単行本でまとめて読むと、思っていた以上に面白い、というか、『中2限定!?ガールズトーク』、これは先生に恋する女の子の話というよりも、兄教師、妹生徒の兄妹ものとして読んでしまって、ちょっと素直じゃなくて兄にいじわるしたりする妹ハルカと、妹のことを思いやっている兄ヒカル、ふたりの気持ちが通じる、そんな描写がですね、すごくよくって、ああ意外だったな。もっと、こう、なんか、楽しくきゃあきゃあ先生が好きのなんのいってるゆずに、ことりとハルカが突っ込んで、そんなコメディ色強い漫画って印象だったのですが、それ以上に彼女らの心情丁寧に描かれていて、ええ、読んで充足する、そんな気持ちが強かったのでした。
登場人物は、やっぱりゆずがメインでいいのかな。桃里ゆず、ヒカル先生のことが好きな女の子。ちょっと変わりもの? 藤林ことり。先生の妹でしっかりもの、というかちょっとシビアすぎるような気もしないでもない水嶋ハルカ、この三人が中心になってヒカル先生をふりまわす? そんな感じの漫画です。あの手この手で先生に振り向いてもらいたいゆずは、ちょっと健気で、けどどことなくユーモラス、憎めない子って感じですよね。ことりとハルカは、そんなゆずを手伝ったり応援したりするのですが、ゆずの好きな先生っていうのが、他ならぬハルカの兄というのが、面白さを引き出す要素になってますよね。ゆずですよ。ハルカと先生は兄妹だから、自分よりもいろいろ知ってる、見てるはず! って思って悶々としてみたり、また兄ヒカルの作ってくれたお弁当、そいつを狙ってみたりとかさ。またハルカは妹であるから、ヒカルに対して他の生徒ではちょっと無理な踏み込み方ができるわけで、結果ゆずと先生、ふたりでデート、みたいなシチュエーションにも持ち込める。ハルカの存在、実際大きいなあ、そう思うわけなのですね。
で、こうしたコミカルな恋愛のコメディを展開しながら、随所に挿入される友情や兄妹の情、その描写がすごくよくて、読んでいてしみじみとするものがあるのですね。ことりと、ゆず、ハルカの友情が再確認されるエピソード、あれは屈指でした。妹がダイエットしていると知った兄の思いやりもすごく素敵で、そして縁日の夜のゆず。あのお別れのロマンチック、また友達が、ひとりはやく帰らないといけなかったゆずに贈った、これも思いやりですよね。友達が、妹が、喜んでくれるよう、その人のためになりたいという思いが伝わって、いや、ほんと、いい関係だなあ。まだまだ発展途上の彼女らを見守るヒカルの視線の暖かさもあいまって、じんとする。いい読後感の得られる漫画となっていました。
そして、ラストの描き下ろし、これ、素晴しかった。本編よりもいっそう、しみじみと情感を描く、そうした要素強めて、ハルカの気づかい、ヒカルの妹を思う気持ち、それがゆずとことりの介入で、かちりと合う。そうした感触に、ああ、今、本編での彼女らの関係、またヒカルとハルカの関係、それは、これまでにあったいろいろのできごとが育んできたんだな。その、思いや愛情の歴史、軌跡を思ったのですね。ああ、今がいい関係なのは、それまでに積み重ねられてきた思い、その厚みあってのことなんだ。そして、その思いは、これからもなお重ねられていくのだろうなあ。そうしたふくらみを感じさせて、この1巻を素敵にとりまとめる、美しいエピソードがあったのでした。
- 坂巻あきむ『中2限定!?ガールズトーク』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2011年。
- 以下続刊
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