2004年10月4日月曜日

死刑台のエレベーター

 昨日紹介しました地下鉄のザジ、ザジの監督はご存じルイ・マルでありまして、彼の第一作が今日ご紹介する『死刑台のエレベーター』です。

ヌーヴェル・ヴァーグの先駆にして、まさにフィルム・ノワールの真骨頂。完全犯罪は成立するのか。思わぬ偶然のいたずらに翻弄される男女、危機一髪の連続にはらはらさせられるスリルとサスペンスの名作です。この映画によってルイ・マルという名前が人々の知るところとなり、逆にルイ・マルといえばモノクロームの緊張感あふれるこの映像を思い浮かべるほど。ルイ・マルの名をしらずとも、この映画なら知っているという方も少なくないでしょう。

私がこの映画を始めてみたのは高校の時で、ドライでクールな映像、陰鬱な大都会パリに幻惑されました。多分この幻惑には、マイルス・デイビスのジャズも一役買っていたことかと思われます。でもこのときはまだ、音楽がマイルスだって知らなかったんですね。大学に入る直前くらいに偶然知ることとなって、大変驚いたのを覚えています。

モノクロの映画には、多分私の偏見だと思いますが、幸福感とか晴れ晴れとした感じよりも、陰鬱で乾いた印象があって、ほらチャップリンの映画も喜劇で楽しいけれどどことなく哀しさがたたえられているでしょう? 『死刑台のエレベーター』にいたっては空も街並みも重苦しくのしかかってくるようで、花の都パリも、人間性のあらわにされる苦悩と焦燥感の王国です。二組の男女が、一時の花を摘もうと軽率に、破滅的な人生を生き急いで、私はそのさまにしびれました。そんなこんなで、人間の内面を描くにはきっとカラーよりもモノクロームがむいていると思う次第です。

さて、ルイ・マルのモノクロームが『死刑台のエレベーター』なら、カラーはというと『地下鉄のザジ』なんでしょうか。退廃的な悪趣味、悪ふざけに彩られる原色の映像は、一見同じ監督によるものとは思えないほど異質ですが、しかし『死刑台〜』にしてもが退廃のひとつのあらわれなのですから、やっぱりこれらは同根なのだと思うのですよ。

Zut ! また廃盤ですよ。

(こちらは大丈夫)

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