2006年11月28日火曜日

ダーティペア 謀略の005便

 ダーティペアOVAシリーズでテンションを大いに下げてしまった私にとって、最後の希望といえるもの、それは『謀略の005便』でありました。ジャケット裏を見ればオリジナルスタッフが再結集と謳われており、総決算であるらしい。ううん、ちょっと不安かも。というのは、こういう原点回帰を売りにしようというパターンは、もうそのものが衰退期に入ってしまった時に、爛熟を過ぎ、消え逝こうとしていく時期に現れることが多いような気がする。そういう学習をしてしまっているからです。ですが、私は見て思ったのです。確かにこれはこれまでの『ダーティペア』を総括しうる力を持ったものでした。面白かった。ちっとも終わりなんかじゃない。本当に面白かったと思います。

ストーリーはというと努めてシリアス。絵柄がずいぶんとアニメっぽくなっているため、むしろ戸惑いを感じてしまうくらいにハードな内容で、そのチャレンジぶりは見るものに挑戦するがごとくです。まさしくSF・ミステリーの系譜にあるアニメであると実感しました。無茶はせず、丁寧に、しかし状況の許す限りのダイナミズムを追求していることがわかる。よく視聴者を翻弄し、予想を裏切りつつ期待には応え、最後までぐうっと引っ張っていこうとする意志が感じられます。完全無欠かといわれると、さすがにそこまではいいませんが、けれどエンターテイメントとしては充分以上の出来であったと思います。私はこれを見てすうっと溜飲を下げて、けれどかわりにずいぶんと切なくなりました。これで一連の『ダーティペア』連続視聴、いうならばお祭りともいえるような時間が終わってしまったということに加え、ストーリーのシビアさに揺さぶられてのダブルパンチであります。

『謀略の005便』、アイデアとしては、正直なところをいうと、あまり新鮮とは感じられませんでした。私は事前に読んだ惹句に、そして冒頭の流れからも、ずっと既視感に似たものを感じ続けていて、それは有り体にいえばTVシリーズ「うっそー!消えた463人?」及び「やったね!出てきた463人」です。この話と使われたトリック、それがずっと頭の中にあって、だから少し意地悪な視聴者だったかも知れません。TVシリーズで問題にされた部分がどう扱われるか、また逆にTVシリーズで無理したと思われる部分をどう処理するか、そういうことを考え続けていて、またあのトリックとは違う可能性も考えて、ずいぶんと忙しく頭を働かせながら見ていました。

このモチーフの似通っているのを見て、残念と思う気持ちもあり、けれど逆に、あの話を違うように取り扱って膨らませてみたリベンジなのかも知れないと思うところもあり、見終えてみては後者の印象が強いです。そういうところも含めて、『005便』は総括、総決算なのかも知れないと、そんな風にも思ったのです。

モチーフや着想には新鮮味はなかったですが、その分ドラマ、見せ方には力が入っていたと感じられます。そのせいか爽快感は少なめ、ずいぶん重い話になってしまったようにも思いますが、こうした暗さ重さは嫌いではありません。強い印象を残して、ちょっと忘れ難い話であると、そういう感想を持ちました。

小説

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