登場して、新人といってもまったくの新人ではなく、ある程度実績のある人をこうやって特集して、描く機会、おひろめの機会をつくって、レベルアップをはかる、そんな企画なのでしょうか。いずれにしても、これがおふた方にとってよいチャンスになればよいなと思います。

『きいて!佐藤さん』、ゲストです。主婦佐藤さんが主人公。ものの声が聞こえるという、特殊能力の持ち主です。材料目利きの包丁とか、お茶の入れ方を教えてくれるやかんとか、けど、どちらもその本来の機能のために知識を役立てることができないっていうパターンを軸に描いていく? コンパクトに四コマ一本一本でしっかり落ちをつけていく、そんなオーソドックスなスタイルを徹底させているという印象です。絵やキャラクターの動向は、この作者らしい可愛さがあって悪くない。けど、これまで以上にかっちりした描かれ方で、このへんも模索のうちなのでしょう。ホース経由で蛇口とじゃんけんする、あの一本は、素直に見せて実はしたたかといったような佐藤さんの個性押し出して、一面的ないい人にならないところ大変よかったです。

『ふみ姫様は知りたいざかり!』、ゲスト2回目ですね。お姫様がお城を抜け出して、浮世絵師のもとで仕事体験という話。前回は畑仕事、今回は絵の手伝いをするんですが、膠の一件、ああいうのいいですね。全体にページ数少なく、それだけ話の展開も小さめ、読めるならもっと大きくゆったりと、いろいろエピソードわたりながら展開されるものを見たい、なんて思ったくらいでした。

この作者、ふたりとも、独特のやわらかさ、味があって、私は好きなんですけど、それがより一般的な支持を得られるよう、作風の変更も含めて、模索しているという感じ。いずれにしても、作者のもともとのよいところを残して、さらによりよいと思える、そんな漫画が読めるようになったらよいなと思います。

『天文むすめ』は織姫の話ですね。夢いっぱいの女の子、けどその夢は天体望遠鏡を覗くたびに壊れてきたっていうんですね。月にはウサギはいない、天の川は川ではない、ええ、天文の実際を知るたびに、夢と描いたファンタジーが否定されてきたんですね。というか、おじいさま、笑いすぎ。しかし、これ、たびたび話題になったりする文系対理系みたいな話に似て、面白いですよね。いや、文系対理系みたいな話は、なんも面白くないんですよ? 星のまたたいてるのはなぜ? という問い掛けに、なんか歯の浮くような世迷い言いって、まあ素敵! ロマンチックね! というのが文系で、あれは大気の揺らぎじゃ、と科学的事象として解説するつまらない連中が理系だ、みたいな酷い偏見で流布される類の言説ですよ。

この分類にしたがえば、織姫が文系でしょう。じゃあ、すばるが理系ってわけですね。ロマンチスト織姫、対しリアリストすばるかというと、そうじゃない。すばるも、ふたりに天文の楽しみを伝えようとしたおじいさまも、これでもかとロマンチスト。手の届かない星を大切な人に贈る唯一の方法、それが新彗星を見つけることだという、いや、その一連の流れの最後に、酷い落ちがつくんですけど、って、もう、おじいさま笑い過ぎ。でも、おじいさまと、そしてすばるの、彗星を見付けたいという気持ち、本心には、おじいさまのいった織姫好みの殺し文句、あれが嘘いつわりなくあると思うんですよね。

『天文むすめ』は、織姫とすばる、ちょっと方向性の違うロマンチストふたりの気持ちの描かれた、そんな漫画だなあって思うんです。織姫のロマンティシズムはちょっとからかわれてるけれど、それが悪いわけじゃない、馬鹿にされてるわけでもない。織姫とすばる、ふたりのロマンティシズムの出会える場所、そうしたところがあるといわんばかりの今回。素晴しくよかったです。

しかし、すばるは彗星発見者3人の名前を自分たちで埋めよう、そういってるわけですが、最近は天文衛星がものすごい成果をあげてますから、少なくとも第1発見者は衛星の名前になるんじゃないかなあ、みたいにいう私のような人間こそがロマンティシズムの敵であります。

  • 『まんがタイムジャンボ』第18巻第2号(2012年2月号)

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