2005年5月3日火曜日

鬼平犯科帳

 鬼平犯科帳の映画をテレビでやってましてね、鬼平なんて私は久しぶりに見るんですが、ああやっぱりこいつはいいわあと骨抜きになってしまいます。中村吉右衛門演ずる長谷川平蔵のかっこいいこと。いや、恰好いいのは平蔵さんだけじゃありゃしませんぜ。周りを固める脇役からも渋味苦味の味わい深く、はたまた演出見せ方も実に堂に入って立派。ええ、こいつはいいですよ。毎週のテレビを楽しみにしていた昔を思い出しました。

とはいうものの、やっぱり鬼平犯科帳を楽しむというのなら、原作の小説がよいじゃございませんか。いや、私は池波正太郎のフリークではないのですが、父がですね、池波正太郎を全部揃えておるんです。だもんだから、自然私も読むようになって、ええ、一読すればわかります。鬼平犯科帳は活字で読めば、格別の味わいがありますよ。

私が鬼平犯科帳を読んだのは、実はもうずっと昔の話でしてね、私、ちょっとだけ入院していたことがあるんですが、その時に学校から借りてた本を読み尽くして、じゃあと、前々から読みたかった鬼平を持ってきてお呉れと、そんな感じに読み始めたのが最初だったのでした。

いやあ、そうしたら恰好いいのなんのって。物語中の人物が、どれもみんな生きてるんですよ。すごく生き生きとして、一挙手一投足が目に浮かぶようで、ふとした日常の一コマにしてもですよ、あるいは剣劇立ち回りであってもですよ、どのような所作でもってどのように人が動いているかというのが、もう本当に映像がそこにあるかのように鮮やか。後から振り返ってみれば、やっぱり文章なんですよ。決して説明調なんかじゃない、読み物としての文章なんですよ。なのに、ぐちゃぐちゃ細かいことを書いてそのくせちっとも動かないような文章とは違って、人物が、情景が、躍り出てくるようなのです。

文章に体があるとはこういうことをいうのだと、まざまざ感じ入った次第です。

鬼平犯科帳を読んで、私のお侍のスタンダードは鬼平になっちまったわけなのですが、ところがこのせいでさ、いい加減なお侍はどうも好かなくなってしまいました。いや、水戸黄門みたいなのも嫌いじゃないですよ。けれどやっぱり見るなら骨太のがいいじゃないですか。

そういえば、昔、SNKがお侍の格闘ゲームを作ってましたっけね。私、あのゲームは横目で見ながら一度もプレイしなかったんですが、それもこれも、平蔵さんみたいなお侍がいなかったからなんですよ。遊んでみたい気持ちはあったんですけどね、使いたいキャラクターがいなかったんです。おかしな話ですが、本当です。

  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第1巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第2巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第3巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第4巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第5巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第6巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第7巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第8巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第9巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第10巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第11巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第12巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第13巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第14巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第15巻 特別長篇 雲竜剣 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第16巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第17巻 特別長篇 鬼火 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第18巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第19巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第20巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2000年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第21巻 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2001年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第22巻 特別長篇 迷路 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2001年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第23巻 特別長篇 炎の色 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2001年。
  • 池波正太郎『鬼平犯科帳』第24巻 特別長篇 誘拐 (文春文庫) 東京:文芸春秋,2001年。

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