2010年4月20日火曜日

ひよわーるど

 その存在は知っていたのだけど、どんな漫画かはまったく知りませんでした。『ひよわーるど』。そのタイトルから、ヒロインの名前がひよなのかなって思ってたら、もーりとかじゃっくとか呼ばれてるらしい。でもって、じゃっくだもんだから、男の子主人公なのかなと思ってたら違った。いやあ、ヒロインの名前がひより、それはいいんですけど、その名前もタイトルも、ひ弱に由来してるのか……。さらに、じゃっくという呼び名。これ、虚弱貧弱の弱なのか……。『ひよわーるど』は、とてつもなく身体の弱いお嬢さん、守屋ひよりが主人公の漫画であります。

しかし、それにしても弱い。体力がない。とにかく非力。低空飛行で生きている、そんなヒロインの様子を見て、こりゃさすがにありえない、と苦笑するのですが、なんと、作者の実体験が結構はいっているらしいとかいうじゃありませんか。うわあ、こんなに虚弱な人って世の中に存在するのか! と、もっともらしく驚いてますけど、実は私、こんな感じでした。小学生の頃、通学の途中で体調悪くなって、知らないお家の玄関先でへたりこんでたりね、大学に通うようになってからも、朝の授業、体調崩して寝込みながら受けたりね。そんな具合ですから、ちょっと他人事とは思えないようなところもあって、いやもうほんと、懐かしみながら面白がっているのです。

しかし、『ひよわーるど』、これいいなって思うのは、そんな虚弱なヒロインなのに、悲観するような様子がまったくないっていうところですよ。具体的に日常生活に困りそうなくらいに貧弱なのに、それはそれで折り合いつけて、楽しく毎日を過ごしています。こうした弱いヒロインなら、それこそ深窓の令嬢っぽく、ちやほやされるみたいな展開になってもおかしくなさそうなところが、そんな素振りまったくなし。周囲は、じゃっくが授業中にぶっ倒れたとしても、そんなもんだとわかってるから、そのありのまま受け入れて、そうっと放っておく。じゃっく、いやさもーりにしても、頑強じゃないからって引っ込んだりしない。アピールするところはアピールし、自分のポジションというものをしっかり確立させている。このしたたかさですよ。弱い、確かに弱い。けれど、気持ちまで弱々しくはない。こういう守屋ひよりのキャラクター。とにかくマイペースであるところ、自由人そのものといった気風、それが気持ちいいなあって思って、すっかりこのお嬢さんのファンになってしまいました。

ところでだ、冬になるとコートやらなんやらいっぱい着込んで丸々となる守屋さんですが、これはわかります。体脂肪が少なすぎて、普通の人よりも体感する寒さがきびしいんですよ。いや、もう、ほんときついですよ。私、体脂肪率10%割ってます。今、体重、50キロないもんな。だから、もう、寒い寒い。まだセーター着てます。コートだって着てます。夏だって長袖だ。いや、もう、半袖とかにすると体調崩したりして、通勤途中にリタイアしたりするんですよ。いや、もう、守屋さんの気持ちはよくわかります。

あとは、ちょっとした余談。てっきり関東舞台かと思っていたら、大阪舞台で驚きました。あの、遠足をみんなで決めるという話、関西では普通なのかどうか知りませんけど、私の通ってた高校もそうでした。私の住んでるのは京都なので、行き先は嵐山だったのですが、もーりが日本橋でゲーム機買ったように、私も自由行動、それこそ自由に振る舞って、墓参りにいった(うちの墓は嵯峨野にあります)。こんな私だからか、もーりのアグレッシブさは面白い。お茶だといいはって、校内ご禁制の品を持ち込んだりする、そういうちょっと悪いところも実に魅力的で、やっぱりこの漫画のよさは、したたかなヒロイン、これであるなと思うのですよ。

  • 橘紫夕『ひよわーるど』第1巻 (バンブー・コミックス) 東京:竹書房,2010年。
  • 以下続刊

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