私が四コマ漫画について書くときは、大抵芳文社のコミックス発売日にだったりするわけで、そんなわけでこの人は芳文社のファンなんだなというと、実は双葉社のファンであったりもします。芳文社から出ている四コマ誌は『まんがタイム』の名が冠されていて(ホームというのもありますが)、双葉社はというと『まんがタウン』です。『まんがタウン』に連載されている漫画は、あまり派手さがないオーソドックスな四コマが中心で、そんなタウンの連載で私が結構気に入っているのが富永ゆかりです。
富永ゆかりの単行本『かなり・ハッピー』は本日発売です。そんなわけで、早速本屋にいって買ってまいりました。ええ、この日が来るのを結構前から楽しみにしていたのですよ。
富永ゆかりの漫画はどちらかというと派手さはなくアクロバティックでもなくというタイプに属するかと思うのです。基本的な登場人物はヒロインの三沢香実、かなりのライバルである須藤課長。あとはオフィスの同僚たちといったシンプルさで、けれどこの限定されたメンバー、シチュエーションでもってバリエーションのあるネタを展開するのですから、毎月毎月読むごとにたいしたものだと感心しているんです。定番ネタもそつなくこなし、時事流行も取り入れてその時々の旬を感じさせるのですね。絵柄も、今風ではないかも知れませんが可愛くて、必要なだけをさっぱりと描いているから見やすくわかりやすくテンポもいい。本当に毎月面白く新鮮に感じています。
堅実な作風といったらいいのでしょうか、作者に才能があるのは間違いないと思いますが、それよりも努力や工夫、日々の呻吟が感じられて、私にはすごく好感触。でも、苦労やしんどさがにじみだしているわけじゃあないんですよ。漫画はあくまでもさっぱりと清潔で、にこにこ笑っている明るさに満ちています。朗らかさと楽しさが嬉しくて、しかしこうして常に明るさを保っている人というのがその向こうに並々ならぬ努力を隠していることってあるでしょう。そういう感じがあるのです。けれど作者も漫画の登場人物も、誰一人、音をあげることもしなければ大変さをおくびにも出すこともない。私がこの漫画にひかれるのは、こうした清廉の心意気が気持ちいいからということもあると思うのです。
そうだ、まだ好きな理由がありますよ。この漫画は、どじなOLと厳しい課長というパターンを踏襲していますが、この二人の仲はむしろかなり良いのです。なんだか持ちつ持たれつ、戦友とでもいったらいいかな? 互いに互いを認めあっている、理解しあおうとしているような節があって、そういうところも気持ちがいいじゃありませんか。
晴天下の明るさ、洗い立てのシーツの気持ちよさに似た漫画なのであります。
- 富永ゆかり『かなり・ハッピー』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2006年。
- 以下続刊
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