『32GIRL』を買いました。『32GIRL』は、『サーティーガール』のヒロイン、リリコさんの婚家である湯神家の長女加奈子をヒロインとする同人誌であります。描いた人は、原作がカワイシンゴ、漫画が岩崎つばさ、って、オリジナルメンバーじゃないですか! これは買わなくっちゃだわ、というわけで購入しました。同人誌即売会は、ちょっと遠くていかれなかったので、とらのあなの通販にお願いしまして、よかった、なんとか売り切れるまえに入手することがかないました。しかし、本当にありがたいことですよ。自宅にいながらに情報は入手できるし、注文もできるし、いい時代だなあって思います。そしてもうひとつありがたいこと。それは、湯神加奈子の活躍をこうしてまとめて読める機会が得られたという、そのことでありましょう。
湯神加奈子の活躍が読めて嬉しいというのは、そりゃもう、私は加奈さん大好きですから。しかし、初めて出会った時には、お姉さんと呼んでおかしくないような歳であったこの人が、気付けば私より年下になっているっていう、なんだろう、この理不尽。いいなあ、漫画の登場人物は年をとらなくて……。こういう馬鹿なこといってる自分が一番理不尽であるということは、自分でもよくわかっているので、そっとしておいてください。
湯神加奈子のなにがいいのか。長身で美人だからか? 32歳の若さで課長に昇進したという、その有能さがよいのか? うん、それらもいい。否定しない。だけれども、この人のよさは、職場においては表に出さない純情であるところ、なのだと思っています。ちょっと甘えんぼう? 寂しがりや? それでものすごくおしゃべり。『30GIRL』では、暴走する義妹リリコがとにかく目立ちまくるので、一歩後ろに退いているって感じ、はしないけど、そんな加奈さんが主役として活躍するってんだから、こりゃ読まないわけにはいきません。
『32GIRL』は、『30GIRL』がそうであるように、四コマの連続でショートエピソードを描くタイプの漫画です。ちょっとした事件があって、そしてそれを解決する、その顛末がとにかく爽快で面白い。そんな『32GIRL』第壱話は、加奈子が思い人、秀島治久の働く花屋に押し掛けて無給でバイトしているときに持ち込まれた案件、花を届けてほしいというところからはじまって、けどここから先はネタバレになるから書きません。だから感想だけをぽつぽつと。
リリコに負けず劣らず暴走する加奈子、その様子はやっぱり爽快でした。やってることは、かなり過激で強引で無茶なんだけれど、そうした暴走の原動力、その行動の根っこには、持ち前のおせっかいがあって、これはもう人情ものといってもいいのかも知れませんね。要求されたこと以上のことをやってしまう。それはたしかに勝手な親切心、余計なことだったのかも知れないけれど、でもそれでも、本当にその人たちに必要だったことをやってのけて、いい話でした。無茶な行動ははらはらとさせてスリリング、とても面白くて、そしてその後にじんと心に沁みるシーンが、言葉が、気持ちがやってくる。ああ、加奈子さんはいい人だなあ。友人への好意がにじみ出るようだ。そんな風に思う。けど、いい人なのは加奈子さんだけじゃなくて、あの町内の人みんなだ。今回、『32GIRL』では、そのうちのひとり、加奈子さんにスポットライトが当てられたのだ。そして、スポットライトを当てられたその人は、いわば縁の下の力持ち、狂言回しとして働いて、見せ場には別の人たちのエピソードが光っています。この、活躍のはてに主役が一歩退いて見せ場を譲るという構図、『30GIRL』にもそういうところがあるのですけど、そうしたところがとてもよいなあ。でしゃばってるように見えるんだけど、肝心要ではすっと身をひいて奥床しい。なんだか、かっこいいね、とってもエレガントだ、そう思うんですね。
メインの話は32GIRL。そしておまけに32-15GIRLが描かれて、そちらは本当に小エピソード。けれど、その小さな物語もほほえましくて、日常におこるささやかな事件。最後にはちょっとした事故になってましたけど、そうした事件を通して気付くことがある。そうした情景が、はっとさせるような印象を残して、素敵でした。
あと、これはネタバレ。フライングVは女の子に似合うギターの筆頭格だと思っています。けど、間近に見ると意外とごつくて、びっくりするギターでもあります。ちょっと欲しいギターではあるんだけど、そんなにギターばかり増やしてもしかたがないので、我慢しています。って、欲しいものいっぱいだな。
今、『32GIRL』は品切れしてるみたいだけど、願わくば補充されて、欲しいと思う人の手に渡ればよいなあ。そのように思っています。それが本にも読者にも作者にも、一番いいことだと思うから、そのようになったらいいなと思っています。
- 岩崎つばさ,カワイシンゴ『32GIRL』32GIRL,2009年。
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