今日はあさりよしとおのサイン会。集合時間待ちの手持ち無沙汰で、売り場をじっくりうろうろしてたら、『日がな半日ゲーム部暮らし』が新刊コーナーに置いてあったんですよ。買うだろ!? うん、もちろん買いました。だって好きな漫画です。期待度中で購入した第1巻が想像を上回る素晴らしさを見せて、もう嬉しいやら楽しいやら、共感するやら感極まるやら、これはまさしく自分のようなもののために描かれた漫画であるとそう思って、2巻以降は常に期待度大で購入ですよ。期待が大きいと、外れた時にがっかりするのはもちろん、裏切られたような気持ちになることもしばしばですが(もちろん逆恨みですが)、この漫画に関してはそんな経験はなく、読めばやっぱり嬉しくなったり楽しくなったり、そして共感があるのですね。3巻もそうでした。そして4巻、最終巻もそうでした。
第4巻は表紙が卒業式、ああ、みひろとかーはらもついに卒業か、ちょっと感慨深く思って、なにしろみひろは3巻の時点でゲーム部を引退して、なんといっても受験生ですからね、ゲームなんかやってる場合じゃないんです。ないんですが、彼女はどうしてもゲームがやめられない、そんな意志の弱い娘であります。現実にいたら心配なタイプですね。けど、そんなみひろも卒業。ああ、よかったね。いつの間にか過ぎていた時間のはやいこと、こうした節目に思うことごと、胸に迫りました。そして胸に迫るもの、それは卒業の感傷だけではありませんでした。
みひろが口にする、そしてあっきーが口にする言葉が、強烈に効くのですよ。他人事じゃない! というか、この子らは私か!? 関連商品がたくさん出るゲームに悩むあっきー、運を天にまかせて結局後悔するみひろ、もう本当に他人事でない、そんな気持ちでいっぱいになって、だってそれは私も通ってきた道だから。私もゲームが好きな口で、しかも根がマニアだから、関連商品が出れば欲しくなるし、買い切れないほど出されれば思わず呪ってしまうし、ああ本当にあっきーの思考は私の思考に同じです。運を天にまかせる話にしても、まかせた時点で気持ちは入手できるになってるんですよね、なぜか。だから手に入らなかったらすごく悔しい、そう思うこと必至、なので今では必ず予約します。多分、みひろも後数年ほどしたら、運を天にまかせるという判断はしなくなるんじゃないかな。きっと学習するんじゃないかと思うんですね。私がそうだったように。
こんな具合に、魂の一部を同じくするような娘たちが、ゲームに興じ、また友人たち、先輩後輩といい関係を築いている、その描かれ方が本当に幸いで、私はそんな彼女たちの関係にも心引かれています。あっきーだったらユウちゃん、みひろだったらかーはらですね、お互いにわかりあっているというよりも、相手を求めるあっきー、みひろサイドに、そんな友人の思いをよく理解しているユウちゃん、かーはらサイド、すごくうらやましい関係だと思います。私はできればユウちゃんサイドに立ちたい人間ですが、迷って迷って、悩んだ揚げ句に、決まって最悪な選択をしてしまう私です、どう考えたってあっきー、みひろサイドでしょう。でもだからこそ、わかってくれている友人がいるということがうらやましい。いいなと思ってしまいます。
みひろとかーはらがいよいよ卒業という時、これまでを振り返ってユウちゃんにお礼をいうあっきー、そのあっきーに答えたユウちゃん、あれにはぐっときました。ネガティブに向かいがちなあっきーにとって、あの言葉はなによりも強いものとなって届いたのだろうな、そういう感じがすごく伝わってくるようでした。そしてみひろとかーはらの「終わって」「始まる」。ネガティブに向かいがちな私は、終わることを異様に怖れていて、だからあの時のみひろの気持ちはよくわかって、そしてかーはらもきっとみひろの思いをよくわかっていたのでしょう。不安混じり、さみしさまじりのみひろの気持ちを受け止めて、前向きなものと変えて、返してくれた。あのしんみりとした景色には、同時にあたたかな交流がありました。
いい話だったと思います。これまで続いてきた三年間、いい時間を彼女らは送っていたんだということがわかる、そんな漫画でした。そして私も、彼女たちの充実して素敵な時間に触れることができた。それは本当に嬉しく思えることだった、心からそう思っています。
さて、これまで意図的に触れなかった雪華ですが、彼女の家族はいいですね。娘大好き、ゲーム大好きのお父さんに、父大好き、ゲーム大好きの娘。そしてお母さんもいい味を出していました。お父さんみたいな人と結婚したいという娘にいった言葉、その残酷さに気付いて、けど本心はそうじゃない。かわいいお母さんだと思いました。ふたりにうまく引き込まれて、思わずゲームに興じてしまうお母さん、かわいい人だと思いました。それに、雪華もかわいい。学校では、クラブでは見られない表情が、お父さん、お母さんの前だと自然に出て、この子は本当に家の子なんだなあ、そう思ってほほ笑ましかったです。
最後に、ゲームの神様。私、神様はずっと黄色だと思っていたのですが、白かったのですね。ちょっと意外でした。けど、なんで黄色? それはきっとポリタンにイメージが引き摺られていたのでしょう。最初のころは、ポリタンその人だと思っていたくらいです。しかし、このマスコットキャラなのかなんなのか、よくわからないポジションにいたゲームの神様も、重要にして欠くことのできない登場人物の一人だったんだろうなと思うのですね。なんとなく神様にされてるだけなんだけど、信心がこのぬいぐるみ? を本当の神様にしたような、そんな不思議な感じがあって、多分これはみひろのマジックなんだろうなあ、そんなこと思っています。
- 祥人『日がな半日ゲーム部暮らし』第1巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2006年。
- 祥人『日がな半日ゲーム部暮らし』第2巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2007年。
- 祥人『日がな半日ゲーム部暮らし』第3巻 (電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2007年。
- 祥人『日がな半日ゲーム部暮らし』第4巻 (電撃コミックス) 東京:アスキー・メディアワークス,2008年。
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