『ご注文はうさぎですか?』、最初の印象は、きれいな絵の漫画だなあ、というものでしたっけ。繊細な絵、背景に雰囲気感じさせて、異国風の街並み。そこに暮らす綺麗で可愛い女の子たち。世界がよく作られていて、すごく魅力的、そう思っていたのが懐かしい。いえ、そうした魅力は変わってないんですよ。それどころか、より一層に魅力を増して、あの扉絵の力、イラストレーションの魅力などものすごい。構図構成、しっかりとして、とても魅せる、そんな扉はそれ単体でも成立するような存在感を持っていて、加えてこれから語られるお話、その内容を予感させるものにもなっている。ええ、私は最初、一枚絵に見える構成の力、それに感心したのですが、その力はエピソードのシーケンス、そこにもしっかり見て取ることができるのです。
絵に、展開に構成の魅力が光ってる。それこそ、この漫画を違うタッチ、違うキャラクターに置き換えても、きちんと通じる面白さがあるんじゃないか、そう思わせるくらいに骨組がきっちり作られていて、これはよっぽどの練り上げがなされてるんじゃないか、みたいなこと感じさせるのです。ひとつのテーマにそって話が膨らんでいく。振りがあって、それが受けられる。そうしたつながりがひとつひとつ丁寧に組み上げられていて、短いスパンで成立するものがあれば、長く、それこそエピソードの発端となり、また締めくくりにもなるようなものもあって、こうした多様なつながりが構造としての物語を編み上げ、しなやかに支えるのです。ひとつの発想、ひとつのきっかけが起点となって、展開し、そして発端を受けて閉じる結尾。さながら音楽のようだな、理想的に描かれた回など、そのように思わせるものがあるのですね。
しなやかな構成を基礎として、キャラクターの魅力、その個性や持ちネタといえるような定番ネタ、そして可愛さ、綺麗さが表現される。言葉のはしばしに情感が読み取れる。絵によって伝えられる、確かな実感がある。理性的に受け取ることのできる面白さに、感性に訴える面白さが上乗せされてくるというのですね。思えば、当初私はこの魅力にばかり目が向いていたのでした。綺麗だな。可愛いな。台詞に、絵に、これいいな、面白いなと思う。そういう読み方をしていたものでしたが、おそらくは漫画もこなれていったのだと思います、そして私も後からそうしたもうひとつの魅力に追い付いていったのだと思います。大変に素晴しい、そう思わされること、非常に多い。今、単行本で読み返してみれば、その感触、冒頭にすでにきざしていて、ああこの漫画は成るべくして成ったのだ、そういう思いを新たにする機会となりました。
『ご注文はうさぎですか?』の第1巻は、ひとつのスタイルが確立される、その過程が詰まった一冊でもあります。挑戦的な扉絵は時に型破りで、他にないものを見せてくれる、そんな思いにわくわくさせられます。それは、まとめあげようとする意欲、キーとなるイラストレーションであり、テーマであるを用意し、萌え出で多彩に広がろうとする発想の芽吹きを、ひとつの世界のうちに整えようとする試みと感じます。それは毎回のエピソード、そしてカバーをはずしたその下のビジュアル、そこからも感じられて、ああ、この漫画は有機的に統一される存在としての自身を志向している。ええと、つまりは、ココアたちの暮らす世界を大切に育て息づかせよう、そんな心意気が感じられて、素敵です。
余談なのだけれど、雑誌での連載、そこに付されている人物紹介、私、あれがものすごく好きなんです。雑誌にも載るかな? そう思ったらはいってなくて、ああ、もしこの漫画が気に入ったらば、是非読んでいただきたい。そう思います。
- Koi『ご注文はうさぎですか?』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2012年。
- 以下続刊
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