2009年5月14日木曜日

論理少女

 この漫画の存在に気付いたのは、第2巻が発売されて、平積みになっているのを見たからでした。だから、今からふた月ほど前のこととなりますか。平積みにされているだけでなく、ポップも用意されていて、そこにはどことなくとろくさそうな眼鏡女子が! でも、買わなかったよ。ヒロインが眼鏡ってだけで、買うなんてありえないよな! その店で買えばペーパーもついてきたんだけど、それでも買わなかったんだ。しかし、その後別の書店でサイン入り第2巻を発見。おおお、これは買うべきか? と思ったけど、踏み止まった。すごく単純な理由。手持ちがなかったのです。だから、ちょっとした賭けをしたのでした。次、その書店に『コミックエール!』を買いにきたときに、サイン入りの2巻が残っていたら買う、残っていなかったら金輪際あきらめる。そして私は、賭けに負けたのでした。そう、サイン入りの2巻が、1冊だけ、残っていたのでした。

買って、そして気になる第1話の続きを確認して、いやね、私の買った店では第1巻の第1話、途中まで試し読みできるようにしてましてね、で、若野君のルービックキューブ対決の結果が出るという直前でストップ。おーまい! とは思ったけど、あの結論は私でもわかりました。多分小手調べってことなのでしょう。

『論理少女』は、論理少女と呼ばれる芝いつき、眼鏡の彼女のふたつ名こそがタイトルとなっていますが、主役は彼女ではありません。主役は、津隠中学校に転校してきた少年、若野祐。どことなくぱっとしない彼は、ここ津隠市ではやっている津隠問答にやられてしまう。その場その場で、即興で問題を出し合うという遊びにまきこまれて、賭け金ふんだくられて、しかしそうした状況を黙って見ている芝いつきではなかった。彼女は生徒会長としての威信をかけて、津隠問答を悪用する連中を成敗する。彼女の武器は論理。設定された条件を頼りに答を導くだけでなく、出題の隙をついて状況を有利に運ぶ、規定されていなければインチキだってオッケーという、津隠問答独特のルールを盾に、連戦連勝を続けるいつきの魅力にまいりながら読むのがよい漫画であります。

いや、けど、実際、若野君は読者の代理人なんだと思います。シャーロック・ホームズにとってのワトソン君といったらいいでしょうか、彼の凡庸さがあるからこそ、ホームズ、じゃないや、いつきの論理の冴えは光り、またその解説も得られるわけです。論理に自信がある読者なら、いつきによる解決がなる前に、自力でチャレンジするのも一興でありましょうが、私は論理はからきしなので、もう完全にいつき頼りです。で、そのいつきが、なんでそんなに? といぶかしく思ってしまうほどに、若野のことを気にいっている模様で、あれこれと使役する。それはもう夢のようなのではなくって? いつきいわく、若野はそのカンのよさを認められている、という話ですから、主人公がまったくの足手まといになっていないというのはよいところかと思います。ピンチがある。え? いつき、負けちゃうの? そう思わせて、しっかりピンチを切り抜ける。そうした時に、若野のちょっとした気付きであるとかが役立ったりするんですね。ちくしょう、いいポジションだと思います。

さっき、悪人を成敗する、だなんていってましたが、それだけでなく、いつき以外にもいる天才少女たち、彼女らがライバルとしてかかわってくるところも面白く、第2巻はいつき対7人天才少女、頂上決定戦の様相を見せています。こうした美少女もりだくさんという外連味も面白いなと思ったりなんかして、まあ、ちょっとやりすぎと思わないでもないけど、それで若野がちょっともてちゃったりしてね、で、いつきがちょっとふくれたりしましてね、なんだそりゃ、なんて思わないでもないけど、でもわりかしいい感じに話は動いていきます。論理ゲームばかりじゃうるおいがないでしょう。私はそもそもパズルとか、頭使うのが面倒くさくてやってられないたちなので、だから論理ゲームをベースに置いて、そこに美少女満載、ライバルとの対決、そして勧善懲悪といった味付けがほどこされて、それで楽しく読めるといった風になっているのです。

しかし、この論理ゲームですが、こういう問題を作るのは大変だろうなと思います。複数解の扱いとかね、許可されるケースもあるけど、条件によっては不可となっていることもあって、しかし通した答に別解があったらどうなる? で、論理に長けた人ってそういうの見付けちゃうもんなんだ。だから、問題作る人は大変だろうなって思うんですね。あんまりに無理無茶強引にならず、けれどありきたりな、いやどうしても完全オリジナルみたいにはいかないだろうとは思いますが、けれどある程度論理ゲームやパズルに興味感心のある人に、なかなかやるじゃんと思わせるような冴えた問題を用意していかないといけない。このあたりは、推理ものと同じような難しさを抱えているように思います。

でも、私はさっきからいっているように、論理とか理屈とかからっきしだから、問題に不備があっても気付きません。で、その場で指摘されなければ、通るのが津隠問答のルールでありましょうから、だから私はきっと津隠市では生きていかれません。それはそうと、芝いつきが1位でスーパーヒロインというのはかまいませんが、というか当然そうであるべきだと思いますが、ミーナ・センが6位というのはちょっと解せません。まあ、単に好みの問題で、ちっとも裏に論理があるなんてことはないんですが……。まあそうしたことはさておいても、優秀な女性が好きだという私には実に向いた漫画であることは間違いなくて、いやもう、芝いつきは最高です。

  • つじ要『論理少女』第1巻 (シリウスコミックス) 東京:講談社,2008年。
  • つじ要『論理少女』第2巻 (シリウスコミックス) 東京:講談社,2009年。
  • 以下続刊

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