2004年10月13日水曜日

Alice

 改作ものはつまらないなんていってた私でありますが、けど原作こそが最上でそれ以外は見るにも堪え難いというような、そういう偏狭さは持っていないつもりです。というわけで本日紹介しますのは、不思議の国のアリスにインスパイアされて作られた映画、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』です。

この映画はすごいですよ。全体的なストーリーはなんとなく原作通りなのですが、細部であるとか見せ方であるとか雰囲気であるとかエピソードであるとか、もうまったく別物としてみたほうがいいです。よくある「おとぎの国」という雰囲気はまったく払拭されて、なんていったらいいのかなあ、不気味とかグロテスクとかそういう形容がぴったりくる映画に仕上がっています。

不気味、グロテスクなんていったらまるでひどい映画みたいに思われるかも知れませんが、全然そんなことありません。独自の映像の世界が繰り広げられて、めくるめく悪夢みたいな素晴らしい作品ですよ。私は始めてみたのが深夜放送で、その時はあまりにショックでなんといったらいいか分かりませんでした。

この映画の素晴らしさは、ちょっと言葉ではいいあらわしがたいのですが、精神の奥底の無意識に押し込まれたどろどろの感情が、そのまま映像に現れてきたようなそういうビビッドさにあるのです。残酷さとか、怖れとか、あるいは突拍子もない連想とか、そういうものが映画の根底に流れています。まごう事無きシュールレアリスムの世界でありまして、『アンダルシアの犬』とかが好きだという人には堪えられない映画であること請け合いです。そしてキャロリアン(コアなルイス・キャロルファン)はそういうのが好きに決まってますので、アリスファンには安心してお勧めできるというわけなのですね。

でも、忠告しておきますが、子供が見たら多分泣くような映画なので、間違えてお子様にプレゼントなんてことはしないでください。

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