2014年12月4日木曜日

黒森さんの好きなこと

 『黒森さんの好きなこと』、タイトルだけは知っていたのですが、読むのはこれがはじめて。ええ、単行本になりまして、書店で発見、おお、これは買っておきたい。買いまして、読みまして、いやあ、黒森さん、可愛いじゃないですか! ちょっと中二な、私ってこんなに黒かったりするのよ、みたいな、そんな雰囲気もしないでもない黒森さん。大人になって振り返った時に、いわゆる黒歴史だといって恥じたりするんだろうか。ああ、黒森さん、素晴しいな。と、ちょっと穿った楽しみ方はいいとして、黒森さん、他人の不幸が大好きだっていうんですね。ええ、タイトルにいう好きなこと、これ、他人の不幸であるんですね。

転校してきたばかりの黒森さん。この子と仲良くなるのが田沼幸さんなんですが、あ、ほんとだ、なるほどな、くじ引きで負けて声かけることになってる。ああ、田沼さん、最初っから一貫してるんだな。この人、一口にいうと不幸体質というやつで、静かに普通に暮らしているだけなのに、とにもかくにもついてない。鳥のフンを見舞われたり、ぶつかったり、転んだりと、結構散々な目にあってるんですけど、それが黒森さんを喜ばせるんですね。ああ、黒森さん悪趣味だ、というか、田沼さんもそんな子とよく一緒にいられるな、って、いえね、黒森さん、毎回のエピソードの一番最後、その回の印象を決定する大オチにおいてですよ、優しさというか、友情というか、そうしたものをわかちあうみたいなことするもんだから、ああ、屈折してるなあ、そうは思うんだけど、悪い子じゃないなあ。なんかほのぼのと、ふたり、いい友達なんじゃないかと、そう思えてきたりするんですね。

黒森さんは変わりものだけど、人気者の王子から好意寄せられても断固はねつけるし、田沼さんの幼なじみに対してはからかってばかりで、ちょっと意地悪? けど憎めないところがある。とりわけ田沼さんに対してですよね。これをやっちゃ駄目だ、そう思えることは決してやらないんですね。あくまでも田沼さんに自然におこる不運、それを見て楽しんでるのであって、彼女のこと不幸にしようと画策したり、酷いことをやったり、そういうことはしないんですね。むしろフォローしたり、時にははげますようなこといったり、いややっぱりちょっと屈折してて、素直じゃないんですけどね。黒森さん、田沼さんのこと気にいってるのがわかる。それは彼女が不幸体質ということもあるんだろうけど、でもそうじゃなく、彼女をただただ気にいってるんだと思う。友達として、愛玩動物なんていっちゃったりするけど、一緒にいて楽しかったりするんでしょうね。不幸な目にあうから、それだけではない繋がりがありそう、そう思わせるものが描写のはしばしに感じられて、これが黒森さんの可愛げなんだな。いや、まあ、これは私がそう思いたいだけ、なのかも知れませんけどね。

黒森さんが田沼さんを実は大切にしてるっぽいのと同様に、田沼さんも黒森さんのこと気にいってますよね、実は。不幸体質だけど、めげず負けず、ちょっとくじけそうになりながらも、素直にその感情を表す人。そうだ、気が置けないっていう、そんな関係がふたりにはあるんだと思う。黒森さんも、田沼さんも、思ってることをちゃんと伝えようとしてる。とりわけ大切なことについては、いい加減にはしていない、そう感じられて、そうしたふたりの関係に、ほのぼのと暖かみなど感じているのだと思います。

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