『アルバート・ヘリング』はイギリスの誇る作曲家ベンジャミン・ブリテン作曲のオペラでありまして、その全体にかわいらしさの漂う作品は、なかなかに気の利いて楽しく、面白いものに仕上がっています。オペラというと、なんかゴージャスな宮廷風恋愛みたいのを、こってりと表現したものみたいに思ってらっしゃる方もいらっしゃるかわかりませんが、この作品はそんな感じじゃなくて、やはりそれは二十世紀という時代の作品であるからでしょう。
『アルバート・ヘリング』がどういうお話であるか、ちょいと説明いたしましょう。
舞台はイギリスのとある小さな町ロックスフォード。イギリスでは五月一日に五月祭なんてのを催しますが、五月祭の主役であるメイ・クィーンにふさわしい娘が見つからなかったものだから、今年はメイ・クィーンならぬメイ・キングにしようという話になって、結果選ばれたのが我らが主役アルバート・ヘリングである、とそういう物語なのです。
アルバートはメイ・キングだなんだといわれたって、結局は娘役なんてまっぴらごめんですから、結局これがきっかけでどたばたになるんですね。そのどたばたの風景も面白いし、清らかな少年が結果自立に向かうというオペラの筋にも実に共感できるもので、面白いし、手軽で手ごろだしで、オペラをみたことがないという人にはこういうものからお勧めしたほうがきっといいと思うんですが、残念ながら世の中はそうなっておらず、仰々しい宮廷風恋愛ばっかり見せられるというのが相場であるようです。
しかし、ある程度予想したことではありますが、『アルバート・ヘリング』の検索結果の実に乏しいこと。DVDの一枚でもあったら儲けもんかなと思ったら、出てきたのはVHSでやんの。よほどのファンというならともかく、普通の音楽愛好家に対訳リブレットみながら原語版を鑑賞しなさいとはさすがにいえないわけでして、それが一般のあまりクラシックを聴きつけないような人ともなればなおさら。映像がなければこの手の作品は面白みに欠けるから、日本では今これを満足に楽しむことは難しいといわざるを得ないでしょうね。
CDやビデオでこの有り様ですから、公演なんてなるとほとんど皆無といっていいくらいのもので、オペラを支える下地が盤石とはいえない日本ですからまあ仕方ないとは思いますが、いい作品であるだけに残念です。
というか、私ももういっぺん見たいんです。なんかいい方法ないかなあ。
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