タイトルだけを見れば、なにやら堅苦しい本なんじゃないかと思うかも知れません。なのではじめに断っておきますと、これは絵本です。絵本でこのタイトルということは、つまり教育絵本で、子供に訓育やらなにやらを教え込もうというやつだなと思われるかも知れませんが、それも違います。
『正しい暮し方読本』が教えることは、正しいとはつまりどういうことなのか、堅苦しい枠組みの中で生きることがいいことなのか、そういう生きる上で大切なことばかりです。自分の暮し方を考え直す機会を与えてくれるので、大人にこそお勧めの一冊です。
子供に限らず人は、他の人と自分が違うことを気にして、時に合わせてみたり、あるいは自分を主張してみたり。けれどまったく他人の枠にはまってしまっても、意固地に自我に固執してしまってもいけません。大切なのはしなやかな主張であって、自分の好きなこと、やりたいこと、そして一番正しいと思うことを軽やかに行うということなんだろうとこの本を見れば思います。
私は正しい象の見方がとりわけ好きです。世界というものは見る人それぞれのものであって、どういうふうに見るかという心がけひとつで、まったく違って膨らんで楽しいものになるようです。けど、私は象をこんな風に見たことがないんですね。ただ単に象を象としてしか見てなくって、ああ侘びしい想像力の持ち主と自分で自分をくさしちゃいますね。
この本には、人生を暮らす際にきっと役立つちょっとした発想がたくさんあります。こういう柔らかさに子供の頃から多く触れられれば、その子はきっと正しい大人になれるんではないかと思うんですね。
- 五味太郎『正しい暮し方読本』東京:福音館書店,1993年。
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