2004年10月11日月曜日

地下の国のアリス

 昨日は、知られざるアリスの世界を明らかにする注釈付アリス(詳注アリスとも呼ばれる)をご紹介しました。引き続いて本日は、オリジナルの不思議の国のアリスについてお話しようと思います。

オリジナル? 不思議の国のアリスにオリジナルがあるってことは、現在流布するアリスはオリジナルじゃないってことなの? ルイス・キャロルではない誰かの手による改作翻案ものなのか? ってそういうわけではありません。現在流通する『不思議の国のアリス』は、間違いなくルイス・キャロルの手になるものですから、その点ゆめゆめ勘違いなどなされませぬよう。

まず、はじめに事実の確認をしておく必要があります。アリスの物語の主人公であるアリスは実在の人物でした。アリス・プレサンス・リデルといいまして、オックスフォード大学クライストチャーチ学寮長の娘でした。クライストチャーチ学寮に所属していたルイス・キャロル(この人は数学の先生でした)は1856年アリスと出会い、1862年7月4日金色の昼下がり、ボート遊び中にアリスを含む三姉妹にお話をせがまれます。このとき即興で作られたのが『不思議の国のアリス・オリジナル』、というわけです。

オリジナルのアリス物語は『地下の国のアリス / Alice's Adventures Under Ground』といい、その年のクリスマスのプレゼントとしてアリスに贈られています。全編ルイス・キャロルによる手書き、イラストも自身の手になるものでした。

この物語がジョージ・マクドナルドにより見いだされ、増補改訂をともない出版されたのが、皆様ご存じの『不思議の国のアリス』です。『地下の国のアリス』は章も少なく、全体に簡素な印象を受けます(手書きですしね)。また出版にそぐわない私的な記述があったりして(『不思議〜』では穏当なものに差し替えられています)、まさにアリスのためだけの物語であったわけです。

現在ではこの物語もファクシミリで出版されており(最初の出版は1886年)、私たちでも読むことができます。その日本語版(ファクシミリはもちろんオリジナル)が本書です。一度絶版していたのが復刻されて、それだけ手にしたいという人が多いということでもあるのでしょう。アリスの物語が好きという方には、手放しでお勧めしたいくらいの本です。

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