2005年5月4日水曜日

Alice's Adventures in Wonderland

 皆さんはご存じでしたでしょうか? 今日、五月四日はアリスの誕生日です。アリス? アリスといえばあの世界的に有名なアリス、アリス・プレザンス・リデル(後のハーグリーヴズ夫人)に決まってるではありませんか。あの、不思議の国を旅した少女です。

っていうのは、ずうっと前に五月四日を記念して書いた文章の冒頭でありまして、ええ、今話題にしようとしてるアリスというのは、世界的に有名な物語『不思議の国のアリス』のヒロインのアリスのことです。けれど、アリスの物語こそは有名でも、アリスという娘が実在していたということは意外に知られていないんですね。いや、もちろん児童文学読みには常識の話ですよ。けれど、一般の人には意外や知られていないみたいで、私なんかはそのことにかえって驚かされてしまいます。

さて、知られていないといえば『不思議の国のアリス』という物語についても知られていなくて、私、つい最近アリスに関係する企画をするから参考になりそうな本を教えて欲しいと知人から問い合わせを受けましてね、だったらといって、いつぞや取り上げました『おとぎのアリス』とプロジェクト杉田玄白所蔵の山形浩生訳アリスを紹介したのでした。

そうしましたらば、案の定というか、こんなに長くて込み入った話とは思ってなかった。相談してよかったと、私は感謝されてもちろん悪い気はしないんですが、けれどやっぱりアリスは誤解されてるんだなあと、世間一般に流布するアリスのイメージというのは、ディズニーのアニメ映画の原色の世界であるのだなあと、落胆するのでした。アリスの神髄である言葉遊びを軸としたナンセンステールとしての価値は、いったいどこにいったのだろう! ええ、ことごとに私がアリスを取り上げてこんなこというのは、アリスの物語の真価を広く知ってもらいたいがためなのです。

ということで、本日紹介しますのは、英語版の『不思議の国のアリス』。残念ながら両方絶版しています(ショックでした)。

アリスの物語は、イギリス生まれのアリスのために、イギリス人のルイス・キャロルが書き下ろした物語がもととなっています。もちろん当然英語で書かれていて、それもイギリス英語でありますよ。この間チャットで知りあったイギリス人がいうには、ちょっと古い英語だから読むのはちょっと難しいということでありまして、その上高度な言葉遊びが加わってくるから、確かに難度の高いテクストであるとは思います。

けれど、難しいからといって投げたのでは、言葉の中にこそ生まれ出ずる不思議の国の神髄にはたどり着けませんぞ。というわけで、英語でアリスを読むための助けとなるような本も出ています — その名も、『「不思議の国のアリス」を英語で読む』! ここまで至れり尽くせりの環境ができあがっていて、まさか読まないなんて選択があるでしょうか。

私は、中学高校と英語は苦手で、特にあの授業で習うようなのは大っ嫌いでありましたが、それでもその後アリスの物語に出会ったことで、英語に対する嫌悪感、コンプレックスは薄れたと思っています。さらにいえば、アリスに対峙することで、読む気にもならなかった英語を、ま、ちょっとは読んでみようかなと思うようにもなった。ええ、アリスは私の狭い世界を広く開いてくれた恩人でもあるのです。

アリスの物語から覚えた言い回しもたくさんあります(これがまた日常には使わないのばっかりで!)。アリスで培った言葉遊びのセンスは、英語日本語フランス語を問わず、さまざまな場面で役立ってくれました。ええ、ハイセンスで高度なテクストを持つアリスは、まさに語学を超えた思考の練習の場としてもうってつけで、この豊かな世界を知らずに済ますだなんて、本当にもったいないことだと思います。

参考書

0 件のコメント: