私は芳文社のまんがタイムだけではなく、双葉社のまんがタウンも買っているのですが、昨日発売のまんがタウンオリジナル(2005年7月号)掲載の『うちの大家族』にはやられました。なんというんでしょうかね。私はこの人の漫画を読むときは、力を抜いているんですよ。身近によくあるナンセンスを拾い出してきたようなネタといい感じに脱力した作風が重野なおきの味だと私は思っているもんだから、自然そうしたギャグの雰囲気に読む側もあわせるわけです。
そうしたら、やられました。油断しているところにダイレクトにがつーんと、シンプルにまっすぐに打ち込まれたもんだから、真っ向から受けてしまって、いやあどうしようもなく泣いちゃいました、通勤の車内で。
面白み、おかしみだけではなくて、人情もののよさも持ち合わせているのが重野なおきの味だと思います。
私はこの人の漫画は好きで、多分それはどことなく昭和のにおいがするからなんじゃないかと思うんですが、作者は私より若いんですよね(一大事だ)。ともあれ、シンプルでわかりやすく、言葉少なでありながら、状況をよく伝えてくれるこの人の作風は、万人向きでとてもよいと思っています。
ただ、ギャグのセンスは高いと思う。ぱっと見ればナンセンスさがおかしみを誘って、けれどその向こうっ側にはちょっとした皮肉やなんかも隠されていて、そして人情味。この人は人間の臭さを、とてもよく知っている人なのだと思います。
その人間臭さ、人情味が一番にあふれているのが『うちの大家族』。母親に先立たれた、父一人子八人(三男五女)犬一匹の家族の暮らしをよく描いて、こないだいってた『ひまじん』みたいに極端に人の少ない漫画も描けば、人がわんさか出てくるのも描いて、そのどちらも面白いというのはたいしたものだと思います。けれど、おそらくはこの人の得意は、個性的なたくさんのキャラクターがぶつかりあうよな漫画なんだと思います。大家族は、兄妹一人一人の個性の際立ちもさることながら、それぞれが家族ならではの本音でぶつかりあうという、その一人一人の近さが気持ちいい。
私がこの若者に昭和臭さを感じるのは、こうした人の体温の感じられるような、親密な距離感であるのかと思います。そうした絶妙の距離感に安心できるから、私はこの人の漫画を好きになったのだと思います。
さてさて、『うちの大家族』第1巻は2002年12月から2004年5月の一年と六ヶ月分が収録されています。2004年6月から数えれば今月は一年と一ヶ月目でありまして、ということは、今月私に打撃を加えた話は第2巻に収録される!?
第1巻も笑いあり涙あり、最後に収録されたものなどはどうしようもなく泣かされて、ええっと、まあ今月の話は2巻の最後に収録されるんじゃないかなあ。
変な小細工なしに、真っ向からの直球勝負は重野なおきのいいところだと思います。まじめな人柄が伝わってくるようで、非常に高感度が高いのです。
蛇足
私はキリカ・智佐ペアが大好きだ。
- 重野なおき『うちの大家族』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2004年。
- 以下続刊
7月12日発売
- 重野なおき『うちの大家族』第2巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2005年。
0 件のコメント:
コメントを投稿