2006年10月29日日曜日

○本の住人

 はじめてみたときからなんだかよくわからない漫画でした。なにしろ、タイトルの正しい読み方もわからなかったくらいで、最近になってまるほんのじゅうにんでいいということが確認されたのですが、このいろいろとよくわからない、ナンセンス色の強い漫画がとにかく面白いのですから、私の趣味というのも微妙によくわからないなと思います。主人公は兄ひとり妹ひとりでけなげに日々を暮らす気苦労の絶えない小学生のりこ。彼女のまわりにいる人でまともなのといえば、友人のみかちゃんくらい。後はみんなどこか変で、そんな中で一二を争う変が兄と友人ちーちゃんなんじゃないかなと思います。

けど、ちーちゃんはすごいよ。話す内容支離滅裂、行動にしても限度知らずの乱暴狼藉系で、ナチュラルに普通じゃないちーちゃんの行動言動を毎回毎回ハイテンションに打ち出してくる作者の発想が本当にすごいと思います。このすごさはちーちゃんだけではなく、兄の言動行動にも現れていて、この兄というのが絵本作家なんですが、極めて内容意味不明な絵本を書いている、その意味不明絵本を本編にもちらほらと出してきて、いやあ、本当に意味不明。けど、その意味不明がただ意味不明なんじゃなくて、読んでいて面白いのがすごいのです。この意味不明さというのはもしかしたら『あずまんが大王』に見られたシュール系ネタの延長線上に位置する意味不明さなのかも知れません。だから、『あずまんが大王』のシュールが面白いと思った人(「脳が!」とかですね)には手放しでお勧めできるんじゃないかと思います。ああいう起承転結がはっきりしてないのは嫌いという人は読まないほうがいいと思います。

さっきから意味不明、意味不明と連呼していますが、頭から最後まで意味不明の連続なのかといえば、決してそういうわけではないのです。毎回、緩いストーリーが作られていて、そこにちーちゃんや兄の意味不明なネタがちりばめられるという、そういう構成です。もちろん、意味のわかるネタというのもありまして、それは兄やクラスメイト男子を中心としたおたくの生態、行動原則を扱ったものが多く、萌え追求主義とでもいうのかなあ、傍目には迷惑で、あるいは理解しにくいようなもの。そうしたものと日常とのギャップでもって面白がらせるようなパターンができあがってるのですが、だからそういうおたくっぽいもの、 — 行動や言動に嫌悪を抱くような人にはちょっとお薦めできない漫画じゃないかと思います。

でも、そうした要因がマイナスにならないというような人には、きっと面白い漫画であると思います。とりわけナンセンスなものが苦にならない、むしろ好きというような人には、それは私自身にほかならないんですが、絶対読んで損しないタイプの漫画であると思っています。ストーリーもいい、ナンセンスネタもよければ、コマの端々に見えるサブカル系小ネタも面白くて、ただこうした小ネタはちょっと対象年齢層高目なんじゃないかなという気もするので、そうした層にすっぽりと含まれてる私はなおさら面白い。いい循環にはまっていると思います。

  • kashmir『○本の住人』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

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