2006年11月15日水曜日

単行本書誌,漱石全集第27巻別冊下

 もらった図書券が溜まってきたので、買い漏らしていた『漱石全集』を買ってきました。本当だったら三冊だけのつもりだけだったのですが、岩波のサイトで確認すると第24巻書簡下と別巻漱石言行録が在庫僅少。これは危ない、急がないと買いもらしが出るかも知れないと思って、残りを一気に購入すると決定。二万四千円なりです。あいたたた、としか言い様のない価格ですが、でも全集が欠けることを思えばこれくらいどうってことないでしょう。そんなわけで、本日『漱石全集』をコンプリート。2002年に第二次刊行が開始されたわけですから、足掛け四年かかったというわけですね。

購入した書店はジュンク堂大阪本店。私は以前の職場で『漱石全集』をジュンク堂外商に注文しておきながら、刊行完了を待つことなく転職を余儀なくされて、だから私の『漱石全集』は未完のままにされて、でもいつか揃えるんだという話は以前したとおり。けど、ジュンク堂に頼んでおいて、途中からよそで買ったりなんぞしたら、そりゃ仁義にもとるってものですよ。だから、『漱石全集』買うときはジュンク堂でと決めていたのです。

二万円の買い物をしたら、コーヒーチケットを二枚もらえました。なので、三階喫茶コーナーにて紅茶をいただきながら読書。ちなみにこんな感じ。

Tearoom

紅茶もおいしかったです。

Tea

さて、全集などという分不相応なものをもってどうしようというんでしょう。読むのか? といわれると、いやこれが結構読めるのですよ。そもそも私が漱石を全集で買おうと思ったのは、この人の小文雑文も含めたいろいろを、とにかく余さず読みたいと思ったからでして、文庫なんかにも収録されているものはありますけれど、余さずっていうのはちょっと難しいですよね。こういうときに役立つのが全集なのです。全集なら、とにかく細大漏らさず文章が収録されて、学生時代のレポートから書簡から、とにかくそういう驚くようなものまで入っていて、実にうはうは気分。そして、今日斜め読みしながら、これは面白いと思ったのが意外や意外、漱石の「単行本書誌」であったのです。

この書誌は、漱石の著書・全集・合著集等についての書誌であり、明治・大正期に刊行されたもの(漱石作品の翻訳書等は除く)を対象とし、一部昭和期のものを参考として取り上げたものです。これ見ればですね、本当にいろんな形態で出版されていたということがわかります。初刊があり、その後縮刷版が出たりもしているのですが、そうしたさまざまの本の表紙印影を見ているだけでも楽しいのですが、けれどさすが全集というべきか、それぞれの本への言及が細かくて、それがまた面白いのです。印刷日発行日発行所なんてのは当たり前の情報として、体裁があれば構成もあって、ルビの有無まで言及されます。また重版についても記載されて、そして解説。書名の記法の揺れや、重刷にともなう字句修正などの本を取り巻く情報が盛り込まれて、本当に読んでいて面白いのです。漱石に関する情報としても貴重でありましょうが、明治大正期の出版を取り巻く状況がどんなもんであったかも知ることのできる、本好きならわかる面白さのある資料であると思います。

さてさて、漱石のデビュー作『吾輩は猫である』ですが、これ当時ベストセラーだったといいますね。その状況はこの書誌からもうかがえます。『吾輩ハ猫デアル』上編を見ますとね、1905(明治38)年10月6日に初版初刷が出て、翌月11月20日には第3版(刷?)が出ているのですから、結構な売れかたをしているようじゃありませんか。中編はもっとすごくて、1906(明治39)年11月4日に初版発行、同月25日に第3版。まあ、刷り数とかわからないから一概にはいえないとは思うのですが、いずれにせよ人気作家だったのだろうなというのがうかがえるように思います。

こんなデータを読んで面白いと思えるかは本当に人それぞれですが、私には本当に面白く、これだけでも全集買ってる意味があったなと思えるほどでした。けど、人には勧めません。

  • 夏目漱石『漱石全集』第27巻 東京:岩波書店,1997年。

引用

  • 清水康次「単行本書誌」,『漱石全集』第27巻 (東京:岩波書店,1997年),440頁。

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