2013年1月2日水曜日

三種のジンギ!

 明けましておめでとうございます。2013年、新年が明けましたね。なんとかかんとか、このBlogも続いておりまして、これもひとえにお読みくださっている皆様のおかげでございます。今後ともお引き立てのほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

さて、新年明けましたということで、ここはなにかおめでたいものを紹介したいな、そう思いましていろいろ考えましたところ、おやおや、これがあったじゃないか、ええ、『三種のジンギ!』ですよ。なんせジンギとございます。あえて漢字にしたらば、神器、神の器と書く。もう、これほどにおめでたいものも、なかなかないのではないか、まさしくお正月にこそ相応しいタイトルであろうと思ったのであります。

ヒロイン末森乙女はお兄ちゃんっ子。お兄ちゃんとは小さなころからいつも一緒で、遊んでもらったり、いろいろ教えてもらったり、本当に大好きだった。なのに、その兄は突然姿をくらましてしまったというんですね。夢が破れてしまった、理想が失われてしまった、それゆえの失踪。ならば、私がその失われた夢を、奇跡を取り戻してみせよう。三種のジンギを、再びこの地上に……! 決意を胸に乙女の孤軍奮闘、知らぬ地での戦いが始まります。

さて、三種のジンギとはなにか。ええ、柳橋高校旧制服、ブルマ、旧スクール水着のことであります。アニメっぽい制服が、ブルマが、旧スク水が、この地上から失われてしまった。兄貴、傷心! って、妹もよくその兄貴の傷心に付き合うつもりになったな! 驚きなんですが、ともあれ乙女、県外から柳橋高校に入学。生徒会に入り、旧制服を復活させるんだって意気込んでるわけですよ。

柳橋高校では、生徒会は三役連名での立候補が必要。なので、同じく生徒会に興味のある女の子聖川楓美と、彼女の友人新宮いろは、ふたりの協力をとりつけて、いざ生徒会を目指そうという、これまでが前提となるんですが、ここからの彼女らの活動、こいつがですね、もう実によいのですよ。学内での知名度をあげ、信頼を得ようとする。お悩み相談はじめましてね、ちょっとした相談ごとから、部活その他のお手伝い、引き受ける、っていうんですが、活動のはしばしにのぞく乙女と兄の絆、実はブルマ愛好者楓美のブルマ愛、加えて彼女らの見せる一生懸命さ、真っ直ぐさ、それらが本当に面白くて、笑わせられたり、また時には感心させられたり、いきいきとして輝いているのですよ。

これはひとえに、人と人のつながり、そこに生じる心の景色の力であるな。乙女たち三人は、自分たちの野望、それを実現するために生徒会に入ろうとしている。いうなれば不純な動機、私利私欲でもって動きはじめた、そんな活動であるというのに、いざ頼まれごととなれば、もうしっかり取り組む。手伝わされているなんて態度は皆無にして、まるで自分のことのように頑張る彼女ら、声出して、体動かして、ほがらかに明るく、楽しみを見出しながら、課せられた責任を果たしていく。その頑張りが、ちゃんとまわりの人たちにも通じているのが素晴しいんですよ。

依頼に対し、ちょっとずれたり、特殊な知識が披露されたり、いろいろおかしなこともあるのだけれど、しっかりばっちり尽力してくれる彼女らのことが、口コミで広がっていっていることがわかる。最初はクラスの友達だった。それが、その兄弟に、所属する部活動に、そして噂を聞き付けた生徒会書記の先輩たちに伝わって、彼女らの活動の場が広がっていく。ともない広がっていく、友人の輪、人間関係の輪。個性的な先輩友人たちとの出会い、その場その時に現れる、引き出される、乙女、いろは、楓美の気風の気持ちよさ、それは実に清々しくて、ああ、なんて素直でいい子なんだろう! 読み手である私の心にもしみじみ伝わろうという彼女らの人柄、その確かさに、もう魅了されてなりません。

KRコミックス恒例のカバー下のおまけ。これがまた沁みたのですね。在りし日の日常。乙女がね、兄貴と一緒にゲームで遊んでいる、テレビの振り付け、これアニメだよね? プリキュア? 歌にあわせて一緒に踊ってたりね、ああ、この子、本当に兄貴のこと大好きで、兄貴と一緒にいた日常、それが楽しかったんだな。そうしたことが本当によく伝わってくる小エピソード。ああ、だからなのか。乙女の原動力は、好きな誰かのために一生懸命になれる、それなんだなってわかった気がして、ああ、それだから乙女たちの活動は、恩着せがましくもなく、ただの手伝いにもとどまらず、なにか特別なものと感じられるのか。乙女たちは、そのお手伝いする相手のことを好きになってるんだな、まずその人柄を受け入れて、気持ちをひとつに寄り添わせるようにして頑張るんだな。そのようにして、乙女をとおし気持ちが通じあわされるからこそ、彼女らが出会い、一緒に頑張ってる人たちに関しても、あんなに気持ちのいい、あたたかみ溢れて情感もたっぷりと、親しみ深く感じられる、そうした風であるのだな。

わかった気がしたんですね。

こうして第1巻を読み通してみれば、個性的なヒロイン三人に、より一層に個性的な人たち、皆がいきいきと関係しあいながらかたちづくる、人の輪の面白さ。それが濃密で、本当に面白く、味わいぶかく感じられたのでした。誰もが、この漫画の中の世界、そこに生きて、活動してるんだなって思える、そうした存在感を持って、だから愛おしさもひとしお。当然、彼女らの活動の描き出す、この世界、その魅力も深まる、そう感じられるのです。

  • 羽咋あみ『三種のジンギ!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2012年。
  • 以下続刊

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