2009年5月12日火曜日

リスランタンプティフルール

 『リスランタンプティフルール』は、『コミックエール!』第1号の誌面を飾った漫画のひとつでした。そう、私が気に入らなかった漫画、つまらないと思った漫画がないといった、そのうちのひとつが『リスランタンプティフルール』であったのですね。実際、いいなと思った漫画でした。女子校もの。当時、大はやりしていましたね。外界と切り離されたかのように清浄で、そして古風なしきたりなんぞが残る、そうした学園を描いて、たおやかな少女たちの交流するその様、関係性に憧れなどを抱きましたか? いや、実は私、はやってたのは知ってるんですけど、ブームにはのっとらんのです。でも、それでも漫画をいろいろ読んでれば、知らず知らずのうちにそうしたものにも触れるわけで、『リスランタンプティフルール』もそうして触れたもののひとつでありました。

『リスランタンプティフルール』は、第1号の気にいった漫画群においても、なお一層にいいと思った漫画でありました。ですが、それは女学校ものであるからというよりも、その描かれた世界から感じとれる表情がよかったのだと思っています。繊細というより神経質、ナーバスと表現したいような表情、少々気鬱な色もないではない。でも、そうした表情が好きなものだから、この漫画はよかった。晴れた日であっても、どこか霞みのかかったような、そうした風景の持つ美しさだと思います。あるいは、澄みわたる空の高さに悲しくなってしまうといったような、けれど憂えるなかに愛おしいと思える感情もあり続けているというような、悲しいから美しいのか、美しいから悲しいのか、そういった風情があるなと思ったものです。

都野ナンナの通うお花のお庭の学園のならわしは、お花のお庭、リスガーデンに咲く花を、選ばれた学生たちがお世話するというものでした。選ばれた彼女らはリスランタンと呼ばれ、また自分の世話する花の名前をもって呼ばれます。ライラックをまかされたナンナなら、プティライラックというように。フランス語と英語がまじってるのが気にならんでもないけど、細かいことはいいのよ。プティは英語でも使うしさ。それより、選ばれた存在であるリスランタンたちは学園における憧れの的であり、それはリスランタン同士でも同様で、そしてまた同時に嫉妬を向けられることもあります。そうした感情の交差するところに生じるドラマが大変によいと思ったのです。

嫌われれば落ち込む、自信をなくすことだってあります。けれど、それが誤解だとわかって、あるいはそうした負の感情も受け入れたうえで乗り越えていける強さを身につけて、そしてふたたび笑えるようになってという、感情の浮き沈みの描かれる、それがこの漫画のよさでした。神経質、ナーバスといったのは、あまりに彼女らが敏感に反応してしまうからで、けれどだからこそ一喜一憂する感情の波立ちは鮮やかと感じられました。読んでいる私の感情にも触れるがように思われたのですね。私に冷たくした先輩の真実、そこには嫌いという感情なんて露ほどもなく、むしろあったのは好意だった。そうした、感じやすい少女たちの胸中に揺れ動く感情がとても魅力的、すごくいいなと感じられる本であるのでした。

引用

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