『まんがタイムきららフォワード』2015年10月号、先日の続きです。
『ゆるキャン△』、これ、ほんといいですよ。なでしこが合流して餃子なべの図。その夕景、その情景も美しく、そして日暮れてふたりで食べる鍋。キャンプといえばわいわいと、そんなイメージがあったけど、そうじゃない、雄大な自然の中、孤独を楽しんだり、そして友達と静かに過ごす、そんな時間も素敵なのだと、すごくよく伝えてくれる。淡々としたモノローグ、じわっと伝わる感情が、そのまま魅力となろうってんですね。そして夜。ラジオ聞いたりね、そして翌朝の日の出。ほんと、淡々と描かれる車中泊からキャンプ地への移動、その描写が素晴しい。見事だよなあ。絵のタッチもぐっとくる。もう、たまらんものありますよ。
『手と手をあわせて』、これもまたいいなあ。クランベリーホテルにやってきた小さなお客さん。迷子なのか、あるいは捨て子? なにを聞いても、ここな4さいとしか答えない。雪葉、家出説を提唱する。どうも、これが当たりっぽいんですが、さすがだな雪葉。家出のエキスパートだ。警察ならぬ衛兵に任せる、そんな案も出たんだけど、ホテルに対するよい印象を持って帰ってもらいましょう。もてなすことになるんですね。って、オーナーがですね、めちゃくちゃ面白いの。ここなにめちゃくちゃ気にいられてて、子供は苦手っていうんだけど、ずっとべったり、登られるし、馬にされるし、でもオーナーぶつくさいいながらも、ここなの面倒ちゃんと見るんですね。その情景のほのぼの。素晴しいですなあ。最高でした。加えて面白かったの、なんでオーナーが気にいられているのか。心臓の音がどうたらこうたら、それが全然関係なかったっていう、こういう緩いのがねなんだか妙におかしくって、いいんですね。
『夢喰いメリー』、うおお、イチマちゃん、素晴しいな。複数の夢魔の襲撃に、それぞれ個別に対処するメリーやジョンたちですが、捕えられたみなとたちのもとにいち早く駆け付けたのはイチマちゃん。みなとを守れるよう、お守りをこっそりポケットにしのばせていた。みなとには怖れられてしまったイチマだけど、信じてもらえないかも知れないけど、そう思いながらみなとを守るために戦うイチマちゃんのあの凛として鬼気迫る感、ひしひしと押し寄せる彼女の思い詰めたその気持ち、もうこんなの涙なしでは見られないじゃないですか。イチマ、勝てない。それでも退かない。涙ながらの懇願に、血にまみれながらもみなとのことを諦めようとしないイチマの、最後の選択。なにがベストか考えて、プライドもなにも捨てて、一番の勝目を狙いにいく。走るイチマのいじらしさ、倒れ込むイチマの、悲壮で、けれど絶望の中、一縷の可能性に向かって身を投じるがごとし様子は、本当にこの子の大一番であったと思います。
『そこテストにでます!』、茜の家に向かう数馬一行。その背後からそっと合流する楓の様子。これ、のっけから面白かったですよ。もみじがね、妹のいろはにいろいろ話している、その中に自分のことが出てきて、これ、聞かれてたもみじもバツの悪い、そんな流れではないですか。でもって、どうやって話しかけたものか逡巡して、結果普通に話に加わる楓、そうしたところにも、この人の人となりが見てとれる、そんなところもよかったなあ。あからさまに態度に好意が出てしまう数馬、そのわかりやすさに複雑なもみじ。即座に返品されるいろは。そうしたやりとりも面白く、そして舞台は茜宅へと移るのですが、数馬の心の重荷と、そこに加担していた茜の悔い。いろは曰く重い、そんな気持ちのやりとりが描かれて、けれどそれだけに茜という子の、また数馬とも違う一途さ、そうしたものがよく現れていたなあ、なんて感じました。ほんと、皆が心に思いを抱えて、その重さを持てあましている。素直に気持ちを口に出せる、そんないろははまだそうした重さを知らないのかも知れませんね。
- 『まんがタイムきららフォワード』第9巻第10号(2015年10月号)
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