野々原ちきは私の好きな漫画家のひとりで、そのやわらかにはなやいだ描線が紡ぎだす可愛らしく美しいキャラクター群も魅力であれば、そのキャラクターでもってこれを? というような黒いネタを展開する意外性もやはりまた魅力で、どうにも目の離せない感じです。既刊は『姉妹の方程式』。私は『姉妹の方程式』を読んで、そしてこの度『そらのひとひら』を通読してみて感じたのですが、どうやらこの人は黒いネタを追求するほどに面白さを増すのではないか。いや、単純に黒いといってもブラックユーモアみたいなことをさしているのではなくて、もっとなんか、屈折した感情とそのもつれみたいなものを描き出すのが大変にうまいと思うのです。
『姉妹の方程式』でも感じていた感情のもつれっぷりの面白さですが、それは『そらのひとひら』において充分に展開されて、私は途中の回を何度か読んだことはあったけれど、その時には感じなかったもつれが最初から読むともう見事に見えてきて、主要キャラクターの感情のすれ違い、近づくに思わせて近づけさせず、逆に遠ざけることもまたないという絶妙の距離感は面白い。主人公はまれに見るネガティブさでもって、けれどそのうじうじとしたキャラクターが悪くなく、私は彼を愛せると思います。そう思えるのは少年を描写する筆の確かさで、彼のトラウマとなった出来事(そしてそれはいずれ誤解とわかるのでしょうか)や過去を追想し今に戸惑う大隅くんの心をしっとりと大切に扱って、まあその丁寧に描き出されたぶん、かわいそうさはいや増すのではありますが!
野々原さんは人の心の機微を扱うのに長けていらっしゃるのかと思われます。そうっとすくい取られて絶妙のタッチで描き出されるそれは、思わず笑みのこぼれ胸に暖かみをともさせるようなよい話に持っていくこともできれば、残酷にも相をずらすことで泣き笑いのおかしさを生み出すこともできて、だからきっとこれからもおかしかったり嬉しかったりする素敵な世界を提示してくれるだろうという予感がするのです。
野々原ちきは私の一押しです。読んでみればわかる。読めばわかっていただけることと思います。
蛇足
笑顔の春賀さん、眼鏡の春賀さんも最高なのではありますが、とりあえず今は児玉ちゃんに夢中です。い、いや、普通にめちゃくちゃ可愛いですじょ?
- 野々原ちき『そらのひとひら』第1巻 (ガンガンWINGコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2006年。
- 以下続刊


私は中学高校と吹奏楽部に所属していたので、なんかイベントがあるとそれに応じた曲を演奏するということになって、ほら、入学式とか体育会とか卒業式とか、そういう式典ではとにかく演奏をしていたものでした。で、中学のこととなるともうほとんどなにをやったかなんて覚えていないのですが、ところが卒業式に演奏したものは覚えています。卒業式用に編曲されたメドレーで、ミュージックエイトだったと記憶しています。そしてその曲目に斉藤由貴の『卒業』が含まれていた。ええ、はっきり覚えています。
私くらいの年代だともう合言葉のようだと思うのです。
いよいよ卒業が間近に見えるようになって、これまで級友と一緒に過ごした時間が終わり、慣れ親しんだ学校ともお別れ。私はね、ここにちょっと告白しますとね、これまで卒業式に泣いたことなど一度もなくて、けれどそれは学校を出ることにさばさばとしていたということではないんです。私の学校生活の拠点は音楽室で図書室で、卒業式を終えて、それら思い出深い場所にいってそっとお別れをしてきた。だって、友達とはまた会えるでしょう? だから彼らと別れることはそれほど悲しむべきこととは思えなくて、けれど実際高校時分の友人で今も親交があるのといえば二人しかいないんじゃないだろか。仲のよかったのは他にもいたろうに、あいつらは今いったいどうしてるんだろうなんてふと思うことがまれにあります。
森高千里の『勉強の歌』はテレビアニメ『
次の週末に人類は滅亡だ。『終末の過ごし方』はいきなりそんな極限状態からスタートして、公約通りといいますか、その一週間が過ぎれば世界は終末を迎えておしまい。そんな状況だというの主人公たちは日常を淡々と平時同様に送っていて、いざ世界が滅びます、逃げられませんよ、なんてことになれば実際でもこんな感じなのかなと思ったりもする。そういう妙な感覚が妙に心地よく感じられるゲームで、結構この雰囲気が好きだという人は多いみたいなのですね。もちろん私も嫌いじゃない。絵のはかなげで優しい雰囲気、音楽の繊細さも加わって、悲劇的なはずが悲劇とは感じられず、そうですね、穏やかなのです。残された時間をどう過ごしたらいいんだろうかとぎりぎりまで迷いながら、でもあくせくもせず淡々と。私の人生の最期はこんなだったらいいなと思ったりしたのは秘密です。




学生時代を懐古してみるに、あれは確か高校三年の頃だったと思います。テレビで『
以前いっていた
来るべき卒業シーズンに向けて、ちょっと卒業にまつわるものを取り上げてみました。気が早い? いや、一月は往ぬる、二月は逃げると古来から申します。あと十日なんてあっという間ですよ。ええ、楽しい時間は矢のごとくに飛び去っていくものじゃないですか。
ああ、やっぱり『
故人の消息を聞くというのは寂しくもあり、悲しくもあり。ですが、忙中閑ありともいうがごとく、寂しさ悲しさの中にも嬉しいと感じる思いもあるものなのですね。以前、何度かこのBlog上でもお話した私の好きな漫画家についてを人づてに知ることができて、今私はそうした、嬉しさをわずかに含んだ悲しさに沈んでいます。私の気性、情緒不安もあるのだと思うのですが、突然涙が出てたまりませんでした。お会いしたこともない方で、ですがディテールが積み重なることで、悲しさはここまで深まるのだと思って、けれどいつまでも悲しがるというのも逆に失礼なのではないかと考え、さいなまれます。
『まんがタイムジャンボ』で連載されている真田ぽーりんの
私が四コマ漫画について書くときは、大抵芳文社のコミックス発売日にだったりするわけで、そんなわけでこの人は芳文社のファンなんだなというと、実は双葉社のファンであったりもします。芳文社から出ている四コマ誌は『まんがタイム』の名が冠されていて(ホームというのもありますが)、双葉社はというと『まんがタウン』です。『まんがタウン』に連載されている漫画は、あまり派手さがないオーソドックスな四コマが中心で、そんなタウンの連載で私が結構気に入っているのが富永ゆかりです。
またというかなんというか、『
以前私は『ときめきメモリアルONLINE』を評して
昔、テレビアニメと少女誌掲載漫画の蜜月といえるような時期がありまして、『
多分、学生時分っていうのは、なんでもできそうなことに挑戦してみて、とにかく試してみる期間なんじゃないかと思うんですね。と、なんでいきなりこんなこというかというと、私は学生時代を多分あんまり正しくないやり方で過ごしてしまって、高校までは、クラブに出たのはまだよいとしても、あとはもう本読んで終わったようなもので、大学となると、授業に出て、レポート書いて、テスト受けて、練習して、もうそれだけだったような気がするんです。学生時分にしかできないということは確かにあるのですが、私はそのほとんどをやらないままに終わってしまって、特に大学がそう。勉強だけして終わっちゃったな、本当にそんな感じなのです。
最近、ちょっと『スカボロー・フェア』について調べていまして、というのもこの曲はいつか歌ってみたいなあと、そういう理由からなんですが、サイモン&ガーファンクルによる歌唱で世界的に知られるようになったこの歌、実をいいますとイギリスの民謡なのです。パブリック・ドメイン万歳! というわけで『スカボロー・フェア』でもないのですが、なにしろここ数年の私のはやりは民謡でありまして、で、民謡のなにが面白いかというとバリアントなんですね。以前
なんだか今日は疲れたような気持ちで、なんだろう、傷ついてるみたいなんですね。今月、出歩いたりする機会が多かったものだから、そうした疲れでもたまっているのでしょう。なんだかメランコリックで、感傷的というやつです。寝れば治るでしょう。
昨日は『まんがタイムジャンボ』の発売日。ですが、いつものコンビニに見つけることができず、こうなるとあちらのコンビニ、こちらの書店を探さなければならなくて骨が折れます。運良く、ライブ会場近くのコンビニに発見することができて事無きを得ましたが、もしそれで見つからなかったら、今日は原付ドライブとしゃれ込むつもりでした。置いている書店に心当たりがあるんですね。そこでも見つからなければ次は大阪十三に出ると。しかし、四コマ漫画誌を読むだけでも一苦労ですね。
おとついの夜、
私は今日という日を待ちに待って、それは二ヶ月前、いや、

以前にも取り上げました『
今日は、
