2006年11月18日土曜日

azur

 青空文庫の本を読むならば、Webブラウザで読んでももちろんいいのですが、できたら専用のビューアを使いたいところ。なにしろWebブラウザというものは欧文文化において誕生進化してきたものですから、日本文を読む用途にはちょっと万全とはいえないところもあります。え、なにが足りないの? といわれると、そうですね、例えば縦書きとか縦書きとか縦書きです。いや、冗談でなくて、本当に日本文というのは縦書きにマッチするものなのですよ。さて、数ある青空文庫対応ビューアの中で、特に私がお勧めしたものはなにかというと、ボイジャーがリリースするazurです。azur、アジュールとはまさしく空の色、青のことであります。この名前をはじめてみたときには、いい名前を見つけたなあと感心しました。しかもソフトウェアを起動してびっくり、なんとazurとはaozora unique readerの頭字語であるようではないですか。ほんと、うまい名付けだなあとまたここで感心したのでした。

青空文庫を読むに際し、なぜ私がazurを推すかというと、その表示の能力でしょう。実はazurは、これ自体がWeb上にある文書を読みにいくことができるのです。htmlやxhtml文書を読み、表示し、ハイパーリンクをたどりながら目的の本を開くことができる。この機能は、ぱっと見には地味ですが、大きな可能性を持っています。それはなにか。それは、azurをテキストブラウザとして利用できるということに他なりません。

ちょいと、この画像を見ていただきましょう。

この文章は、ほかならぬ私のサイトこととねの序ともいえる文書『こととねのこころね』ですが、azurで開いてみてびっくりしました。なんか、いつも見てるWebブラウザ上の文章とは一味違うように感じられて、うはあ、これが縦書きの威力かあと驚いたのでした。他にもいろいろ読んでみたりしたのですが、特にレイアウトに凝るようなことをしていないこととねの文章を読むに際しては、azurに優るものはなしと痛感しました。もちろん欧文の多いページを読むにはazurは向きませんが、けれど日本文にはazurは使えると、そんな風に思ったのです。

azurのwebをめぐる際のメリットはもうひとつあります。それは栞の機能です。一般にWebブラウザのブックマークは、ページ単位でしか保存することができません。ページの途中をブックマークしようと思えば、そのページにid属性が設定されている必要があって、ということはつまり自分の好きなところを好きなようにブックマークすることはできないということです。

ですが、azurは違います。普通に、文章の途中でブックマークできるのです。まさしくこれは長文を読むことを前提に開発されたソフトウェア故の機能でしょう。そして気の利いていることに、azurを開くと、以前読んでいたページがちゃんと開いてくるところもすごい。もちろん、文書が開くんじゃなくて、読んでいたそのページ、途中が開かれてくるのです。これはいい機能だと思いました。長文はWebには向かないといわれてきたその常識を打ち破る機能であると思いました。ここに、Web上に新たな文学の可能性をうかがうことができる! とそんな風に思ったのです。

そんなわけでこととねを閲覧する際のブラウザはazurで決まりです。もちろん、azurにも向き不向きがあって、できることできないことはあるのですが、けど普通の用途にはWebブラウザ使えばいいじゃんか。けどそうではなく、文章を読みたいという時にはazurがいい。Webブラウザのそばに常にazurを待機させておいて、この文章を読みたいと思ったら、URIをazurにドラッグ&ドロップ。そしてゆっくりと文章を読むというのは、ちょっとした贅沢体験です。文章の贅沢を味わえる、azurとはそんなソフトウェアであると思います。

0 件のコメント: