『まんがタイムきららMAX』2012年5月号、発売されました。表紙は『かなめも』ですね。前面にかなと代理、奥には仕事をする面々です。こちらに背をかがめて視線を合わせてくれてるかな、ちょっと見下ろし気味の代理。ということは、画面の手前には犬かなにかがいるのかも知れませんね。普段、ちょっと見ることのなさそうな、見下ろされるというこういう絵、いいなあ、そう思ったのですね。
『ご注文はうさぎですか?』は、また素晴しいですね。もうすぐ父の日、というのでリゼがバイトを増やすというんですが、そのバイト先が千夜の店、シャロの店だっていうんですね。しかし、そもそもバイトを増やしてまで父にプレゼントを、というその前提から仕掛けてあって、なるほど今回はリゼさんフィーチャー回であるわけですね。誤解されがちなリゼ。軍人とか姉御とか、ハードなイメージがつきまとうリゼですが、虫(婉曲表現)が苦手で可愛いものが大好きで、ほんとフルール ・ド・ラパンの制服を着て感激してるところなど、素晴しいですね。しかし、今回は皆がリゼをどんな風に見ているかと、リゼの実際、それがうまく対比されて面白く、そしてリゼが甘兎とフルール ・ド・ラパンをめぐることで、それぞれの店の雰囲気、特色もよくわかる。あらためて基本的なところを知ることができた、そんな感じがとてもよかったです。そうした舞台となる場所、そして登場人物のことをあらためて知ることのできた、それもよいのですが、リゼのはたしている役割、それをまたより意識することができたようにも思っています。千夜のいう、連続でつっこまれる快感、それですよ。振りがあって、受けられる。そのスパンを短くとって、テンポのよさと密度の高さを作り出す。そのぐいぐい推進する速度、力感は、まさにリゼに起因してたんだと実感させられました。21ページなんかはその見本といえるかも知れません。最初は2コマ単位で振り受けのまとまりをつけて、次は1コマに振り受けを凝集させて、素晴しい。で、その振り受けを全部まとめて、4コマの構成に落とし込んでるんですね。もうほんと、展開部において調を移りながらドミナント、トニックが次々交代していく、そんな快感を思わせる見せ方、そして最後にはしっかりとした結尾、解決があるというんですから、いやほんと、見事だと思います。いや、本当はもっとジレンマ構成型とか、器なら何でもとか、そういう、とりわけ面白かったのに言及したかったのですが、長くなるのでこのへんで切り上げます
『LSD — ろんぐすろーでぃすんたんす』、これもまた素晴しいですね。今回は安食先輩、ゆっこ、浅見さんは学校お休みして新人戦、椿は普通に登校、というわけでいつもとはちょっと違う面々とのやりとりが見られます。しかし、新人戦の様子、ゆっこのほんた陸上って楽じゃないよな…!
ああ、この言葉。ゆっこの表情、それもありますが、加えてこれまで描かれてきた練習練習の日々、それがしっかり効いているよな。そう感じせて、実にいい緊張感が出ています。対して椿はというと、今日から皆と同じ練習メニュー、1000mを4分で走って、400mをジョグというインターバルトレーニング、って、ええーっ、インターバルって休むんじゃないのか、あれか? 積極的休息ってやつ? しかし1キロ4分とかすごいな。実際、ストップウォッチ確認しながら走る椿、なかなか達成できず、次こそ目標タイムをと頑張るんですが、その奮起が他の部員にも影響して、負けたくない…!!
ああ、すごくいいですね。頑張りの伝染。決して楽ではないトレーニングだけど、ライバルがいるから頑張れる。そうしたことがしみじみと感じられる回でした。そして新人戦の結果、ああ、浅見さんは勝ち進んだけど、ゆっこは駄目だったのか……。安食先輩に言葉を受けて、また頑張ろうと気持ちを新たにするゆっこ。ほんと、いいですね。ほんと、見事な部活漫画、スポーツ漫画だ、そう思います。
『アキタランド・ゴシック』は夢の話ですね。というわけで扉にはドリームキャッチャーあしらわれて、なんだか幻想的な雰囲気のある導入でありますよ。いや、幻想的な雰囲気はいつだってか。なにか名状しがたき幻想が濃く満ちている、そんなアキタランドですが、今回はその点、アキタちゃんの見た夢の話、いつもよりわりとまともっぽいぞ、そう思ってたら、大落ち! いつもどおりというか、ある種、いつも以上な感触、さすがでした。あの不安を次々重ねていくといった終わり方、にやりとさせる、そんな感触と、若干すっきりしない読後感を残すという、これもある意味いつもどおりですが、そんな感触を合わせもって、実に味わい深い。ほんと、いい感じです。
『こずみっしょん!』、しびれるなあ。臣美は宇宙からきた観察員、っていうんですが、自販機の下をのぞき、ゴミ箱をあさり、鈴子に心配される……。宇宙からなにかが降下した形跡があるから、それを探しているっていうんですね。しかし、面白いの、万能銃についての鈴子のコメント、それに対する臣美の答でしょう。なるほど、修理してたんだ! 勝手に直ってるもんだと思い込んでた! 電話のくだりも面白い。鈴子はぼっちっぷり、というかそんなに卑屈にならんでも! で、貰った通信機で臣美と連絡とってるところ目撃されて、同じクラスの子らに勘違いされるって、もう、これは最高だと思う。鈴子がいい顔してる分、面白さも際立つ、そんな印象です。で、問題の外来生物は部長が確保。って、あれ、犬と認識するんだ……。で、ハナがそれとなく臣美に危険を確認する。いや、もう、微妙にして絶妙なやりとり、もう最高です。ところで可愛いといわれて照れる臣美、ああ素晴しい。見事D☆Vでありました。
『すずめプロジェクト』、ゲストです。アイドルグループ、ちゅんちゅんシスターズの活動を描いた漫画ですね。桃子、つばさ、カンナの三人組です。センターはカンナ? いや、アイドルには詳しくないので、知ってるふりしただけです、すみません。桃子は歌が下手で、それが原因で3歳からひとりでお風呂、アイドルになっても歌わない仕事ばっかりで、でレッスンさぼってるって厳しいプロデューサーにしかられる。テンポとか見せ方がいいですね。あの鞭の、って鞭!? 鞭の動きが絵的にも面白くて、いい感じでした。アイドルとしては不適格? 歌も下手だし、握手会での時間配分、注意されてたのに守れないとか、そんな桃子だけど、しかたないなあと見守りたくなる、そんなよさを持っているっていうんですね。実際読んで、糠味噌額に塗られるのはショックだなあ! とか思いましたけど、電車乗れなくなったし! でも、うまいこと転がっていったらよくなりそうなお嬢さんだ、みたいに思いました。
- 『まんがタイムきららMAX』第9巻第5号(2012年5月号)
引用
- ほた。「LSD — ろんぐすろーでぃすんたんす」,『まんがタイムきららMAX』第9巻第5号(2012年5月号),31頁。
- 同前,33頁。
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