2010年10月8日金曜日

ヒツジの執事[残業]

 ヒツジの執事』、『子うさぎ月暦』をまとめた巻が出たと思ったら、今度は『ミニっきえにっき』のまとめが出た。『ヒツジの執事[残業]』。ああ、これはすごく嬉しい。『ミニっきえにっき』を単行本で読める、それもあるけれど、続刊が出るっていうのだからつまりは『ヒツジの執事』、売れたのでしょう。それがなにより嬉しいです。ナントカは、これまでに何度もいってきましたけれど、すごくいい作家。シニカルで、気の利いて、そして人情の深いいい話を描くんです。そうした氏の持ち味は、『ヒツジの執事[残業]』にも存分に発揮さていて、笑って笑って、そして泣いて、ええすごく素敵な一冊に仕上がっています。

『ミニっきえにっき』は、『子うさぎ月暦』と同じくミニ様とお屋敷の皆の生活を描いた漫画であります。違うのは、『月暦』は四コマ、『ミニっき』はショートストーリーというところ。そして、ミニ様の年齢でしょうか。『月暦』でのミニ様はまだ赤ん坊でしたけど、『ミニっき』では幼稚園児くらいかな? 大きくおなりです。まだまだお小さいとはいえ、天才児ですよ、しっかりして、こましゃくれたこといって、けどまだまだ子供で、その表情の多彩に描かれるところ、すごく魅力的です。聞き分けのいい子供だけれど、時にはいじけてダンボール箱にこもってしまう。その箱にこもる描写がもう、大好きなんですよ。

前回、『ヒツジの執事』はサフォークたち、お屋敷で働く大人を中心に描かれた四コマをまとめたという印象がありましたが、今回『[残業]』は、だんぜんミニ様たち子供がメインです。もともと『ミニっき』がそうした傾向だったこともありましょうけれど、おかげでミニ様をめぐる『月暦』も読めました。いや、やっぱり面白いですよ。『ミニっき』から『月暦』に移行し戻ってくるところに添えられたカット、それがいい味出してます。リオン、マイクのふたりが昔語りしてくれてる、そんな流れが作られていて、すごくほほえましい。とても自然で、なにか嬉しくなる、彼らの間に積み上げられている時間、歴史というものがそっと語られた、そんな気持ちになったのですね。

まとめて読む『ミニっきえにっき』、これはやっぱりすごいです。漫画としての振り幅が大きいとでも申しましょうか、面白いところはもうべらぼうに面白くて、笑わないなんて無理、こらえられない、これは人目のあるところで読んじゃいけない漫画だって実感させられまブヒョ。そしてもうひとつの側面。心に沁みる、胸を打つ、その力強さ。お涙頂戴だなんていい方がありますが、この人の人情話はその対極にあると思う。登場人物の心情、大げさにわあわあと大声あげるように描かれることがありません。静かに、普通に私達も感じているような温度で速度で口調で、しみじみとせまってきて、これはもうたまらない、涙を絞るという表現がこんなにもぴったりとあう、知らず声もたてず涙は自然あふれて、ああやっぱり人前で読んじゃいけない漫画です。ひとり静かに読みたい。心を、気持ちを、いっぱいに広げて、感情の、喜怒哀楽のあふれるにまかせて読みたい。ミニ様のサフォークが一番で、サフォークもミニ様が大事で大事で、ふたりの、そして皆の気持ちのあたたかでやさしいところ、その心地よさが心をほぐしてくれるようなのです。

さて、『ミニっきえにっき』、まだ全部吐き出してませんよね。なので、『[残業]』も売れてくれたらいい。それで、残っている原稿、全部単行本にして吐き出してもらいたい、そう願います。いつぞやの、かぐやの父母のなれそめ、あれもいい話だった。ああしたものも一緒にして出てくれたらどんなにか嬉しいだろうと思います。

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