2006年10月25日水曜日

ありのままに

  私は子供時分、暇があれば本を読んでいるような子供で、もしファミコンという新しい娯楽がこの世に存在していなかったら、きっともっと一杯、たくさんの本を読んで、今よりももっと豊かな読書体験をしていたことかと思います。そんな子供の頃に好きだった本が『クレヨン王国の十二か月』でした。どれくらい好きだったかというと、高校の夏休みの宿題、読書感想文の題材にこれを取り上げたくらい。そう、私は高校の読書感想文を全部児童文学でやっつけたのでした。こんな私ですから、クレヨン王国シリーズがアニメになるというのを知って、『夢のクレヨン王国』もしっかり押さえてみたのですが、残念ながら日曜朝というのは私にとっては深夜と同じですから、最初のひと月くらいしか見られなくて、けどその主題歌のシングルだけは買ってあって、 — したらそれがいい歌なんです。

といっても、もちろん買ってはじめて気付いたとかそんな話じゃないですよ。アニメを見て、主題歌、オープニングとエンディングを聴いて、これだ、これはいい、と思ったから買ったんですが、その後アニメ本編を見られなくなってからも、この歌はやっぱりずっと好きであり続けています。その後、iTunes / iPodに取り込んだので、今でもたまに聴く機会を持つのですが、もともとのアニメや物語という文脈を離れてもやっぱりいい歌なんですね。

『ン・パカ マーチ』も好きなのですが、それ以上に好きなのが、エンディングテーマの『ありのままに』です。ゆったりとしたテンポに清浄な雰囲気の漂う佳曲で、女性の歌うメロディに児童合唱団がかぶさってくるところなんかは、涙が出るかと思うくらいに美しい。空へ、天へと志向するかのような旋律の上昇感は、私たちがもっとも美しいものを見たときに心に兆すような、一種敬虔な思いを呼び起こしてくれます。そしてその詩の持つ豊かな世界、暖かく深いメッセージがメロディ、ハーモニーに渾然として、私を包み込むようにしてあたりいっぱいにあふれ返って、ああいい歌だ。すごくいい歌なのです。

このアニメの本来の対象である子供たちがこの歌を聴いて、この歌、福永令三の詩に触れて、そのあたたかさ、この地上には命がありそのすべてが生きているということの素晴らしさを称揚しようというその思いを感じ取ってくれるとしたら、それはどんなにかよいことだろうと思います。

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