2004年10月14日木曜日

ファイナル・アリス

デル・トレディチはアメリカ生まれの作曲家。連邦芸術基金は、アメリカ建国200年を祝うための音楽をデル・トレディチに委嘱し、そうしてできたのがこの曲です。なんというか、ナンセンスな馬鹿馬鹿しさが全編に漂っていて、けど楽しい。フルオーケストラのための曲ですが、フォーク楽器のグループとマイクを使うソプラノ独唱もともなって、マイクというのもハンドマイク(拡声器というあれですよ!)だそうです。思いっきり真面目にナンセンスを演じる、そういう面白さがアメリカで大人気を博したんだそうですよ。

デル・トレディチは、難解な方向に向かう現代音楽の流れからはずれ、分かりやすくロマンティックな音楽に帰ろうじゃないかという運動(ネオ・ロマンティック・ムーブメント)を提唱した人だそうです。その結果生まれてきたのが「アリス」の連作だったのでしょう。確かにしかめ面して聴くよりも、頬に笑みをたたえて聴いたほうが、この曲に関しては正しいといえそうです。

デル・トレディチの音楽は、残念ながら日本では知られておらずCDもほとんど出ていません。私が彼を知ったのはまさにこの『ファイナル・アリス』によってですし、その後文献でお目にかかることはあっても、音楽を聴くという機会はほとんどありませんでした。当然「アリス」の連作についても同様で、調べてみたら子供のアリス — 『夏の日の思い出』も発売されていたようじゃありませんか。残念なことをしました。私、買いそこねていますね。

と、こんなわけで今日ご紹介したアルバムは両方とも絶版しています。けど、機会があれば聴いてください。(少なくとも私の聴いたことのある『ファイナル・アリス』は)親しみやすく楽しい曲ですので、クラシック音楽といえばしかめ面して聴くものだと敬遠する方にこそお勧めしたいのであります。

  • デル・トレディチ,デイヴィッド《ファイナル・アリス~不思議の国のアリスより》バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ),サー・ゲオルク・ショルティ指揮,シカゴ交響楽団 ロンドン,POCL-3380(CD),1980年録音 1993年発売。
  • デル・トレディチ,デイヴィッド《夏の日の思い出》レナード・スラットキン指揮,セントルイス交響楽団 ワーナーミュージック・ジャパン,1996年発売。

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