いよいよ卒業が間近に見えるようになって、これまで級友と一緒に過ごした時間が終わり、慣れ親しんだ学校ともお別れ。私はね、ここにちょっと告白しますとね、これまで卒業式に泣いたことなど一度もなくて、けれどそれは学校を出ることにさばさばとしていたということではないんです。私の学校生活の拠点は音楽室で図書室で、卒業式を終えて、それら思い出深い場所にいってそっとお別れをしてきた。だって、友達とはまた会えるでしょう? だから彼らと別れることはそれほど悲しむべきこととは思えなくて、けれど実際高校時分の友人で今も親交があるのといえば二人しかいないんじゃないだろか。仲のよかったのは他にもいたろうに、あいつらは今いったいどうしてるんだろうなんてふと思うことがまれにあります。
Kiroroの『3人の写真』は、私にとっては『長い間』のカップリングに過ぎず、だからそれほど期待もなく聴いた曲であったのですが、今となってはむしろ『長い間』以上に親しみを感じる曲となっています。『長い間』に見られたピアノによる感傷をかきたてる伴奏や変則の小節がはっとさせるそういう効果は『3人の写真』には見受けられず、その意味では非常にオーソドックスなポップスです。ですが、これらの曲にはKiroro二人の実感がぎゅーっとつまっている。その実感が、わーっと広がるところが私は好きで、そしてその実感の素朴にして確かな『3人の写真』。卒業ソングとして秀逸であるという評価を超えて、私にはまるで自分もかつて感じただろう学校の景色、空気の揺らぎを歌の向こうに見るかに思い懐かしむ、そんな心に染みる一曲として数えています。
もうじき三月。卒業ですね。巣立つ人、見送る人。一人一人の胸に去来する思いが、いつか大切な思い出として振り返ることができるものであればいいと願います。卒業が、もう二度と会うことのない本当の別れになるかも知れないとしても、思い返せば懐かしくいとおしむことのできる記憶となれば、それで友達と過ごした時間は価値のあるものになる。そんな風に思います。
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