2004年10月3日日曜日

地下鉄のザジ

 地下鉄のザジといえばレーモン・クノーの一癖も二癖もある小説ですが、今日紹介しようとしているのはルイ・マルによる映画のほうです。どたばたではちゃめちゃで、ええーっ、これがルイ・マルなのかと思う人もいるかも知れません。ストーリーであるとか細かいところに整合性を求めるよりも、勢いに任せて見るほうが楽しめるタイプの映画です。けれど、多分それだけじゃないような気もするんですよね。

この映画を見てすごいと思ったところは、言語感覚の鋭さによって成り立っているクノーの世界を、映像というまったく違う手法によって描ききっているところです。本当に驚きました。けれど、改めて小説を読み直してみたら全然違うんです。筋も見せ場も細部も全然違うんです。なのに映画を見ると、やっぱり地下鉄のザジに見える。これはすごいことだと思います。

この映画の魅力は、パリのいたるところを縦横無尽に走り回るザジの天衣無縫さもそうですが、それ以上に奇妙な大人たちの言動挙動のかみ合わないところであったり、またふとしたところでかっちりとあうところであったり。そうした見せ方の面白さが、この映画の独自性であり人を引きつけるところであったりするのでしょう。

最初にもいいましたが、論理的整合性だとかあるいはハリウッド映画的分かりやすさを求めると、この映画は駄目です。ルイ・マルの作り出した映像の世界に自ら飛び込んで、一緒になってはしゃぐくらいの気持ちが必要なんじゃないかな。フランス的なコメディってそういうところがあるんだろうなと、この映画を見るたびに思うんですね。

申し訳ないですが、2004年10月3日現在、DVDは廃盤商品の模様です

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