ついに『まんがタイムきららミラク』から単行本ですよ。『純粋欲求系リビどる』と『Good night! Angel』の2タイトルですね。変身ヒロインものと、殺し屋稼業の女の子、どちらも戦うヒロインというのが面白い偶然だと思います。さて、今回は『Good night! Angel』を取り上げます。組織においても優秀と名高い殺し屋、境川ユリ、その素顔は、普通の生活に憧れる普通の女の子だった、っていうんですね。学校通って、普通に友達作って、学校帰りに一緒にファストフード店に寄ったり、家に招いて勉強会やパジャマパーティをしたい、そんなささやかなことを夢見ている高校1年生。それが境川ユリであります。
しかし、殺し屋という職業が、彼女の夢を阻む! 幼少期から殺し屋としての訓練を受け、仕事をしてきた彼女には友達がいない! 秘密がばれないよう、友達を作ることが許されなかったユリは、小学生時代ぼっち! 中学生時代もぼっち! 友達なし、ひとりぼっちの学校生活を送ってきて、それがここにきて起死回生挽回のチャンスですよ。高校進学とともに一人暮らしを開始。よし、これから友達を作るぞ。頑張るわけです。
殺し屋としては超一流の彼女が、いざ友達を作るとなると、どうしていいやらわからない。どうやって話しかけたらいい? どうなったら友達といえるの? 困惑しきりなのですね。また職業病ゆえか、事前準備下調べだけは完璧で、いつか友達といくことを夢見て、たいていのテーマパークはリサーチ済み、一人で。ああ、どれほどに健気なのだろう。友達を作りたい一心で、準備や練習おこたらず、けれど経験のなさがスムーズにことを運ばせない。空回りしたり、またちょっとのことで嬉しくなってしまったり。ええ、殺し屋としての彼女と普段の彼女のギャップがあんまりで、それゆえに女子高生境川ユリの可愛さが際立つ、といった感じなのですね。
しかしこれが面白いのは、ただ単に昼は女子高生、夜は殺し屋、みたいにやってるからじゃなくてですね、昼には昼で、殺し屋の仲間がユリのまわりにわんさといるんですね。ユリの友達、それはユリの求めていた普通の暮らしを送ってる普通の女の子たち、大沢佳奈や畠山寧々であり、また決して歓迎しているわけじゃない白霜あやめをはじめとする殺し屋同僚たち。なんのかんのいいながら、普通の友達との距離も縮まっていってるし、殺し屋仲間との仲もよくなってるし、普通の女の子たちの交流と、ちょっと特異な人たちとのなんかへんてこな日常風景。そこに生じるメリハリ、ユリのテンションの違い含めて、飽きさせない、面白みの幅が広くとられている、そうした感じがあるのです。
殺し屋もの、アクションも少々、そして女の子たちの日常はたっぷり。健気少女のほのぼのあれば、押し掛け友人たちに翻弄されて、けどなんだか嬉しくなっちゃってたりもする、そんなユリの様子だけ取り上げても充分楽しい漫画です。読めば他にも見どころあるかも、そんな感じに盛り沢山なコメディであります。
- 柊ゆたか『Good night! Angel』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2012年。
- 以下続刊
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