なんか、いつもは読まないタイプの漫画を読みたくなりまして、その時たまたま目にしたのが『コックリさんが通る』。作者も知らなければもちろん漫画についても知らなかったのですが、なんかひかれるところがありまして、タイトルかな? あるいは表紙の娘さんが気になったのかも知れません。とりあえず手に取ってみて、シュリンクされてなかったので中身を拝見、ぱらぱらと読み進んでみて、わりと悪くないかもと思って購入したのでした。
実をいいますと、私は結構オカルトものの漫画が好きなんです。『地獄先生ぬーべー』も最初の方は読んでたし、『霊感商法株式会社』なんかも読んでいまして、だからこの漫画にひかれたというのもそれほど不思議ではなかったのかも知れません。
1巻を読んでみての感想。意外とこの漫画、古いんですね。読みはじめた当初は気付かずにいたのですが、途中、緊急の連絡をとるために使われたのが携帯電話ではなくてポケベル。あ、と思いました。そういえば、全体にちょっとずつ一昔前の世相をうかがわせるなにかがあったっけ。テレクラにブルセラショップ。携帯電話も出てこないわけじゃないんだけど、誰もが持ってるわけでないというのがあちこちに読み取れて、十年ほども前の漫画じゃないだろうかと思ったらドンピシャでした。もともとの漫画は1996年の出版。たった十年ですが、その間に通信をめぐる状況は激変したのだとわかります。
この漫画、いうなれば一昔前の漫画であるというわけですが、読んでみれば意外に古さを感じないというのがたいしたものだと思います。半妖が跋扈するという、ある種現実味の薄い内容のためかも知れませんが、でも多分それだけではないでしょう。要因はいくつか挙げることができると思います。この十年、表層こそは目まぐるしく変わったけれど、実質はたいして変わっていなかったからかも知れませんし、この十年、漫画表現が沈滞して、見せかたやらなにやらにいうほどの変化がなかったからかも知れません — 。おそらくそうした要因もあるのかと思いますが、けどこの作者の世界の描き方というのも、古さを感じさせない理由であるのだと思います。独特の癖があり、ちょっとおたくっぽい趣味もあって、割合無理矢理なところもあるのだけど、それをとにかく自分の世界の内に囲い込んでしまっている。その囲い込みかたが嫌いでなければよし、嫌悪感があれば駄目と、そういうタイプの漫画と感じました。
MF文庫の嫌いなところは、初出掲載誌や年が示されないところです。だから、私は最初この漫画は、ハイティーン向けの少女誌あたりに載っていたものだと思って読んでいて、そうしたら掲載誌は『ヤングサンデー』。道理でパンチラや裸が多いわけだ。けれどそれほど青年向けという印象はなくて、私には読みやすかったです。でも、ちょっと不幸になる人 — 、死んだりなんだとか、 — が多いというのはきついかな。それと、作者の自分設定が独りよがり一歩手前という感じなのも人によってはきついかも知れません。丁寧さにも欠けるし。と、欠点がないわけではありませんが、読んでいて面白いし、なによりヒロイン大森狸花子が非常にいい感じだったから、私は非常に満足しています。そんなわけで、来月出るだろう下巻を楽しみにしています。
- 奥瀬サキ『コックリさんが通る』上 (MF文庫) 東京:メディアファクトリー,2006年。
- 奥瀬サキ『コックリさんが通る』下 (MF文庫) 東京:メディアファクトリー,2006年。
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