なんかこれがはじまったとき、妙な雰囲気の漫画だなあと思って、けど割合嫌いな感じじゃなかったので本式の連載が決まったときにはちょっと嬉しく思ったのを覚えています。なんてことはない漫画かも知れません。悩みのある人が公園のベンチにやってきて、天使に助けを請うというお話。この漫画の肝はといえば、その天使が筋肉質のおっさんということで、ほら天使といえば美形のなんて印象がありますよね。その先入観を逆手にとった出落ち系の笑いが変に気取ってなくて面白くて、そのきどらなさは全編漂ってるから、ほんまにこの人はやる気あるんだかないんだか、って感じでなんか苦笑系。楽屋落ちも多いし、しかも自分で楽屋落ちっていってるし。でもそういう真面目なんだか不真面目なんだかわからない脱力感の傍らで、内容は結構しっかりと真面目だったりするから、そのギャップが私には受けたのかも知れません。ええ、こういうつかみどころのないように見せてる漫画、割りと好きなんです。
それでも最初の方はずいぶんぎらぎらしてたんですね。はじめて読んだときにはそんな風になんてちっとも思わなかったのに、単行本で読み返してみると、最初はやけに力入ってたんだなあって感じて、つまり後期はもうずいぶんと枯れてしまってたということなんかも知れません。でも私はこの変に枯れたっぽい感じが好きで、渋面したじいさんがぼそぼそとおかしなこといってるような味わいがあって、それこそ本気なんだか嘘なんだかわからない面白さ。そうかと思えばいいこといってたりという、ほんま、作者はじいさんかというような枯淡の味わいがそこはかとしているのがおかしいんです。でも、表現のあちこちには若さがあるし、漫画の表現としても若いし、ネタもそんな感じだから、この作者は決してじいさんなんかじゃないし枯れてなんかもいない。なのに味わいは変にすすけた感じなの。そうやね。年齢不詳っぽいんだ。あと、バックグラウンドも不詳っぽい。こういう正体不明な感じが実にいいなと思います。
ただ物語性とか意外性を求めたりしたらあかんと思います。物語はあってなきが如しだし、展開もよくあるパターンを踏襲しているという感じで、こういうところにも覇気のなさが感じられるんじゃないかと思うのですが、だからこういう感じの漫画を読んで、なんじゃこりゃ、やる気あんのか! と怒るような人には絶対お薦めできない漫画です。けど、盛り上がらん感じ、落ちてるんだか落ちてないんだかわからん感じ、こういうローテンションが好きという人にはきっといい漫画だと思うんです。山なし落ちなしで、けどなんか意味みたいのはあるっぽいよねー、でもあんまり考えてもしかたないよねー。そんな感じ。気を張らないで読める。気を張らないから、なんか伝わってくるものもあるように思う。その妙な、一種馴れ合いじみた共感性みたいなものが私には向いていた。だから好き。人には積極的には勧めないけど、好き。そんな感じなのです。
- 水上悟志『エンジェルお悩み相談所』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
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